初期設定の愛 27. 守護霊の叱責
20歳のころだ、
大学2年の9月ごろ、一人暮らしのワンルーム賃貸アパート、万年床。
早朝4時ごろだと思う。
突然の金縛り、金縛りは依然からたまにあったが、これは強めだ、やばいぞ。これはほんとにやばい。
目を見開いて、必死に抵抗するが、
手が動かない、指先も動かない。上体もおこせない。
脚もかたまったままで、びくともしない。
眼球だけは動かせた。
眼球に全精神を集中して、ぐるぐる回す。
その時、真っ白な靄のようなものが自分の頭、顔のすぐ目の前に広がり始める。 直径1mか1.5mくらいの範囲だろうか、きっちりした球体ではなく、周辺にいくほと、その靄はうすくなる。薄めの雲のようでもある。
その靄がだんだん、目の前の狭い空間に集約され、”髑髏(しゃれこうべ)”のような形になる。その髑髏が、無力で愚かな私をあざわらうかのように、ゆらゆら揺れている。目は合ったままだ。
怖い。恐怖心が広がる。
同時に湧いてくる ”諦め” と ”無力感”。
諦めが恐怖心を上回り、ど~にでもしてくれ、降参だ。そんな心境だ。
ここまでで、10秒くらいだろうか。正確にはわからいが、それくらいの体感だ。
だいぶ冷静になってきた。
髑髏、いわゆる骸骨のような感じであったものが、人の顔のような輪郭を形成した。
恐怖心が強く、髑髏を勝ってにイメージしていたのかもしれない。
良くみれば、人の顔だ。空中に顔と肩くらいまでが見えていて、フワフワと浮いているのだ。和装のように感じた。男性ものの着物だ。昔の日本人だろうか。
横たわる自分の顔の真上あたりだ。
生身の人間の顔のようにははっきりしないが、確かに人の顔だ、
目、鼻、口、髪、輪郭、白髪交じりの髪がはっきり見える
冷静さをある程度は保持しながら、なお、必死に金縛りをとこうと、手足をばたつかせる。話せばわかるよ。
その時、
抵抗しても無駄だ・・・。 俺はお前の守護霊だ・・・。 最近お前はたるんでる・・・。
しっかりしろ~。
それだけ伝えて、白い靄ととも消えていった。
テレパシーだ。直接脳内に伝わる。そのテレパシーを私の脳が日本語に変換して受け取った。
白い靄がはれた後も、しばらく一人、万年床に横たわったままの状態で、
しばし放心状態だ。
手足は動く、もう動く。
あー、今のはなんだったんだ。
上半身を起こし、しばし考えてみる。
父にもここまできつく叱られたことはない。
なんだか、うれしかった。ここまで愛情をもって、しかってくれる存在がいる。
その声は初老の男性かな、口調が高圧的だ。だが、愛情を感じる。嫌な感じがしない。
そうか、やはりそうか、づっと、見ているんだ。いや、見ていてくれている。わかってくれている。
やるせなさ、いらつき、もどかしさ、 すべてわかってもらえてる。
ひとりではない。
そんなことが瞬間的に駆け巡る。すべてのことが腑に落ちた。
あー、名前くらい聞いておけばよかった。
高校一年から、毎晩、守護霊への感謝を伝え続けて、6年目のことだ。
しっかり伝わってたんだなと確信する出来事でもあった。
訳あって、自主休学中の大学、そのまま退学するつもりでいた。
とにかくつまらない。友人はできたが、つまらない。
講義では、あまりやる気のない教授が、どうでもいいことを、ひたすらしゃべるだけだ。興味がわかない。(注)
迷宮入りしている。俺はいったいどこへ迷い込んだのか。
夕方から朝方までの夜のアルバイト、水商売だ。案外むいている、そう感じていた。
刹那的なトーク、その場限りの関係性、みんな酔ってる。どーでもいいのだ。
だれも傷つけない。自分も傷つかない。
俺の生きる道はここかもな。そう感じていた。
とにかく、なにもかもうまくいかないのだ。
彼女とのトラブル、そこから逃げて、新たに付き合った彼女、そこでまたトラブル。
うまくはいかない。
大学での人間関係、理不尽なトラブルが続く。
うまくいかない。
目標が見つからない。夢などない。何もない。何をしたらいいのか、わからない。
何をしても、盛り上がらない自分。冷め切っているのだ。
このころ、せっかくできた友達から、「コージ君はなんか冷たいよね。」バイト先の先輩からは「お前はなかなか心を開かないな~」などといわれていた。その都度、考える。
答えは見つからない。時間だけがすぎていく。
守護霊から、こっぴどく怒られたこの日から6か月、3月だ、すべてのトラブルは消え失せていた。逃げ場所だったバイト先は突然の閉店により、バイト従業員は全員解雇された。ナンパもやめた。彼女との付き合いは継続した。彼女が飽きるまでは付き合うつもりだ。もうだれも傷つけたくない。
大学へ通う以外やることがなくなった。1年遅れたが、大学に再び、通うことにした。
こころを開ける友人はあいかわらずいないが、
守護霊が一緒にいる。ちょっと説明が難しいが、普段は離れているが、気を向ければつながる、そんな感覚だ。
人生はあくまで自分のものなので、守護霊へは感謝だけ、余程のことがないかぎり頼らない。
ピンチの時には、来てくれる。こなきゃこないでいいのだが、来てくれる。
最近、年のせいなのか、無くしものが多い。
月に1回くらいしか使かわないプラスドライバーがない。マイナスの方は3本もある。今こそ必要なLEDサーチライトがない。出かける間際に、見つからない車の鍵。ほんとに困る。そんなときは頼る。こちらも必死なのだ。
「守護霊様、私の車の鍵、どこにありますか? 5分以内に教えてください。」そう黙って伝える。そして、しばし目をつむり瞑想する。
必ず、5分以内に見つかる。鍵のある場所がひらめくのだ。
もしくは、外出する必要そのものがなくなるかのどちらかだ。
守護霊様、ありがとうございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
つづく
注:これは当時の個人的な正直な感想です。現在は、それなりに意味のあることであったと考え直しております。 m(__)m