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‐10倍早く、100倍の選択肢から‐生成AIで事業開発を加速させる5つのポイント

はじめに

生成AIを活用した事業開発プロセスは、多くの企業にとって新たな可能性を秘めた領域です。しかし、その効果的な活用方法については、まだ模索段階にある企業も少なくありません。NEWhでも事業構想や戦略策定など様々なプロジェクトで生成AIを活用しています。個人的な感覚としては、生成AIなしではプロジェクトを自信を持って遂行できないというレベルまでになってきています。実際に生成AIを適切に活用してみると、得られる情報量と多角的な視点によるフィードバックの回転数が、従来のプロセスと比較して圧倒的に多くなります。その結果、"事業"に対する解像度と熱量/自信が高くなるのが実感できます。
本記事では、私が実践することでわかった生成AIを事業開発に活用するための5つのポイントについてまとめていこうと思います。とはいえ、絶賛世の中が挑戦中の領域です。みなさんからもいろいろなご意見をいただけるとうれしいです。また、高度な活用ではなく、ChatGPT/Claudeなど誰でもアクセスできるサービスの利用を前提とした内容になります。では、はじめていきましょう。

生成AIで事業開発を加速させる5つのポイント

生成AIで事業開発を加速させる5つのポイント

1.人間と生成AIの共創を前提としたプロセス設計

生成AIを効果的に活用するには、従来の事業開発プロセスを根本から見直す必要があります。人間と生成AIがそれぞれの強みを活かしながら共創できるプロセスを設計することが重要です。

従来の事業開発では、アイデア創出や情報収集は主に人間同士のブレインストーミングやワークショップを通じて行われてきました。しかし、生成AIの活用を前提とすると、これらのプロセスは大きく変わります。新しいアプローチでは、個人が生成AIとの共創を通じて一定レベルのアウトプットを生み出し、それを人間同士の会議で洗練させていくという流れになります。

新事業AIスプリントのプロセス

このプロセス再設計のポイントは、発散・生成・評価の各段階で適切なプロンプトを活用し、個人と生成AIのフィードバックループを確立することです。これにより、以下のような利点が生まれます。

1.個人レベルでの創造性の向上
生成AIとの対話により、多様で質の高いアイデアを短時間で生み出せます。
2.効率的な情報収集と分析
生成AIを活用し、膨大な情報を迅速に処理し、有用な洞察を得られます。
3.柔軟な作業スケジュール
個人の業務時間に合わせた生成AIとの共創が可能になります。
4.会議の質の向上
人間同士の会議は、生成AIとの共創で得られた成果物に対する高度なフィードバックや重要な意思決定に焦点を当てられます。

結果として、このプロセス再設計により、会議時間の大幅短縮と、より質の高い成果物の創出が可能になります。また、個人の創造性と組織全体の生産性の両方を向上させる可能性を秘めています。

2.ドキュメント型プロンプトで一貫性と再現性を担保

生成AIを活用する上で重要なのは、再現性の高いアウトプットを得ることです。そのためには、ドキュメント型プロンプトの活用が効果的です。

ドキュメント型プロンプトとは、生成AIに対して詳細な指示を与えるための形式化されたテキストです。このプロンプトを適切に設計することで、求める形式や品質の回答を一貫して得ることができます。

メガトレンド調査とドキュメント型プロンプト

例えば、新規市場に参入する際のトレンド調査を行う場合、エグゼクティブサマリーから始まり、市場規模、主要プレイヤー、顧客セグメントなどの項目を指定したプロンプトを用意します。これにより、誰が使っても同じ品質の情報を一瞬で収集できるようになります。

実際の活用例として、デジタルヘルスケア業界の分析を生成AIに依頼してみると、数分で業界の概要や市場動向、主要プレイヤーなどの情報が得られます。これにより、従来の手作業による調査と比べて、大幅な時間短縮と情報の均質化が実現できています。

ドキュメント型プロンプトは、誰がやっても一定品質の情報収集やアイデア創出が可能となります。つまり、単に効率化だけでなく、組織全体の情報収集・分析能力の底上げにもつながるということです。

ちなみに、Difyなどのツールを活用すると、ドキュメント型プロントから簡単にAPPsをつくれます。チームで運用する場合はAPPsにしたほうが浸透しやすいので、NEWhでは、ドキュメント型プロンプトをガシガシAPPs化していっています。下の画像をクリックして利用してみてください。※簡易に作っているので、不具合ある場合はご容赦ください。

業界トレンド調査のAPPs

3.大量の情報を人間とAIが使える状態にする

生成AIは大量の情報を短時間で生成できますが、その情報を効果的に活用するためには、人間が理解しやすく、かつAIが再利用できる形式に整理することが重要です。

例えば、競合調査を行う際には、生成AIから得られた情報を「競合調査カード」のような統一フォーマットに整理します。このカードには、企業概要、収益モデル、ビジネスモデルの特徴などの項目を設け、人間が解釈を加えながら情報を整理します。

競合調査カードと情報活用

特に重要なのは、AIが生成した情報をきっかけとし、「収益モデルとその理由は何か」「ビジネスモデルの肝は何か」といった、人間の思考を促す項目を設けることです。これにより、単なる情報の羅列ではなく、意味のある知識として整理することができます。

さらに、これらの人間が整理した知識をCSVファイルなどの形式で保存することで、再び生成AIに入力し、より高度な分析や洞察を得ることができます。例えば、「成長率でクラスタリングすると、どのような特徴が見えますか?」「日本企業と海外企業で、どのような成熟度の違いがありますか?」といった質問を投げかけることで、新たな視点や気づきを得られます。チームにデータサイエンティストがいなくても、非構造化データからも一定レベルのデータ分析が可能になるのです。

このように、人間とAIの双方が活用できる形で情報を整理することで、より深い洞察と効果的な意思決定が可能になります。

4.評価基準の事前設定による即時フィードバック

生成AIを活用することで、アイデアの創出から評価までのサイクルを大幅に短縮することができます。しかし、その効果を最大化するためには、明確な評価基準を事前に設定することが重要です。

従来の事業開発では、アイデアを考えた後に市場規模や顧客セグメントの調査を行うことが一般的でした。特に市場規模、セグメント規模などは、様々なデータを組み合わせながらフェルミ推定するのに苦労された方も多いのではないでしょうか?しかし、生成AIを活用すれば、これらの情報を瞬時に得ることができます。そのため、アイデアの質を迅速に評価し、改善のサイクルを高速で回すことが可能になります。

事業機会の評価と高速フィードバック

具体的には、チームで「我々の事業機会をどう評価するか」を徹底的に議論し、納得できる評価軸を設定します。例えば、「市場規模が100億円以上あるか」「国内外で先行事例があるか」といった基準を設け、これらをプロンプトに組み込みます。

このように評価基準を明確にしておくことで、生成されたアイデアに対して即座にフィードバックを得ることができます。その結果、改善ポイントが明確になり、より質の高いアイデアへと素早く進化させることが可能になります。

さらに、この高速なフィードバックループにより、チームメンバーの経験値も急速に向上します。結果として、より良質なアウトプットを生み出す好循環が生まれるのです。

生成AIを活用した自己学習モデル

5.ビジネスフレームワークに合わせたプロンプト設計

生成AIを効果的に活用するためには、既存のビジネスフレームワークとAIの能力を融合させることが重要です。具体的には、フレームワークの構造に合わせてプロンプトを設計することで、より実用的で洞察に富んだ結果を得ることができます。

フレームワーク、ストーリ作成に合わせたプロンプト設計

例えば、事業コンセプトを検討する際には、「誰の」「どんな問題を解決するか」という基本的な問いから始め、特徴、デリバリーチャネル、料金モデルなどの項目を含むフレームワークを用意します。このフレームワークの各項目に対応するプロンプトを設計することで、生成AIから一貫性のある事業コンセプト全体を引き出すことができます。

さらに、「なぜ今なのか」「なぜ自社なのか」「どこに競争優位性があるのか」といった、より深い洞察を求める項目をフレームに組み込むことで、単なるアイデア出しを超えた戦略的な思考を促すことができます。

このアプローチの利点は、生成AIの創造力と既存のビジネス思考法を組み合わせることで、より実践的で説得力のある事業計画を短時間で作成できることです。また、フレームワークを通じて生成された内容は、そのままプレゼンテーション資料の骨子としても活用できるため、アイデアから提案までのプロセスを大幅に効率化できます。

ただし、生成AIの出力はあくまでも叩き台であり、人間による解釈と洞察が不可欠です。フレームワークに基づいて生成された内容を批判的に検討し、必要に応じて修正や深掘りを行うことで、より質の高い事業計画へと昇華させることができます。

生成AIと人間の強みを活かした新時代の事業開発

生成AIを活用することで、大げさに表現すれば「10倍早く、100倍の選択肢から」事業を検討できるようになります。つまり、生成AIによって従来はトレードオフであった網羅性や精度の高さと効率性が両立できる環境になったということです。、この記事では生成AIを活用した事業開発の5つのポイントをご紹介しました。これらのポイントが、みなさんの業務効率化や創造性向上に少しでも役立つヒントになればうれしいです。

事業開発における生成AI活用のメリット

ただ、忘れてはならないのは、生成AIはあくまでもツールであり、最終的な判断や見立ては人間が行うことです。AIの力を借りつつ、人間ならではの洞察や直感を大切にすることで、よりよい事業開発が実現できると思います。NEWhが提供している「新事業AIスプリント」プロセスにおいても、生成AIに任せるのではなく、人間が考えることを大切にしています。AIと人間それぞれの強みを組み合わせることで、これまでにない斬新なアイデアや効率的な開発プロセスが生まれる可能性が広がります。

NEWhのサービスラインナップ

生成AI技術は日々進化しています。今回ご紹介したポイントを起点に、みなさんの独自の活用方法を見出し、さらなる事業開発の可能性を追求していただければと思います。そして、もし新たな発見や活用法がありましたら、ぜひこっそり共有していただけるとうれしいです。

最後に告知です。
NEWhでは、8月8日(木)17時から、「新規事業開発を生成AIで加速させる!事例と実践で考えるAI活用の勘所」というセミナーを開催させていただきます。興味ある方はぜひご参加くださいませ。

また、事業開発に生成AIを活用したいのだけど、、、、って方はぜひお気軽に小池までお声がけください。Xが一番レスが早いと思います。
https://twitter.com/uskkoike

それでは、また。

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