エピソードで大切なのは、インパクトの強さではなく〇〇○【さとゆみゼミレポート第4回】
ライター・コラムニストの佐藤友美(さとゆみ)さんが主宰する「さとゆみビジネスライティングゼミ」の講義レポート第4回をお届けします。
これまでのレポート↓
100字で書けることを120字で書くな
講義の冒頭はブレイクアウトルームに分かれて、前回の課題について話し合った。前回の課題は「気になる文章をみんなに紹介する」で、文字数は500~600字以内。どんなことを意識して書いたか、苦戦したポイントなどを4人で共有した。同じ課題に取り組んだ者同士で話すこの時間が、僕は好きだ。
その後、各グループで出た話題を全体にシェアし、ゼミ生の疑問にさとゆみさんがコメントをする形で講義は展開。
僕たちは前回の講義で学んだ「犯人しか知らない言葉」をいかに盛り込むかを考えながら課題に取り組んだ。ただ、さとゆみさんは「犯人しか知らない言葉を全編に盛り込む必要はない。スラスラ読ませるところはスラスラ読ませた方がいい。100字で書けることを120字で書く必要はない」と語った。
文章は、短ければ短いほどいい。短いほど、文章にスピード感が出る。読者は同じことを知るのなら、なるべく短い時間で知りたい。だから「犯人しか知らない言葉」は、ここぞという場面で使うのが正解だ。
ゴール設定の話題も出た。今回のテーマは「文章を紹介する」だったので、読者のどのような行動変容をゴールに置くかが難しい。さとゆみさんは「私だったら、今回は『読んでよかった』と思ってもらうことにゴールを置くかな。『文章が面白かった』でもいいと思うし、『紹介した文章が私にも響いた』でもいい」と話した。
「文章としてちゃんと伝わることはすごく大事。だけど、それを好きになるかどうかは読者次第だから、その後の責任は追わなくていいよ。自分がこれが好きだってことがちゃんと伝われば。それは技術を駆使してやってもらって、あとは文章は読者のものです」
「エピソードファースト」が叩き込まれている僕たちは、どんなエピソードを選ぶか、そのエピソードをどのように書くかにエネルギーを使った。「エピソードと気になる文章の帳尻を合わせるのが難しかった」というゼミ生の悩みに対し、さとゆみさんは以下のように応えた。
「順番が逆。どこかからエピソードをもってきて、帳尻を合わせるんじゃないんだよ。『この文章が好き』と思ったってことは、何か理由があるわけだよね。その理由そのものがエピソードだから。つまり、エピソードをどこかからもってくる必要は全然ないのよ。普通の人だったらスルーする言葉を自分は気になった。その理由を書けばいい。なぜその言葉にハッとしたのか。それがエピソードだから。もっと自分の心を観察して、思考を深めるんだよ。理由はあなたの中にはあるはずだから」
ハッとした。僕もエピソードをもってきて、どうにかこうにかうまい具合に着地できないかを考えていた。しかし、逆だった。書きながらどう着地するかを探るのではない。僕たちはすでに着地しているのだ。どのように着地したのかを丁寧に観察し、それをただ書く。それでいいのだ。
もう一つ、よく聞いてくれた!と思ったゼミ生の質問がある。「書いているときは熱量高く書いているんだけど、後で読むと独りよがりな文章になっている気がする。どうすれば独りよがりな文章になるのは防げるのだろうか?」。これ、マジで気になる。
さとゆみさんは「自分をその場所から離して、読者の目線で読むのが大事。視点が変わると、人の文章っぽく読める」とした上で、具体的に3つのヒントをくれた。
1つ目は時間を置くこと。書き上げてから10時間ほどおいてからもう一度読み直す。2つ目はシチュエーションを変えること。電車の中で読んでみたり、お風呂の中で読んでみたり。3つ目は文章の画面を変えること。パソコンで書いていたら、スマホで読む。プリントアウトして読む。横書きで書いていたら、縦書きにして読んでみる。こうした工夫をすると、書き手目線から読者目線に視点を変えやすくなるという。
井戸を深く潜れ
ここからは、より具体的な講評の時間に。
さとゆみさんは「『背筋が伸びる』という表現を使った人が何人かいたね」と指摘。ギクリ。使ったぞ。。。
悪いわけではないが、よくある言葉ではあるので、なるべく自分らしい表現を意識していこう、とのこと。
ほかには「inside」の意味がないケースで「〜の中で」は使わないように、との指摘があった。
今回の講評ではさとゆみさんは、あるゼミ生の書いた文章をピックアップ。僕自身、素敵だと思った文章だったのだが、どこがいいのか詳しく解説してくれた。
彼の文章にはリアリティのあるエピソードが書かれていて、映像が思い浮かぶ。たとえば、こんな一節があった。
さとゆみさんは言う。「みんな、ここジーンときたんじゃないかな。なぜか。同じ経験はたぶん誰もしてないと思う。でも、何かに失敗した時に誰かに励まされた経験をみんな持ってるはずなんだよ。彼しか経験してないことというのは、井戸を深く潜っている。井戸を潜って映像が浮かんだ時って、自分の経験と比べ始めるんだよ。自分にも、こんなことあったなって。エピソードで大切なのは、インパクトの強さではなく、解像度。深く潜ったら、つながるんですよ」
井戸を深く潜るためには、ディテールが大事。映像が浮かぶように、具体的な描写を書くことを意識したい。
さて、僕の書いた原稿はこちら。
さとゆみさんからは4箇所コメントが入った。
やってしまった。「二度読ませたら負け」なのに、3回も読ませてしまった。僕は文章を書く際にリズム感、スピード感を重視する傾向が強く、「箱根駅伝の放送がCMへ」と書いたが、伝わらなかったか…。一回で意味が分からなければ、結局読者を立ち止まらせてしまっているので、リズム感も何もない。いやー、難しい。
今回の課題で一番見直すべきところだと思う。ご指摘の通り。「犯人しか知らない言葉」、特に五感を使った情報を詰め込もうとして、ちょっと事故った。井戸を深く潜れていなくて、テクニック的にごまかそうとしたから、こうなるんだな。もっとちゃんと観察しなきゃあかん。
これは最初3つ書こうとしてのだけど、あまりいい表現が思いつかず「まあ2つでいいか」と妥協したら、即指摘が入った。やっぱり妥協はダメですね。でも3つ必要だと知れたのが収穫。
このあたりのリズム感は自分の持ち味かも。
全体的な講評として「自分の状況や意図(リクルートのところ)をどのように説明したら読者に伝わるか、と考えながら書くのはすごく難しいですよね。読んだ順番に理解できるか、を意識し続けることで少しずつ体得していきましょう」とコメントをいただいた。
く、く、悔しい。そして、文章を書くって、むずすぎる。リライトしたら、もう一度見てくれるそうなので、これは書き直します。