【書評】黒川祐次『物語ウクライナの歴史--ウクライナは誰のものか
戦争を機にウクライナに興味が出て、この本を読んでみた。そして自分がいかにあの地域の歴史を知らないかを痛感した。
元々は遊牧民の土地だったウクライナにキエフルーシという国ができる。これが現在のウクライナ・ベラルーシ・ロシア三カ国の元となった。とはいえ、キエフルーシはモンゴル人の侵入であえなく滅亡しまう。
そのあと独立心旺盛なコサックたちが国を打ち立てるものの、リトアニア、ポーランド、ロシア、オーストリア、ドイツといった国々に次々と蹂躙され植民地にされる。独立の試みは何度も繰り返されるが、その度に潰されたのだ。
もっとも近年に潰されたのがソビエト連邦にで、独立国になろうとしていたウクライナをボルシェビキの軍隊が攻撃し、軍事的に占領することによってソ連の一部とされた。そんなこと全然知らなかった。
プーチンが今、なぜウクライナを攻撃しているのかも、こうした歴史を知るとよくわかる。ウクライナに隣接する国々はウクライナを植民地とすることで栄え、その支配権を失うことで衰えてきた。それぐらい土地が肥沃で、人口が多く、生産性の高い場所なのだろう。
だからこそ、偉大なるロシアを取り戻すためには、ウクライナを手に入れることが是非とも必要なのだ。もちろんそんなプーチンの思惑など、ウクライナの人々は知ったこっちゃないけど。
ニュースだけを見ていても分からない複雑な話も、歴史を学ぶことで見えてくる。そうしたことが分かっただけでもこの本を読む価値があった。