脳細胞を食べて記憶を活性化!影の主役グリア細胞の新発見。
脳にはニューロン(神経細胞)が1千億以上ありますが、実はそれ以上存在する「グリア細胞」というものがあります。
グリア細胞は主に、ニューロンのヘルスチェックや脳内環境の維持及び代謝的支援を行っています。
舞台に例えると裏方にみえるこのグリア細胞が、より脳の記憶力に能動的に関わっていることが最近の研究成果で明らかになりました。
ようは、
グリア細胞がシナプス(ニューロン間信号をつなげる部位)を食べることで、記憶の定着を促進することを示した、
という話です。
もはや主役を食うイメージすら持ってしまいました。
グリア細胞が異物を食べる(厳密には取り囲んで分解してエネルギーに代える)免疫機能を担っていることは以前から知られていましたが、直接的にニューロンを食べるというだけでも驚きです。
まず、なぜ食べることが記憶力向上になるのかがピンとこないと思います。
記憶のメカニズムは、大まかに言うと、ニューロン間の結合度合いによって形成されていると考えられています。
つまり、その交差点で電気信号を授受するシナプスは重要な役割であり、しかも単なる交通信号の機械でなく、自身の物理的な大きさも記憶力に影響があります。
信号機が多すぎると交通が逆に混乱するように(船頭多くして船山に上る、ですね)、シナプスが多いからといって記憶力が向上するわけではありません。
つまり、グリア細胞は不要なシナプスを食べることで除去して、交通整理を助けているというわけです。
今回発見されたのは、冒頭図にあるアストロサイトの1種で「バーグマングリア」と呼ばれます。
主に、運動をつかさどる小脳内に放射状に存在する組織で、グリア細胞のなかでも変わった機能を担うことで知られていました。(アストロサイトと分けようという声もあるようです)
以上を踏まえて、冒頭の研究発表からの図版を引用しておきます。
今回は、小脳で運動に関する記憶力でその差異がマウスでみとめられたようですが、面白いのは常にこの食べるという行為が行われていることと、他のニューロン部位でも同じような現象が確認された、ということです。(以下リリース文章を引用)
つまり、グリア細胞はまだ我々が知らない脳の活動に寄与している可能性が高いということです。
実はグリア細胞は、今回の研究グループに限らず今注目されており、今回の実験方法(発色と最新電子顕微鏡の組み合わせ)など直接的に観察しやすくなっているため、今後も新しい発見が期待できます。
1つだけ、このグリア細胞を解説した面白い啓蒙書を紹介しておきます。
グリア細胞は、サッカーに例えると、今まではフィールドには登場しないマッサージや機具の整備を担う裏方でした。
ところが今や、試合に出るフィールドプレイヤーとして、しかも守るディフェンダーでなく、リベロのように攻めて点も取るポジションといったほうが的を得ているかもしれません。
ぜひ今後のグリア細胞による得点ラッシュに注目していきたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?