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#4-②構成上の反復
文体の舵をとれ
練習問題4
問2
語りを短く(700~2000字)執筆するが、そこではまずなにか発言や語りがあってからそのあとそのエコーや繰り返しとして何らかの発言や行為を出すこと。
ジジョジジョジジョジジョジジョ。8年目の声はねばつくほどで、はやくおわらないかなあと思う。
鍵は隠しておいたのにどんな嗅覚が働くのか見つけ出して車に乗ろうとしているところを、すんでのところで捕まえる。
「お義父さん、運転ならわたしがしますから。どこへおでかけです」
義父は不快感をあらわに帽子を深くかぶり直す。
老化は自然なことだから、恥じることでもなんでもないのに。
「また、事故が起きたら、か。お前の運転なんかより、よっぽど信頼できる。それに車だってしっかりしてるのを乗ってるだろ」
かたくて有名な舶来ものの車で守るのはあなただけなんですか、あれは走る凶器なのだからあなたよりも周りを守ってほしいと、その思いをわたしは年々強くする。死ぬならあなたが死んでくれと、それも一人で死んでくれと、お腹の底が濁っていく。
夏祭りは大盛況で、それを花道に会長さんはやめるらしい。おつかれさまでした、さすがでしたね、すばらしいです、あなたでなかったらこうはできなかったでしょう、称賛の嵐でくるみにくるんで、次期は辞退するらしい。あとは次の人にまかせて、後ろで好きなことを言ってればいいんだって、気楽で、一番いい地位で、あいつもようやっとそこまできたかというのが義父のみたてだ。
ジジョジジョジジョジジョジジョジジョジジョ。
老化は自然なことだから、鳴かなくなっても恥じゃない。むしろ7日で泣きやんで秋がくるのが自然じゃない?
免許返納をせまれば怒りだす。アクセルとブレーキを間違えてもそのことを指摘しても、「あの判断は間違ってなかった」
「往来の気が緩んでいるからだ」
「くだらん」
「けしからん」
自分だけはいつも特別で、そう思っていることは自然で、そう扱われるのも当然、誰の目にも明らかな黒いハットをかぶり人をねめつけて。
老化は自然なことだから、なにも恥ずかしくないのだから、どうかどうか縁側の将棋盤の前で一軍を率いていてくださいと、あなたが暴れないように捕まえて特権をはぎとって、ただの年老いたひとりの人間にもどしたいのにできない。
ジジョジジョジジョジジョジジョ。
シューソクシューソクシューソクシューソク。
ただのひとりの人間になったとき、この鳴き声はどうきこえますか、聞きたくないからなにも聞こえないのですか、それは認知のゆがみであって、せめてハンドルは手放さなければ周囲が危険にさらされるのです。
コージョコージョコージョコージョ。地面では多くのひとが虫の息で喘いでいる。一寸の虫にも五分の魂、無視されつづけてほんとうは虫なんかじゃないのに、あなたは見ないしあなたは聞かない。