丸亀製麺の焼きたて肉うどんが旨すぎる

大学時代の４年間は地元岡山を離れ香川県で暮らしていた。
言わずと知れたうどんの聖地である。あとゲームは１日１時間条例

名古屋の人は言うほどきしめん食べない、福岡の人はそんなに博多ラーメン食べないといった話はご当地グルメの定番ネタではあるが、一方で香川の人はマジで隙あらばうどんを食べる。
47都道府県で最も狭い面積（しかも四国ゆえ街が作れる平地となると更に狭くなる）の中におよそ900軒のうどん屋がひしめき、都道府県別一人あたりのうどん・そば消費額では全国平均の２倍を超える圧巻の１位に鎮座している※１　といえばその偏愛っぷりが伝わるだろう。
※１　うどん・そばで一緒くたに集計してこれなので、うどん単体なら冗談抜きで全国平均の３倍近く行くんじゃないかと思う

かく言う自分もキャンパスライフはうどんと共にあり、午前中の講義が終わって学友と交わす「今日どこ行く？」は「今日どこ（のうどん屋）行く？」を意味していた。
大学から自転車で行ける距離に無数のうどん屋があるうえ、何よりお財布に優しいので特に学生のランチは必然うどんが主軸となるのである。
（ちなみに行きつけのうどん屋は当時かけうどん１杯が180円で注文できた）

かくしてうどんに関しては讃岐うどんが骨肉となっている身として一家言あるわけだが、それはそれとして丸亀製麺のうどんは普通に美味いと思う。
なぜだか一部ネット上では「丸亀製麺のうどんは偽物」「香川県民は丸亀製麺を認めていない」といった風説をちょくちょく見かけるが、あれはほぼ例外なく丸亀製麺の悪口を言いたいがために脳内に架空の香川県民を召喚しているだけだと思っている。お前どうせ瀬戸大橋渡ったこともないやろと。マリンライナーが潮風ですぐ止まるの知らんやろと。

確かに香川県内に丸亀製麺の店舗がほぼ存在しないのは事実だが、それは上記のとおりうどん屋が乱立しすぎて丸亀製麺が「何十何百とある選択肢の１つ」にしかなれないからである。
そのうえ県民は各々ひいきのうどん屋を持っているため、丸亀製麺を香川で成功させるのは例えるなら今から大阪でたこ焼き屋を始めて客足を定着させるぐらいムズいと思う。知らんけど。

で、そんな丸亀製麺の中でイチオシといえるのが何と言っても肉うどん。
正式な商品名は「焼きたて肉うどん」で、注文を受けてから牛肉とタマネギをフライパンで甘辛く焼き上げて麺に乗せ、熱々のお肉に熱々のかけだしを注いで完成という一品となっている。

古来からのファストフードとしてとにかく回転率が命であるうどん屋においてはトッピングは作り置きが基本であり、現に天ぷらなどはほぼ全てのうどん屋があらかじめ揚げておいたものを並べて客に取ってもらうというシステムとなっている。
また、肉うどんの主役となる牛肉炒めについても、同じく手間が掛かるため先に調理したものを天ぷらの横にしぐれ煮よろしく小鉢として置いておき、かけだしの熱さで冷えたお肉を復活させるという手法を取っているうどん屋も少なくない。

そんな中で今の丸亀製麺はあえて注文後に肉を焼くスタイルを取っていて、商品名にもある通り「焼きたて」をウリとしている。
回転率の面から言うともちろん作り置きが最適解なのだが、この工夫が牛肉の旨さを最大限に引き立てるのである。
また鮮やかな牛肉が注文した客の目の前で香ばしく焼けていく光景はパフォーマンス的な意味でもアガる。

そうして完成した焼きたて肉うどんにネギを散らして※２　存分に楽しむわけだが、肉やタマネギが旨いのはもちろんのこと、更なる肉うどんの魅力ポイントとしてかけだしが異様なほどに旨くなっていることが挙げられる。
すっきりとして優しい味わいのかけだしに牛肉とタマネギの旨味が溶け出すことにより、一気にパンチの効いた野性的なスープに変貌するのである。
これは豚肉が入っただけで味噌汁そのものの旨味も爆上がりする豚汁と同じ理屈である。多分。
※２　個人的には肉うどんには天かすまで入れると油に押されすぎて大雑把な味になってしまうと思うので、天かす無しか少量をオススメする

そういうわけで丸亀製麺に行く機会があれば一度は食べていただきたい肉うどんであるが、財布と血圧と体脂肪に余裕がある人には更なる悪魔的カスタマイズをオススメしたい。レジ手前に鎮座している梅おにぎりである。
理由は言わずもがな、圧倒的な旨味でブン殴ってくる肉うどんに対して梅干しの酸味は非常にありがたく、モッタリしてきた口の中が見事に正気を取り戻してくれる。
更に梅おにぎり自身も先程の旨味染み出し理論により、単品で食べるより明らかに旨くなる。
肉うどんが梅おにぎりを、梅おにぎりが肉うどんを引き立てる「味の調和」が生まれるのである。

焼きたて肉うどんと梅おにぎりセット、我らが香川県が糖尿病患者数のワースト争い常連となっていることに思いを馳せつつ是非ご賞味あれ。

書いた人：こいつ（ https://x.com/koitsu511 )
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