[ゲーム感想] 7 Days to End with You(Nintendo Switch)
年末のIndie Worldで紹介映像が流れ、一発で「いや面白そ~~~」と見事に惹き込まれたのでSwitch版のリリースを待って購入。
Switch版は購入時点で1,100円、steam版は通常価格で790円、スマートフォン版は破格の490円で買えちゃいます。買え。
※微ネタバレあり。購入前に読んでもそれほど問題は無いかと思いますが一応注意。
■ざっくり言うとこんなゲーム
日本のゲーム開発者Lizardry氏によって個人開発されたインディーズゲーム。
2022年1月24日にスマートフォン向けにリリースされ、同年2月にsteam、翌2023年1月にはNintendo Switch版も発売された。
(筆者はSwitch版でプレイしましたが、Switch版リリースに合わせて追加された「ちょっとしたオマケ要素」は既存のプラットフォームでも同様に追加されているので、どの機種で遊ぶかはお好みで)
ある日、主人公(あなた)が目覚めるとベッドの傍で若い女性がこちらを見つめていた。
しかし、あなたは彼女のことを知らず、家の中や窓の外の風景にも全く見覚えが無い。
それどころか、彼女が語り掛けてくる言葉すら何一つとして理解することが出来ない。
限られた時間の中で彼女の言葉、彼女との関係、そしてあなた自身のことをどれだけ「理解する」ことが出来るだろうか……
■良かった点3つ
① オリジナリティ溢れるゲーム性
溢れるどころか一面水浸しになるレベル(?)。
一応steamのジャンル名を参考にすると「パズル×ノベル」ということにはなるのだが、これほど古今東西多種多様なゲームが飽和した現代で「他に似ているゲームが思いつかない」というのは本当に凄いことだと思う。
ゲームの内容を簡単に説明すると「謎の架空文字で話しかけてくる女性が実際には何と言っているのかを頑張って解読していく」という要素が全てと言える一点突破型。
初めは誇張抜きで何を言っているのか全く理解出来ないが、その場の状況や他にその単語が使われたシチュエーションと組み合わせてある程度のアタリを付けることは出来るので、それらを頼りに謎の単語たちを1つ1つ紐解いていくことになる。
例えば部屋にある時計を指さした時に「△△ □□」と2つの単語を言われたら「これ 時計」か「今 ○時」か「時間 分かる」あたりかなと予想でき、次に花瓶を指さして「△△ ☆☆」と言われたとしたら、「△△」は「これ」(もしくはそれ)でほぼ確定となる、といった具合。
特に序盤はかなり地道な作業となるが、これが本当に楽しくて病みつきになるので是非自分の手で体験してみてほしい。
② 何周でもプレイしたくなる工夫
「何周も」ではなく「何周でも」。
公式サイトやCMやタイトルで再三言われているのでネタバレにはならないと思うが、このゲームは7日目を迎えると終了となる。
そして終了後にタイトルからNEW GAMEを選ぶと1周目と全く同じシチュエーション、全く同じ女性のセリフから再び1日目がスタートするのだが、唯一1周目と違う点として、単語帳に登録した単語の意味だけは引き継がれている『つよくてニューゲーム』状態で主人公が目を覚ますことになる。
つまり同じイベントであっても全く新しい感覚で楽しむことが出来るので、「あのイベントを早くもう一度見たい」という普通のゲームではそうそう起きない状態となり、2周目以降も冗長さを感じることなく、なんなら1周目よりイキイキと解読に取り組むことが出来る。
流れ星のイベントなんて特に良かったっすね……(しみじみ)
③ 考察・妄想が捗る設定
主人公の置かれている境遇があまりにも特殊であるため、自ずと絞殺考察も捗るというもの。
また、言葉の意味も一応の正解はあれど「こういうニュアンスじゃないかな」という捉え方はプレイヤーによってまさに千差万別であり、
ゲーム開始時に表示される「貴方が感じ、受け取った全ての物語は、全て正しいでしょう」という一文はまさにそのことを体現している。
(そういった意味でも未プレイの状態で他人の配信や攻略サイトを見てしまうのはめっちゃ勿体無いのでやめたほうがいい マジで)
そういえば、女性の喋り方が必要最低限の単語を並べた独特なものなのはもしかして「何とかして主人公(プレイヤー)とコミュニケーションを取りたい」という工夫の結果だったりして。
■気になった点3つ
① ビミョーに不親切な単語帳
攻略の肝となる単語帳。
ゲームの仕様上プレイ時間の半分以上はこの単語帳とにらめっこすることになるのだが、痒い所に手が届かない感じの作りになっているのが惜しいところ。
「登録した意味がメモ書きや回想に即座に反映されない(今出ているフキダシには反映される)」「行数のわりに上下スクロールが遅い(Switch版)」など細かい点もあるが、一番に挙げたいのは回想機能の仕様。
単語ごとに「その単語がこれまでに使われた場面」が記憶されてそれぞれの場面を振り返ることが出来る、というめちゃくちゃ助かる機能ではあるのだが、
「その単語が出てきたセリフ(フキダシ)」だけが記憶されていくため、固定イベントの中で出てきた単語は多くの場合「どういう流れでその単語が出てきたか」が分からず(画面上部にイベント名が表示されるのみ)、結果として単語埋めの軸は一問一答の指差し系に頼ることになる。
あえて不便にしている可能性もあるので一概には言えないが、このゲームこそイベントを丸ごと振り返るアーカイブ機能は必要だったんじゃないかなぁ。
ところで、Switch版を遊ぶ方でUSBキーボードをお持ちの場合は十字キーで1文字ずつ入力するのとは快適度が段違いなので、是非接続したうえでプレーしてみてください。一般的な無線キーボードなら本体USBに受信機を差すだけで使えます。
② マルチエンディングは嬉しいけども
恐らくほとんどの初見プレイヤーが1周目は「あっこれで終わりなのか…」というあっさりとした結末(以下ノーマルエンド)を迎えたと思われるが、実は……というほどでもないがこのゲームにはエンディングが複数存在する。
それ自体は勿論ありがたいことだし、ED分岐の条件も入念な準備が必要となるようなものではないので、条件さえ分かっていれば各EDを拝むのは非常に簡単ではある。
しかし、肝心の『EDが複数用意されていることとその個数』および『各EDのヒント』はゲーム内で全く示されないため「結局ノーマルエンド以外のEDは攻略サイトに頼ってしまった」という声がネット上に散見される……というかカッコつけずに言うと私がそうでした。
「思わせぶりだけど結局辞書埋めに使えるだけだったな」って要素が多いんじゃい!
で、ひとまず前者について「こうすれば」という案があるんですが具体的に説明するとネタバレになりかねないので、既プレイの方には以下の加工画像で察してもらえればと思います。
③ 引き継ぎ要素のアナウンスと2周目以降への誘導
Indie Worldでも流された紹介映像では「登録した単語は引き継げる」と説明されており、だからこそ「絶対オモシレ~~~じゃん」と惹かれて購入したわけだが、実際のゲーム中では2周目を開始して初めて単語帳が引き継がれていることが確認できるので、事前に知らされていない人はまぁ引き継げるでしょと思いつつも地味に不安になりながら二度目のNEW GAMEを選ぶことになると思う。
では1日目序盤でチュートリアル的に引き継ぎ要素を教えてあげれば良いかといえばそうではなく、1周目に限っては文字通り右も左も分からないという状況で「7日間のうちにこの人の言葉を出来る限り解読しないと…!」というたった一度きりの焦りを楽しんでもらわない手は無いので、
1周目が終わりを迎えたタイミングで「単語帳は引き継げます」という内容のメッセージウインドウを出してあげるのがベストだと思う。
そうすることで「じゃあもう1周やってみようかな」と良かった点の②でも挙げた『超面白い2周目以降』に自然と誘導することが出来る。
また、欲を言えば購入時(初期画面)と1周目終了時点でメニュー画面が全く同じであることも微妙な混乱を生むので、まっさらな状態の「NEW GAME」と単語帳が引き継がれた「NEW GAME+」の2種類を用意することで、安心して2周目を始められると同時に「ある程度の意味を把握したうえで1から単語帳を埋めたい」というあるかもしれない需要にも対応することが出来る。
■まとめ
「おもしろいゲームだったね」で片付けるにはあまりにも斬新で心に残る作品。『意欲作』ってのはこういうゲームのことを言うんだなぁと思いました。
価格の安さも考えると、明確な欠点が「タイトルをどう略せばいいのかわからん」ぐらいしか思いつかなくて困る。
そういえば気になった点には書かなかったけど、単語帳は主人公が未知の単語を1つずつ拾って記しているというテイなので、並び順は完全に「ゲーム内で出てきた順」にして任意で並べ替えることも可能、って形にした方がもう少し心地よい混乱を楽しめた気もする。
公式サイト:https://store-jjp.nintendo.com/list/software/70010000060038.html
書いた人:こいつ(https://twitter.com/koitsu511)