《第11話》モノ作り会社のつくり方
会社を立ち上げてから僕がずっと思っていたのは「メーカーになりたい」という事でした。
でもメーカーになるためのハードルは非常に高いんです。
そもそもメーカーの定義で何?
簡単に言うと「モノを作る会社」
一般に流通しているおもちゃの90%以上が中国などの海外で生産されており、そのほとんどがサプライヤーと呼ばれる提携工場に生産を依頼しています。
なので正確には実際に自社で生産している会社は大手を除いてほとんどありません。
深掘りすると自分達の事をメーカーと呼んでいいのかと思いますが、
おもちゃ業界におけるメーカーの定義としては
「版権許諾商品を含む自社オリジナル商品を定期的におもちゃなどの流通に発表・販売している会社」
といった感じかなと思います。
そもそもサラリーマンをしていた20、30代は企画・開発がやりたくて、上司に事あるごとに打診していました。残念ながらずっと営業のままで開発部署にはいかせて貰う事はありませんでした。今になって思いますが、上司は僕の事をよく見ていて開発より営業の方が向いていたのだと思います。
今ソータがあるのはサラリーマン時代に開発が出来なかった悔しさがあり、人の会社でやらせてもらえないのなら、自分で会社作ってやるしかない。どうせ一度きりの人生だし、起業したからには自分のやりたい事をやるべきだと思いました。
ただ実際に起業して現実を突きつけられると、分かっていたはずですがお金と信用の無さを実感します。そこでまずは問屋業で流通基盤を作ってお金を貯めました。それでも全然足りたくてを借金しながらメーカーになる準備をしました。
会社立ち上げ当初に役立ったのは、営業を長くさせて貰った事で得た経験と人脈でした。自分の強みを伸ばしてもらった当時の上司と会社に、そして辞めていった人もいますがソータで同じお釜のご飯を食べた仲間たちに感謝しています。
自分が思い描く商品を作るにはどうしたらいいかを考え、自分でやればいいと言う結論に達したわけですが、先述に書いたようにメーカーになるにはたくさんの壁があります。
例えば最低限
・企画
・開発
・工場
・貿易
・倉庫
・流通
の機能を持つ必要があります。
会社を起こして自分が作りたい商品を作るためには、まずモノ作りができる会社を作らないといけないという当たり前の難問にぶち当たりました。
また玩具メーカーは数多あるので、生き残るためにソータはどんな特徴を持ったメーカーにするかも考えなければいけませんでした。
「できるだけ内製化する」
を特徴にしました。
「言うは易し」で実際にやるとなかなか大変です。
なにせお金がかかります。
お金の無い弱小企業なのにもかかわらず、非常に厳しい特徴にしてしまいました(泣)
そして僕が何でも出来る訳ではないので、その特徴を活かしてくれる優秀な人材を探し、ソータを好きになってもらって、ずっとソータで働いてもらう事がとても難しいです。この会社にどんな働く価値を見出してもらえるか。
そんな課題克服のひとつはできるだけスタッフがやりたいように仕事を進めてもらうことです。
僕の性格が利益が出なくても「やりたい事至上主義」なのでソータも可能な範囲でなるべくそうなればと思っています。
もちろん営利組織なので綺麗事だけでは上手く回りません。最低限の規律や会社がして貰いたい仕事をお願いすることも多々ありますが、自身のやりたい事や方法をできるだけ優先しています。
非効率で大企業の人からしたら「その人が辞めたらどうするの」と言われますが、拘るモノづくりには効率以外の価値観が大切だと思っているので、その方がお互いにとってメリットが大きいです。
そしてできるだけスタッフが自分で考えたことを最初から反対しないように心がけています。
僕がサラリーマン時代に「モチベーションが下がってしまったやりたい事を自由にやらせてもらえない環境」をソータではできるだけ減らしたいと考えています。
でもそういえばサラリーマン時代にダイエー久喜店の1Fから4Fまでエスカレーター回りにスリムボーイ(ユージンが出していたカプセルトイ筐体)を約100台置いた事があり、全然目標売上に届かず半年で撤去されたことを思い出しました。
同じお店にカプセルトイ筐体を100台置くなんて当時では無謀なことでした。
ただ課長は僕が取ってきたこの案件をとにかく一度チャレンジさせてくれました。
当時は1年目で利益にまで考えが及んでいませんでしたが、撤去を含めてあの出来事が仕事とはなんなのかを考える分岐点になったと思っています。
その経験のおかげで、やる気がある人の発想を潰さないことが大切だと思える様になりました。
その人が諦めなければ、いつか必ず良い答えを出します。
またモノづくりの組織を作るということは、モノゴトに拘りを持った人達を集めることが重要です。そのせいで回りとのコミュニケーションに支障が出て面倒な場合でも、その人の拘りにまずは耳を傾けるべきです。プロ意識を持った人達の話し合いは真剣に意見交換がなされ、ぶつかり合いがあります。その摩擦がないとモノはブラッシュアップされていきません。
ソータの面白いのはそれぞれ拘りポイントが違うので、多方面から磨かれていくことです。
・商品の安全性
・商品のディティール
・販売方法
・利益率
スタッフで大事ポイントが違うので色んな意見が飛び交います。
ソータの組織内で上司や部下の関係をなくしたのも、自由に意見が言える環境を作りたかったからです。
企画が採用に至るまでのプロセスにはこの意見のバトルが最重要だと思っています。
またメーカーであるために意識していることとしては
最新の技術を常に追いかけることと面白い機器は導入してみることです。
メーカーであるためには企画力も必要ですが、それと同等の技術力が必要です。
ただし冒頭でも言った通り、海外の工場に生産を依頼しているので自分たちが生産技術の全てを保有しているわけではありません。でも「何故この不良は起こったのか」「こうしたらもっと効率がいい」「この方法のほうがディティールがしっかり出る」など常に意識して情報共有していないと全て工場任せになって、メーカーとしての責任が果たせなくなってしまします。コロナで工場まで行けない日々が続いているので、工場と月一回の不良改善ミーティングを行なうなどして開発の情報スキルを鈍らせないようにより工夫することがより必要になっています。
またモノづくりにはスケジュール管理能力が欠かせません。
納期が遅れては商売として成立しないですからね。(最近生産国のロックダウンの影響で軒並み遅れています…ごめんなさい)
これは特に開発や生産管理のエキスパートとしてやっていくのに最重要スキルだと思います。
そのために取り組んでいることのひとつは仕事場の環境です。
机の上の整頓だったり、パソコンのデスクトップは整理されているか、いつもスタッフに小うるさく言ってしまっています。
そういう僕も若い頃は汚い机で書類がいつも積み上げられていました。
起業してから意識改革したのですが、突き詰めていくといい商品を作るためには身の回りのモノを片付けるという行為に行き着きます。仕事の優先順位が頭の中でスケジュールできている人は、机の上やパソコンのデスクトップに仕事の仕方がキレイに表れてます。
先日、会社の4Fが空いたので増床しました。
会社の環境を定期的に変えることで、毎日の仕事の中でスタッフの気持ちの切り替えをしてもらう場所も大切だなと感じました。クリエイティブな作業のためにはなるべくフリーな環境でインプットすることが必要ですね。
自分が考え出した商品を作るためにメーカーを目指したのですが、
その手前のモノづくりをする会社を作る事が僕の今の仕事になっています。
そして僕はもう少しで50歳になろうとしており、ソータの平均年齢は30歳くらいで若いスタッフが頑張ってくれています。
おじさんの意見が力技で非論理的に通る時代では無くなりました。
そうしないと時代から取り残され、自己満足だけの売れないものを作ってしまい、会社が淘汰されてしまうからです。
最近はインターン・アルバイトを積極的に受け入れて、もっともっと若い発想を取り入れる取り組みをしています。
そしてカプセルトイ業界は戦国時代。
どんどんメーカーが増え、企画力や技術、コンテンツで毎月エンドユーザーさんの心を鷲掴みにしています。
かつては日本の独壇場だったフィギュア市場も、最近は中国メーカーの技術と価格そしてコンテンツ、全てにおいて圧倒されつつあります。
円安が進行して1ドル130円前後を推移している今、1個300円~500円の輸入業は中々苦しい状況に置かれています。
ソータがこれからどの方向に向かうべきかを、多様な考えを持ったスタッフの人たちの意見を聞きながら、近いうちに決めないといけない時期に来ているなあと実感しています。
2022年 5月 10日
SO-TA(ソータ) 安藤 こうじ(@kojiando01)