地球上の生命が左手である謎への有効打が登場
以前に、ハヤブサ2が持ち帰った小惑星サンプル分析結果の最新情報をお届けしました。
ようは、
地球の生物と異なり、右(D-)・左(L-)の偏りのないアミノ酸配分だった、
という話です。
改めて、右・左の意味合いを補足しておきます。シンプルに言えば、右手と左手は見た目は似てますが完全に同一に重ね合わせることはできません。
鏡で映して初めて重なります。こういった関係のことを指します。
普通に考えたら右・左に偏りはないはずですが、なぜか地球上の生物はほぼ「左手(L)型」しかないというのが大きな謎でした。
もし、小惑星内のアミノ酸も同じく左手型に偏っていたら、地球の生命は地球外からの可能性が高まるため、その解析が注目されていました。
が、結論は右・左の偏りがなかった、という結果でした。
ただ、元々のなぜ偏っているのかという謎が解かれたわけではありません。
2022年にも、1つの仮説が提示されています。
ようは、
水素原子からの放射線で円偏向があったので左手型だけが残ったのではないか、
という話です。上記記事内リンクでも示されていますが、実際に円偏向現象は観測されているようです。
この仮説に基づくアプローチは、今度は円偏向が起こる(そして地球にも影響を与えた)メカニズム解明で進展するかもしれません。
そしてつい先日、新しい仮説が発表されました。
ようは、
より精緻なシミュレーションで、左手型アミノ酸に偏るメカニズムを明らかにした、
という話です。
より精緻、というのは原子レベルではその作用が効いてくる「量子力学的な」計算も組み込んだという意味です。
もっといえば、その確率的な構造を「シュレンディンガー方程式」で記述したということです。
これらは、量子化学という分野でコンピュータの性能向上と連動して研究が進んでいます。過去の関連投稿を引用しておきます。
今回計算過程で注目されたのは、「RNAのアミノアシル化」です。
若干この研究の前提としているのが、RNAが生命の起源として優勢だったという「RNAワールド」仮説です。ようは、RNAが触媒だけでなく複製も可能でそこから生命が進化して今に至った、という仮説です。
過去にも紹介したので、これ以上知りたいかたは参照ください。
で、今回の主眼は、それを前提としたときに、なぜ左手(L型)を選択的に選ぶのかをシミュレーションで明らかにしたことです。
もう少し掘り下げると、その計算結果として、左手型(L-)アラニンの反応自由エネルギーの障壁の高さが、右手型(D-)アラニンに比べやや低くなりました。上記記事よりそのチャートを引用します。
これはとても納得性の高い実験結果です。
あとは、これがなぜ地球だけ(はやぶさ2号の小惑星では同率)で起こっているのかが今一歩理解が及ぼなかったので(RNAワールド仮説が地球のみに適用?)、もう少し読み直して考えてみようと思います。
いずれにせよ、まだまだ謎は大きく深そうで、ワクワクします☺