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初期設定の愛 43. 夜だけの世界
その家だが、まるで自分の家のように落ち着く。
妙に落ち着く。生活感のある家具などもある。
玄関、下駄箱、廊下、トイレ、台所、すべて揃っている。
部屋数は居間と寝室の二つ、畳敷きの和室と洋室の寝室にはベットがある。生活に不自由はなさそうだ。家の中をひととおり、見まわったあと、
しばし居間で過ごした。
しばらくして、手持無沙汰なので、寝室へ行ってみた。
寝室は居間よりも薄暗い、掃き出し窓をあけて外を見た。
すぐ目の前は崖のようだ。かなり深そうだ。深い渓谷のようだ、対岸はかすかに遠くに見える。暗闇だが、赤茶色の光がかすかに映し出す。
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深さは数十メートル程度はありそうだ、
勇気をだして谷底をのぞく、
薄暗い谷底は、平たくかなり広い。ごつごつした岩や小石に混じって、人骨だろうか、白っぽいものがまばらにころがっている。
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生命の息吹は感じない。死の世界だ。
ここからは落ちたくないな。そう感じ、すぐ掃き出し窓をしめて、居間へもどった。
この家でしばらく滞在した。
地球の日本人用に、それっぽく用意してくれたのだとすると感謝しかない。
どれくらいの時間だろうか、非常に長く感じた。
話相手はいない。
宅配便の配達もない。借金取りも来ない。だれも訪ねてこない。ひたすら、一人で過ごす。
実は、一度だけ玄関を出てすこし外へでてみたが、見知らぬ土地だ、少し歩いただけで、怖くて家にすぐに戻った。
似たような家が何戸か並んでいたが、人の気配がない。
空が暗い、真っ暗ではないのだが、うす暗い。
ここはもしかして地獄の入り口、ゲートウェイの町か、地獄の一丁目か、そんな思いも浮かぶ。
守護霊のMARIEさんがきてくれたのが、この少し前だ。
ちょうど、借金整理に追われ、心身共にへばり、このまま過労で倒れて死んでもいい。そんな勢いで仕事をしていた。
いや、もうほんとうに消えてしまいたかった。
世界中の苦労を一人で背負っているような気分だったのだ。
毎晩、床にはいる前に、”このまま、夜のまま、朝がこないでくれ。” そう念じていた。そんなことを、もう何年も続けていた。
いつからか、夜はヘミシンク(注1)をききながら、”ただこの一瞬”、”この一瞬に集中” と心の中で唱えながら、次から次へと押し寄せる雑念をはらいのけていた。考え事、心配事がはじまると、結局そのまま朝を迎えてしまう。
ヘミシンクをはじめた当初は【幽体離脱】してそのままどこか別の世界へいってしまおう。そのまま戻らないぞ。そんな魂胆もあった。
結果としては、半年たっても幽体離脱できないままだった。
ただし、怪我の功名とでもいうことだろうか、なんとか寝れる日が増えてはいた。そんな頃の出来事だ。
あれ?
どれくらいの時間がだったころであろうか、はっと気がついた。この場所はずっと夜のままだ。
決して明けない夜の世界、そんな場所(星)だ。
ずっと夜の世界。これが自分が望んだ世界なのだ・・・。
仕事もない、 友人もいない、 だれも訪ねてこない。
家の裏は崖だ。覚悟さえできれば、いつでも・・・。
何もやることがない。TVもないしインターネットもない。
かなりの時間が経過している。
何日ほどだろうか、はっきりとしない。朝がこないのだから、日数の経過がわからない。3日か10日か1年か・・・。
..........
もういいよ、ここは退屈だ、帰りたい。(そう心の底から感じた・・・)
(次の瞬間)
ベットの上で、朝をむかえていた。
相馬市のホテルだ。
実はこのシャドーマンだが、気のせいならいいのだが、その後も時々現れているような気がする。
出張先のホテルの部屋で気配を感じることがある。
そんなときは、丁重にお断りして帰ってもらう。
もう大丈夫です。あとは自分でなんとかしますので。
(心の中でそう伝える。)
シャドーマン、あなたは誰なのでしょうか。
シャドウマンの正体、それはなんでも願いをかなえてくれる、スーパー執事なのだ。
普段は潜在意識の中にスタンバイしている。オーダーが入ると、あれこれ準備をして登場するのだろう。(これは筆者の現段階での仮説です。)
朝のこない夜はない。
夜の次は朝だ。
あたりまえである。
注1:
44.女神のいらだち へつづく
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