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「企業価値」で考えるこれからのHR

ここのところ多くの人事の方とお話ししたり、「ESG思考 - 夫馬 賢治(著)」という本を読む中で、「企業価値」「非財務情報」「人的資産」といった観点で、これからのHR・人事について思うことがあったのでまとめてみました。

人的資本の情報開示

「人的資本の情報開示」とは、非財務情報の中の「人材情報」に関する情報開示を指します。例えば、グローバル企業の国や地域別の労働力データ、事業別の労働力ポートフォリオ、年齢構成など、さまざまな角度からの人材情報を開示することになります。

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リーマンショック以降、2011年に欧州ではESG情報の開示を義務化するEU法案の検討がはじまり、イギリスでも2013年に会社法規則が改正され、企業の長期的価値創造の観点でESGにおいてのKPIの記載が定められてきていました。

人的資本の観点では、ESGの環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)における「S」の部分となっており労働環境・ダイバーシティの推進、社員同士の関係性などが対象の一例となり、機関投資家からも開示要求が高まっており、この1年の間でも、以下のニュースが出るなど注目度が高まってきています。

米国で2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務づけると公表
ドイツ銀行が2021年3月12日、HRリポートの最新版「Human Resources Report 2020」を発行

ISO 30414の誕生

「ISO 30414」とは、2018年12月に出版された社内外への人的資本レポーティングのガイドラインです。開示ガイドラインとして、大きくは11の領域・58のメトリック(測定基準)が設けられています。これまでは人件費や離職率を1つとっても企業により測定基準がさまざまで、基準となる規格がなかった人事領域において、攻め・守り両面での網羅性の高い国際規格が誕生しました。

ISO 30414は、認証制度も創設されておりISOに認められた認証機関による認証アセスメントにパスすると認証を受けることができます。その認証アセスメントができるコンサルタント資格も誕生しています。

日本におけるESG投資や人的資本開示

欧州・米国ではリーマンショック以降、上述の通りESG関連法案が審議され、CSR(企業の社会的責任)から経営としてのサステナビリティへの関心が高まる中、日本の資本主義的な考え方ではCSRは「余計なもの」程度の扱いで、リーマンショック時でも真っ先に予算削減対象となっていました。(当時は私もこんなんやって意味があるのか、と考えていた1人でした。)

ただ、2017年7月に合計約170兆円の資産運用を行うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESGインデックス採用(MSCI、FTSEというグローバル大手インデックス開発会社のものを採用)し、日本企業もグローバル基準でのESGを評価され、スコアの高い企業の株が買われる流れができ始めてきました。またGPIFが3本のインデックスで運用されると発表された運用額は1兆円、3本のうち1本は女性活躍に注目したインデックスでした。

また2021年6月の成長戦略フォローアップ案でも人的資本情報の「見える化」の推進という文言が追加され、工程表でも担当大臣に内閣総理大臣がつく・金融系の特命担当大臣がつくなど、動きが出始めています。

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これからの人事・HR

人事領域もDXの話題が既にいろんな方面で言われていますが、HRデータの整備のためのツール導入や取得データ定義の標準化はますます進んでくると感じています。

ただ、ISO 30414も含めてあくまでデータ標準化や集計の話です。そのため、これからの人事・HRとしては「標準化されたデータを用いて持続可能で競争力の高い組織デザインをどうすると良いか」・「健康で働きがいのある組織をどのようにつくっていくと良いか」・「企業価値の向上につながる人事施策をどうすると良いか」などといった企業価値に軸をおいた働きがいのある会社・組織づくりという観点の重要度が増すのではないかと思ってます。

以前から戦略人事という概念でも言われているような「コスト」で考えるHRから「資産(アセット)」で考えるHRに本格的に変わっていくタイミングにありそうです。経営企画や財務から人事に、またはその逆のようなキャリアが増えてくるとおもろしいですね。

こういったことをいろんな方とお話ししてみたいので、DMなどで連絡いただけたら嬉しいです。


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