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【シナリオ】停電中、花火で街を照らす高校生の話。

〇8月 21時の公園
手持ち花火をしている祭、輝、彩奈の3人。
3人の共通点は、ミュージカルスクールに通う高校1年生。

祭「うにゃー!やっばー!これ!テンション上がる!!」
彩奈「ずっとやろうって言ってたものね、花火。」
輝「まさかこんな日にやるとは思ってなかったけどな。」
祭「輝!写真撮って写真!」

祭、花火を振り回し、絵を描く。

彩奈「あーちょっと、危ないわよ。」
輝「やだよ、充電無くなったら怖いもん。」
祭「大丈夫だよ!すぐ電気戻るって。」
輝「じゃあ自分の携帯でやれ。」
祭「それはやだ。」
輝「嫌なんかい。」
彩奈「しかし、明るいわねー。」
祭「貴重な光だにゃ。」
輝「街灯も見事に消えてるもんな。」
祭「町の方も凄い暗く感じたもん。」
彩奈「この光があったら、なんか安心っていうか、この光を頼りに生きていけるっていう気がするわね。」
輝「相変わらずポエマーだね。」
彩奈「え!?臭かった?」
輝「若干。」
彩奈「えー。」

3人の花火が消え、各々バケツに花火を入れる。

輝「ジュッ。」
彩奈「はは、ジュッ。この音好き。」
輝「わかる。」
祭「そうにゃ!!!!」
輝「何だ急に。」
彩奈「びっくりしたぁ。」
祭「さっき彩奈、この光で安心するっていったでしょ?頼りに生きていけるって。」
輝「お、ポエム。」
彩奈「やめて、なんか恥ずかしい。」
祭「それだよ!」
輝「ん?」
祭「花火持って、街歩こうよ!」
輝「まーたおかしなこと言い出した。」
祭「いいアイデアだと思わない?しかも絶対綺麗だと思うし、気持ちいいと思うんだよね!普段花火できない場所でやる花火!明かりの消えた街でやる花火!」
輝「できないよ、却下。」
祭「なんでできないって決め付ける!」
輝「逆になんで出来ると思った。普段花火できない場所が、停電したからできるようになるはずがない。」
祭「警察も感謝するかも!「灯りをありがとう!」って!」
輝「んなわけあるか。」
彩奈「なんかそんなミュージカルあったわよね。」
輝「インザハイツ?」
彩奈「そうそう。」
祭「ミュージカルでできるなら!!」
輝「ミュージカルほどフィクションなものないからね?」
彩奈「私達はこの公園を照らしましょう。」
祭「ちぇっ。はーい。」

彩奈、輝と祭に次の花火を渡し、3人、蝋燭に花火を近づける。
花火に火が灯る。

彩奈「いつ復旧するのかしら。」
輝「心配?」
彩奈「正直…。うちおばあちゃんいるから、エアコン無しでこの暑さ耐えられないかもっていうか、危ないっていうか。」
輝「確かに。」
祭「おばあちゃんいくつ?」
彩奈「もうすぐ80。」
祭「家出てきて平気だったの?」
彩奈「家族はみんないるし。お母さんもお父さんも帰ってきててよかったよ、ほんと。」
輝「電車も止まってるもんな。」
祭「そういえば、冷蔵庫の物腐らないかな。」
彩奈「腐りそうね。」
祭「あー、昨日買い物行ったばっかなのに。」
彩奈「電気って偉大ね、ほんとに。」
祭「昔の人って電気なしで生きてたんでしょ?半端ないね。」
輝「まぁ昔は世界の仕組みも違ったからな。気温もここまで高くなること無かったし。」
祭「異常気象だ。」
彩奈「もしこれが1週間とか続いたら、人間みんな死ぬんじゃうかも。」
祭「縁起でもないこと言わないでよー!」
彩奈「ごめんごめん。」
輝「ま、そしたら普通に引越すな。避難するな。」
祭「たしかに。」
彩奈「電車も止まってるのに?引越しのトラックだって頼めないよ。」
輝「隣町は復旧してるんだろ?とりあえずチャリで行って、ゆうりとかに少し泊めてもらうよ。」
祭「それはそれで楽しそう!お泊まり会!」
輝「な。彩奈のおばあさんも、マジいざとなったら車で移動して知り合いの家泊めてもらった方がいいよ。」
彩奈「そうね、そうする。」
祭「…明日のレッスンどうなんだろ。」
彩奈「明日の朝の様子みて連絡するって。さすがに冷房なしで歌もダンスも出来ないから。」
輝「本番近いからなー。流石にここで休講はされたくない。」
祭「休講になったら、みんなで公園とかで集まって練習やろう!」
輝「屋外は普通に死ぬから。日中35℃超えてんだよ?」
祭「ジーザス。」

花火が終わり、バケツに入れ、また新しい花火に火をつける。会話中にそれが何度か繰り返される。

祭「停電の原因わかったのかなー。」

祭「…誰か見てよ。」
輝「充電使いたくない。」
彩奈「同じく。」
祭「ふにゃああ気になるー。」
輝「自分で調べろよ。」
祭「充電使いたくない。」
輝「みんな一緒だっての。」
祭「ちぇ、はーい。」

少し経って、祭が体をもじもじし始める。

祭「ねぇ、彩奈と輝さ。彩奈は無理だったら別にいいんだけど。」
彩奈「ん?」
輝「なに。」
祭「…今日この後、泊まりに来ない?」
彩奈「あー…。」
輝「怖いんだ。暗いの怖いんだろお前。」
祭「にゃ!?!?そうとは一言も言ってない。」
輝「顔にそう書いてある。電気無いの怖いですって。一人暮らしの祭を助けてくださいって。一晩越えられる自信がありませんって。」
祭「(顔を触って)書いてない!!!」
輝「書いてありますー。」
祭「ムキーー!書いてない!!!ねぇ彩奈、書いてないよね?」
彩奈「(祭りの顔をよく見て)あはは、書いてある書いてある。」
祭「にゃんと!?!?」
輝「彩奈が棒読みじゃないってことはほんとに書いてあるぞ。」
彩奈「嘘つけないからね。」
輝「彩奈が嘘つけないってことは、彩奈にも嘘つけないからな。」
祭「ふにゃーやられたー。ねぇ彩奈お願い!!!輝も!!泊まりきて!!!」
彩奈「うーん、ちょっとおばあちゃんのこともあるし、家に確認しないとなんとも。」
輝「私も、さすがに親に確認するわ。」
祭「そうだよに…。」
輝「…逆に祭がウチ泊まりに来る?」
祭「え!?!?いいの!?!?」
輝「多分それなら親もいいって言う気がする。多分ね。あと彩奈が泊まりNGだったら。」
祭「(輝の手を取って)ありがとう!!本当にありがとう!!」
輝「花火踏んでる。」
祭「にゃ!!(横に避ける)」
彩奈「危ない!!(祭が避けた先に花火の灯りがあり)」
祭「にゃー!!!!」
輝「もうお前じっとしてろ。」
祭「はーい。」
彩奈「あはははは。」
輝「全く。」
彩奈「…ねぇ、次、そろそろやらない?線香花火。」
輝「いいね。」
祭「やる!!!」

ーー

3人しゃがみ、線香花火の火を見つめる。

彩奈「もし明日も続いたらさ、」
祭「うん。」
彩奈「…また花火したいな。」
輝「気に入ったの?」
彩奈「ちょっと。」
祭「ちょっとかい。」
彩奈「いや、…ちょっと落ち込んでたの。停電になって。」
輝「うん。」
彩奈「でもなんか、楽しい思い出が出来て嬉しくて。」
祭「祭も!今日3人で花火できて嬉しかった!」
彩奈「最近集まれてなかったしね。」
輝「忙しくてね。」
祭「あ!!!」

祭と輝の線香花火の火の玉が落ちる。

祭「どっちが早かった!?」
彩奈「え?」
祭「祭と輝!」
彩奈「…祭、かしら。」
祭「がーーーん。」
輝「勝手に勝負してたのかよ。」
祭「輝には負けたくなかった。」
輝「ま、普段の行いが良いからかな。」
祭「祭りだっていいもん!」
彩奈「あ!」

彩奈の線香花火が、落ちずにそのまま消える。

祭「あー!!すごい彩奈!!」
輝「久しぶりに見た、落ちないの。」
彩奈「ま、普段の行いかな?」
2人「「うわー」」
輝「彩奈のそれには同意せざるを得ねー。」
祭「それにゃー。」
彩奈「あはは。」
輝「もう花火ない?」
彩奈「…あと数本、かな。」
輝「ちょっと場所変えない?街の様子も気になるし。」
祭「確かに!違う場所も照らすにゃー!」
輝「いい?彩奈。」
彩奈「もちろん。」
祭「誰か呼ぶ?」
彩奈「…今日は3人でいいんじゃない?」
輝「うん。」
祭「…そうだね。」

各々、身支度を始める。

彩奈「変な日だなー、今日は。」
輝「ほんとにね。」
祭「うん!」


おしまい

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