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アトピー性皮膚炎などへの漢方について思いついたこと

 東洋医学会のWEB開催の会期中(2021.8.13~15)ですので、少し漢方について思いついたことを。

 そもそも漢方に関しては、自分にとって一番最初に学んだCAMといえるもので、学生時代からの学習や、漢方外来を群馬県の山あいで開設してから数えると四半世紀以上の長いお付き合いです。
 現在でも、腹診を中心にした和漢の手法で処方するときは、広島で古方を展開されていた小川新先生の処方を、アトピー性皮膚炎や腎機能障害、リウマチなどアレルギー・自己免疫の難治性疾患を扱うときには京都・高雄病院の江部洋一郎先生の処方を参考に診療を行っています。加えて近年は、サイエンス漢方的な視点も大切にして処方をしています。と書くと、古方派なんだか中医学なんだか現代派なのか、わけのわからない状態のようですが、意外に自分の中では適宜、使い分けは自然な流れとなっています。(なので和漢ですか中医ですか、というご質問には答えられないのであります)

 こうした従来の漢方処方に加え、伝統的な考え方を援用して応用しているのが、「慢性炎症」の治療です。
 血液データ上、何らかの慢性炎症が疑われるものの、そのフォーカスが定まらないということは少なくありません。これまでいくつもの病院を経由してから当院へ来られる方も少なくないことが、こうした事情につながるのだと思います。自己免疫や自己炎症的な状態など、西洋医学的にはそれ以上のアプローチが出来ない状態の方に「漢方」がとても有効なことがすくなくありません。
 これは栄養やオーソモレキュラー的な方法よりも、身体内部の「方向性」や「寒熱」の視点も絡むため、漢方的方法が最も奏功するように思います。この方向性と寒熱の処理という問題は、おそらくオーソモレキュラー医学のみを専らとしている方には極めてなじみのない考えで、いわゆる分子栄養的な視点の弱点であるとも考えています。

 またアトピー性皮膚炎の治療などは「寒熱」の微妙な調整が必要になるので、鍼灸・刺絡など徒手的な療法と組み合わせて、東洋医学的視点は外せません。とくに顔面やデコルテを中心に赤くなっているパターンは、単一の方法ではそう簡単には解決しないように思います。これには石膏による清熱に加え、直接炎症物質を抜き去る「刺絡」が不可欠です。

 また赤ミミズの健康食品など、漢方の枠ではありませんが、従来の漢方の枠を拡大してくれるようなものも増えてきているので、統合医療のもとで、漢方は更なる発展を遂げるのではないかと考えています。

経方医学1―「傷寒・金匱」の理論と贈り物解説画像

経方医学——「傷寒・金匱」の理論と処方解説 1 
[電子版]第1巻 経方医学 分冊版
横田靜夫 東洋学術出版社 2021-07-30


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