脳とニューラルネットワークの邂逅
AI(人工知能)の第三次ブームはニューラルネットワークの1つ深層学習(ディープラーニング)です。
この「ニューラルネットワーク」は、元々は脳の動きを数学的にモデル化して誕生・発展していきました。
消費エネルギー比較でみると、脳は大体20Wですがスーパーコンピュータだと大体その100万倍のスケールになります。
いかに脳がエコなコンピュータ(という定義も本当は雑すぎますが)なのかというのが分かります。
しかも、ニューラルネットワークはあくまで脳のネットワーク型の構造をきっかけにしただけで、忠実に脳の動きを再現しようとしているわけではありません。
モデルを意識したあとは、最適解を出すためにチューニングを繰り返すだけで、そこからは脳のリアルな構造は意識していません。
そんな近そうで遠いニューラルネットワークで、改めて脳の動きを意識するアルゴリズムが開発され、成果発表がありました。
ようは、
ニューロンとシナプスのランダムな動きを再現したニューラルネットワークの構築し、動物の視覚処理などの再現に成功した、
という話です。
学術誌への投稿をみると、厳密にはランダムと従来型のハイブリッドのようです。
まず、ニューロン(神経細胞)とその間を電気信号として授受するシナプスで、「ランダムな動き」がある、というのは意外と思われるかもしれません。
前回の投稿で触れた通り、脳は役割によって活動部位が違いますが、それと別に継続的な微弱信号を発しています。常にうごめいているわけですね。
この原因は厳密には解明されてませんが(少なくとも公開情報では見つけられませんでした)、それに意味を見出そうという研究はいくつかあります。
たとえば、ノイズ(ランダムな信号)ではなくなにがしかの規則性がある、とする日本の研究者もいます。
今回は、そのランダム性を仮定し、統計学のベイズ推計という考え方を取り入れています。
ベイズ推計とは、超ざっくりいうと
「データがないときに、まずえいやで答え(結果)を仮定して、そこから原因を探索する」
斬新なアプローチです。
斬新といいましたが、既に実用化は20世紀末から進んでおり、一時期今のAIと同格な扱いを受けたこともありました。
パッと思い出すのが、ビルゲイツ現役のころに全社会議で「これからはベイズ技術だ!」と宣言した出来事です。
繰り返しですが、廃れたわけではなく今でもメールのスパム除去など裏で大活躍していますし、最新のAIアルゴリズムでも応用されたりしています。
1つだけ初心者向け解説サイトを引用しておきますので、関心のある方は覗いてみてください。
興味深いのは、これによって動物がモノを見るときの過程で発現するニューロンの動きを再現出来た、ということです。
脳から生まれ脳から離れた人工知能が、サケの如く生まれ故郷に凱旋(?)する日が近いのかもしれません。
この研究の発展は今後もチェックしていきたいと思います。