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1000円カットが最高の技術を持つに至る仕組み-BOP戦略について-
タイトルがどんな意味かはきっと後でわかるはず。今回は、書籍「ネクスト・マーケット」の話をする。自分の仕事で、「誰に」提供すべきかという悩みを持つ人には参考になるかもしれない。
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起業が単なる夢で、年間100冊を目標にして、150から200冊くらい読んでいたころ。のめり込んで読んだ本の一つがネクスト・マーケットだ。原題は、the fortune at the bottom of the pyramid -Eradiating poverty through profit- 。原題にeradicatingとあるとおり、根絶を扱う本である。2005年ころに読んだ本で、もう15年前の記憶なので怪しいところもあるかもしれない。↓は増補版!
邦題から、マーケティングの本と思われがちだし、貧困層という言葉から貧困層マーケティングのような色がつき、下流食いのような語感もありそうだが、本書の一つの切り口であるBOP(ボトムオブピラミッド)とは貧困層とイコールではない。
貧困というよりは、原題にあるpovertyの元の意味に近い「欠乏」や「不足」がある層であり、それを根絶するというニュアンスで捉えた方が分かりやすいと思う。
創業前に強く影響された「ネクストマーケット」という本にあるBOPというコンセプト。貧困層むけという言葉尻と、下部だけにフォーカスしたネーミングがあれであまり説明してこなかった。日本総研さんの説明はこれ。https://t.co/40g4yWwTz2
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
邦訳では、邦題が付き、様々な誤解を生むことが多いが、原題を読むとスッキリすることが多い。本書の帯にあるBOPは本書のコンセプトの一部であるが、当時は目新しかったことから切り取って扱われたのだと思う。
大切なのはBOPに目を向けることではなく、反対の層であるTOP(トップオブピラミッド)を踏まえつつ、BOP/TOP,ひいてはMOP(中間層)の循環を作ることである。つまり、視座の上下と、その結果として得られる市場全体を見据える視野の獲得、更には「誰に」といったターゲットやペルソナによらない綜合的なビジネスの展開がゴールなのだろう。
本質はピラミッドの上層(TOPとする)と下層(BOP)の循環にある。BtoBだと下層と名前をつけるのは引け目があるが、中小零細群のうち教育投資が平均より極端に少ない層を指すだろう。
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
話を戻す。更にいうと、貧困層という訳をあてると、BtoBには適用しにくくなってしまう。僕達は貧困層をターゲットにしてますという会社からものを買う人や会社はないだろう。このため、特定分野に欠乏がある層に一度フォーカスを当てる(注目されてこなかった層だからだ)ところから議論をスタートし、最後に循環に至るものと思うと良い。
フォーカスをあてて、どうするかというと、発想技法でいうところの強制発想法を促す。例えば、今客単価50-100万円の商材(TOP向け)があるとして、それをBOP層が買うためにはどんな工夫が必要か。
こういう問いを立てることによって、意図的にイノベーションを起こすのである。
私たちでいうと、大手企業が数百万かけて開発したり、50-100万くらいで購入している研修サービスをBOPの企業群(繰り返すが、貧しいという意味ではない。なんらかの受益できない欠乏があるという意味だ。)に対して提供するのであればどうしたらよいかという問いになる。表題に書いた1000円カットは削いだことで、速さを実現し、回転率を上げることで技術レベルを高め、若年でもベテラン並みの技術をもつ美容師を産んだ。
あくまでBOPは市場における焦点である。前提には、既存ビジネスがTOP向けで、やや飽和気味というのがあるだろう。マーケットサイズに対して提供側の提供量が多くなった場合の競争戦略の一つでもあると思う。
前提には、元々TOPむけのビジネスをしていることがある。このノウハウをBOPに広げる際にイノベーションが起きる。TOP向けのプロダクトがBOPでも使えるようになる。
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
本書では、主に製薬や金融などの事例を中心に、どのようにBOPに対してビジネスを展開したかといった話が並ぶ。
BOPでも購入するというと、安かろう悪かろうの品を作ることに見えるが、そうではない。品に限らず、提供プロセスや簡素さといったものもイノベーションの対象となる。こうしたイノベーションはまずは欠乏を解消し、中間層を創る。そしてそのでのイノベーションは、再びTOPに還り、他社との競争優位性の源泉となっていく。ここが重要なところだ。薄く広いBOP層と厚く狭いTOP層、ひいては全てのピラミッドを見つめていることを忘れてはいけない。これこそが本質だ。
ただ、循環ということはそこにとどまらない。BOP向けのものをTOPが導入するようになる。ここから更に新しいTOPの問題解決がなされるわけだ。ここがBOP戦略の本質。
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
この良い循環が回りだすと、TOP向けのイノベーションも次々に起こり、BOPは拡販が進み、好循環が止まらなくなる。それが、BOPの欠乏を解消し、豊かを生むメカニズムなのである。
しかし、難しさもある。提供側の体制の問題である。同業で、上場している某社は、ベンチャーや小規模企業案件にできる営業をアサインし、それを開発に上げ、比較的若手がTOP層を担当する分業をしていたという。
難しいのは展開させること。TOPのような高付加価値はBOPでは見込めないので、薄く広く展開する組織が求められる。消費者における貧困層とことなり、企業にはネットが使えないところはないので、この展開は多少楽とはいいながらも人手がいる。
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
当社もこの方向を強く志向しているが、まだまだ組織的に成熟していないことや、TOPの飽和がコロナで解消されつつあることもあり、なかなか進まない。
当社の理念である「あらゆる人に良質な学びの場を」はまさにこの本から得た着想なのである。最終的にはネクストマーケットを目指す。一方で、TOPに人手が割かれている限り、それは実現できないという大きなジレンマを抱えている。
— 高橋興史 (@takahashikojimb) October 16, 2021
この話。僕にとっては当たり前の話だが、当たり前すぎて、今となってはほとんどのメンバーが知らない話になってそうなので、一旦うろ覚えの言語化にチャレンジ!
営業面で手伝ってくれる人を募集しているので、もし興味のある方は、ご連絡を!