すんきを漬けよう。
今年7月、「発酵の学校」でもって、東京農業大学名誉教授の岡田早苗先生による「すんき」の話をとっても興味深く聞かせていただきまして、そのおいしさの秘密と、作り方のコツを伝授いただきましたので、早速原料である「木曽赤かぶ」の種を入手して9月初旬に播いてみました。
「木曽赤かぶ」と言っても、地域ごとで微妙に形など違っていまして、御嶽山麓周辺の地域ごとに「開田かぶ」や「王滝かぶ」など、微妙に形や色味が違っています。300年以上の時間のなかで、地域それぞれに合った種を選抜しては継いできたものです。尊いですねぇ。赤と言うより紫に近いので「紫かぶ」とも呼ばれます。私が入手した種は「王滝かぶ」ではないかと思われます。
さてさて霜も数回降り、かぶも大きく育ってきたので、いよいよ収穫して漬け込みです。漬け込みには主に葉っぱ(茎)を使いますが、かぶを刻んで入れる場合もあります。茎を長いまま漬ける「長漬け」と刻んでから漬ける「切り漬け」があります。今回は茎の長漬けにしてみました。
ちなみにかぶの本体は、まるのまま塩漬け(古漬け)にしました。飛騨で言う赤かぶ漬けですね。スライスして、千枚漬け的な甘酢で漬けても良いですね。
60℃のお湯でサッと湯がいたら、昨年のすんきを乳酸菌のスターターに混ぜつつ漬け込み、45℃くらいに冷ました茹で汁を適量加えて、昼間なら暖かい所に一日置いておきます。夜なら毛布で包んだりして1日保温します。あとは低温で一週間もしたら食べられ、その後木曽では冷蔵庫並の低温になるので、長期保存が可能になるんですねぇ。
初日に温度を上げるのは、すんきならではの訳がありまして、一般的な「かぶ」よりも「木曽赤かぶ」にはリンゴ酸が多く含まれているそうで、これが35℃辺りで活発になる高温性乳酸菌の働きでリンゴ酸をコハク酸に変えると言うんですねー。いやぁ、これを経験の積み重ねによってあみ出してきた先人に最大の尊敬と感謝をいたします。
コハク酸と言うのは貝類に多く含まれる旨味成分ですが、これですんき汁が、なんとなくアサリの味噌汁のようなおいしさがあるなーと思ってたのが納得出来ましたねぇ。
余談ですが、「すんき」は「酸茎(すぐき)」がなまったものと言われてますけども、実は岐阜県には御嶽の西北部にあたる高山市高根地区に「酸菜(すな)」と呼ばれる「すんき」と全く同じ漬物があるんですよー。まめちしきでした。