量子スクイズで時計をさらに正確に
正確な時計を作ることは、科学の発展にも貢献します。
現時点で公式に採用されている時計は原子時計と呼ばれているものですが、上記の記事では、その性能を上回る光格子時計を紹介しています。
原子時計の原理をもう少し補足すると、レーザー光線の振動が原子(現在はセシウムを採用)を刺激し、毎秒 92 億回の振動を引き起こします。
その振動のうち最小で安定したものを時間として定義し、GPSなどに使われています。
原子の外部環境(風とか)によって振動が揺らぎますが、それを仮に完全に除去できたとしても、他に揺らぐ要因はあります。
振動を誘発するレーザー光線、もっといえばその発振器自体も、厳格には揺らいでいます。
じつは、それに関して、もう1つ別のアプローチで正確な時計を作ろうとする研究が進んでおり、その記事が最近UPされています。
ようは、
レーザー発振器の量子効果による揺らぎをうまく補正する方法を編み出したので、より正確な時計を作れる可能性がある、
という話です。
元論文の図を引用しておきます。発振器の模型図です。発振した光がまた戻ってきてフィードバックする流れの過程で発生する位相のずれや揺らぎを表現しています。
なかなか小難しい話ですが、超ざっくりいえば、量子揺らぎを踏まえて補正する方法を理論的に編み出したということです。
イメージだけでいえば、該当する量子揺らぎ状態を「絞る(スクイーズ)」ようです。そのため冒頭記事のタイトルが「量子スクイーズ」となっています。
余談ですが、野球の「スクイズ」(三塁にいるときにバントでホームに生還させる作戦)は、何とかして点を搾り取るという意味合いで生まれたそうです。
「量子ゆらぎ」と安易に言葉を使っています。量子力学の書籍を読んだ方のある方は「ハイゼンベルクの不確定性原理」をご存じでしょうが、今回の理論ではよりもう少し厳格な不確定性を定式化しています。
以前にも近い話は触れたので過去の投稿を載せておきます。
今回の論文ではまだ理論段階で、これから数年以内に実証する予定ですが、仮に実現したとすると、想像も及ばないほど応用が広がります。
冒頭記事内では、量子コンピューターの単一量子ビットの変動や検出器間を飛び交う暗黒物質粒子の存在など、極めて小さな時間差を追跡するために使用できる可能性があります。
他にもGPSや地震波や火山の計測精緻化による予知などがぱっと思い浮かびます。
日常だけでなく、人類の科学技術の発展に「時計」は欠かせない存在です。