#5 簡潔性
一段落から一ページ(400~700文字)で、
形容詞も副詞も使わずに、なにかを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。
マイページから「ご解約はこちら」の表示をタップすると、文字列が続いた。
「ご解約の前にご確認ください、ご使用方法は合っていますか、説明を再度読んでから効果をご確認ください」
確認確認、どれだけこちらに不注意の責任を押し付けるのだろう。マイページの中をめぐっても解約にはたどりつけなかった。
わたしはお問い合わせ欄をタップして、解約したい旨を書き込む。手放したくないとかわされることのないよう、こちらの意思を提示する。
気持ちは他に移ろったのだ。香りもテクスチャーも好みで肌に合うことを確認済み。ふりかえる気持ちはない。
「解約がスムーズにできないとなると、企業イメージが落ちるように思います」
書いてみて、自分の言葉に胸がえぐれる。
口約束を踏み固めていなかった。期間限定のキャンペーンだった。深追いすれば痛手になると思った。物わかりよくいてしまった。
おかげで外側には傷がない。汚れもない。
解約予定のシリーズを全身にライン使いする。
今日わたし、返品されました。
ヒアルロン酸で保水力を限界まで高め、涙はこぼさなかった。
(459文字)
おまけ。
これはとてもむずかしかった。
表現の幅を狭められる気がした。
たぶん、選んだ題材がこれじゃなかったら
書けなかったんじゃないかな。。