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第88椀 マダケ(真竹)のお味噌汁

初出:2021年7月4日

<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから

「お味噌汁復活委員会」は、味噌汁の大切さをあらためて発信していこうと、2014年夏にFacebookページにてスタートしました。世話人、お味噌汁復活ライター、一般読者が思い思いの味噌汁を投稿しています。

味噌汁の出汁・味噌・具材を、それぞれに深く楽しく考え広め、毎日の食卓に味噌汁をいただく習慣を復活させるべく、活動の場を広げています。

私コイタは第1期からお味噌汁復活ライターをさせていただいております。ここでは私の書いた記事をまとめて紹介しています。

テーマ『素材のことを知って食べるとより美味しい』
「マダケ(真竹)のお味噌汁」


前回のハチク(淡竹)に続きまして、マダケ(真竹)について書かせていただきます。

タケノコの話で好きなのが、「アンマリ毎日、筍(カタクナツテ居マス、時ハヅレダカラ)ヲ喰フノデ、腹ノ中ニ、「籔」ガ出来ヤシナイカト、心配シマス ~中略~ 今度ノ私ノ俳句ニ「筍」ノ句ガ大分アリマスガ、ソノ「筍」ハ、右ノ事情ノ「筍」故オ察シ下サイ、竪クテ、味モナンニモナイ……」という、自由律俳句の俳人尾崎放哉(おざきほうさい)が、師匠の荻原井泉水(おぎわらせいせんすい)にあてた手紙の一節です(放哉書簡集より抜粋)。これは、小浜の常高寺に居候していた頃、和尚がマダケのタケノコを毎日味噌汁の実にしていたそうなんですが、旬を過ぎて竹みたいなのを食べさせられて閉口していた様子です。

マダケのタケノコはハチクと同じくらいか、ちょっと後で6月あたり。遅いところでは7月まで出てきます。皮に黒い斑点があって、毛はなくツルツルしていますので、簡単に見分けられます。つまりあの、おにぎりやちまきを包んでいる竹皮の柄です。収穫はハチク同様に長さ40~50cmくらいのものを根元でポキンと折って収穫します。

マダケは青森以南に生育していて、昔は建築から竹細工までさまざまな生活道具に利用してきましたが、今ではマダケの出番はなく、ほとんどが放置された竹藪になっているのが現状です。タケノコでもっと食べたらいいのにと思うのですが、採ってから時間がたつと苦くなってしまうので別名を苦竹とも言いまして、一般的なスーパーなどにはまず出回りません。

私の住む地域でもマダケを食べる人はまずなく、タケノコが出てきても足蹴にされて邪魔者扱いです。調べてみると「採りたてはアクがなく刺身でも食べられる」と書いてありますが、我が土地では土壌のせいか、気候のせいかはわかりませんが、採ってすぐでもほのかに苦味があります。モウソウと同じようにコヌカと一緒に1時間ほど煮てアク抜きしてから料理に使います。

肉は薄いですが歯触りはシャキシャキとして甘みもあります。いつもは穂先をお味噌汁に入れて、根元はメンマみたいにしていますが、今回は放哉の食べていたような根元の方のまるで竹のようなところを使って、精進だしで仕立ててみました。ハチクよりも青味がかっていますので、本当に食べられる?と思いがちですが、ちゃんと旬採りなので柔かいです。夏の竹林を思わせるようなお味噌汁になりますねぇ。

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「マダケのお味噌汁」
具材:マダケ
出汁:昆布、乾椎茸
味噌:手前味噌(米麦混合麹)


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