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《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.35

課題4 女性が新しいことにチャレンジしたくなるコピー
 ・爪を隠すな。

「能ある鷹は爪を隠す」と言う。『女性が』という問いに、なぜ鷹の『爪』なのだろうか。このコピーの佇まいからは、女性が指先を飾るきらびやかな「ネイル」のことを言っているようには聞こえてこない。

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平均的な女性は平均的な男に、体力では(身体的に)勝ちにくい。体力に勝る男に襲われたなら、只じゃすまない。だからこそ、身を守るための武器を持つ必要がある。

男みたいに刀とか槍とか、装飾までして威張りくさった、とっさの時に使えない武器なんかじゃ意味がない。常に身につけ、相手を欺きながら、必要な時に最高のパフォーマンスを発揮する武器なら最高だ。

その武器を『爪』と作者は例えた。

人間同士の小競り合いで使われる武器は、物理的なものに限らない。知能、技術、財産、人脈、出生、役職、、、など、身体的、社会的、経済的な力も武器になり、他者より優れていると考えられる武器なら『爪』と解釈することもできる。

有能な者であるなら『爪』を濫用せずに、ここぞというタイミングで使うことを良しとしたのが「能ある鷹は爪を隠す」という諺だ。

その『爪』を隠すな、と作者は言っている。

実力を思いのままに発揮せよ。それが、女性がチャレンジしたくなる想いへの近道であるということのようだ。

だがしかし、ここまで読み解くと、作者はそういうことを言いたかった訳ではなかったとも読み取れてくる。

女性に対して「本音を隠すな」と言おうとした。そのとき、『爪』というキーワードが入った諺「能ある鷹は爪を隠す」がひらめく。女性を表す「ネイル」から連想される『爪』=女性の本音(インサイト)と例え、諺とブレンドしジャンプさせることでコピーらしい体のものを作ったのではないか?!

なぜなら、諺の意味から考えていくと、言っていることに矛盾が生じる。正しくもじったとしたなら、『爪』は武器である。武器を存分に使えという投げかけは、

ネットの情報だけに満足しないで、街に出かけて、ヒトに、モノに触れてほしい。

に結びつかず、ネット云々という話はほぼ関係なくなり、街を謳歌するようなユルさからは遠のくのだ。

つまり、コトバの響きや意味をずらすことでウケを取る「ボケ」のコピーになっているように思えてくる。

一行のコピーとしては求められる答えを伝えきれていない。だが、広告のキャッチフレーズとしたなら、ツッコミのようなタイミングと強い口調でボケることで更にツッコミを誘う「三村ツッコミ」や「笑い飯」の漫才に似た方法で、フックする一文をなしているようにも見える。

だが、私個人は広告ビジネスにおいて、この手のコピーを良しとしない。それは、思いついた諺やキーワードを使いたいだけのコピーになってしまうことを嫌うからであり、「本当に伝えたかったコトが伝わらなくなる」につながることが多いからだ。

求められる課題をクリアできる答えがあること。ベネフィットの約束がなされていること。この意味を満たしていないと感じられることが、このコピーが入賞できなかった理由の一つではないかと推測します。


※作品(コピー)の版権・著作権等の使用に関する権利は、静岡コピーライターズクラブに帰属します。
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