小さな診療所から(10)
10代女性のHさん、数年前から漠然とした不安感が強くなり、家に閉じこもりがちでした。いくつかの心療内科やカウンセリングに行くものの、あまり相性が良くなかったのか継続することがありませんでした。当然、処方薬も気が進まず、服用すると気分が悪くなるので、継続的に服用することもありませんでした。
そうした状況が続く中、母が知人を通して紹介されたブレインシンメトリーを用いた「ニューロフィードバック」を知り、試してみようと思い、施術開始。Hさんの気性とフィットしたのか、今度は継続することができました。そしてニューロフィードバックが進み、数か月もすると漠然とした不安が改善し、少しずつですが外出が出来るようになってきました。
この辺りから、精神的には活動を欲しているものの、身体の疲労感と、咽喉頭部の違和感、後鼻漏、等の症状が前面に現れるようになりました。外出はできるようになったのですが、今度はこうした諸症状がずっと治らないのではないか、という不安にさいなまれるようになり、さらに症状の増悪を招いているようでした。
そこで、ニューロフィードバックのセラピストが、上咽頭擦過療法(EAT)についての知識があったため、慢性上咽頭炎の関与を疑い、当院紹介となりました。
来院時に食事などを詳細に問診したところ、タンパクや鉄分の不足が示唆されたため、血液検査を施行し、その結果に基づいて栄養指導を行いました。併せて、症状からも慢性上咽頭炎が疑われたため、綿棒にて上咽頭を擦過したところ、両側から出血を認めたので慢性上咽頭炎と診断しました。
以後、2週間に一度のペースで上咽頭擦過療法(EAT)を施行したところ、後鼻漏などの不快症状は軽快、ご自身でも自宅にて上咽頭の洗浄などをこまめに継続していきました。それにより4か月経過頃には症状軽快、時折ある喉のあたりの違和感については漢方処方と併用して、症状に対しての不安感、恐怖感が軽減されていきました。
器質的な症状の改善に伴い、女性としての自立に不安を抱えていることが判明してきたため、ハーブやアロマを用いる植物療法の女性セラピストに紹介し、同性の立場からセルフケアの指導を開始することになりました。
現在は、バイオフィードバックのセラピストから行動分析的な介入によりサポートされつつ、植物療法によるセルフケアを学び、大人の女性として、新生活への一歩を踏み出しています。