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Faciloの「全部のせ」ストックオプション、全貌を初公開!

おかげさまでFaciloは急成長を続けていて、東洋経済の「すごいベンチャー100」にも選出されました。そんな中、今年2024年10月には税制適格ストックオプションを発行しました。創業から少し遅めのタイミングにはなりましたが、そのぶん一般的に普及しているストックオプションのスタンダードをただ踏襲するのではなく、Faciloの価値観を体現できるよう想いを込めてゼロベースで設計してきました。
今回はFaciloの企業カルチャーを知ってもらうために、このストックオプションの制度を5つの特徴を軸に初公開したいと思います。


特徴①: ポータビリティ性あり(しかもフルポータビリティ)

ストックオプションに関する最大の論点はポータビリティ性です。EXIT前に退職してもストックオプションを持ち出せることを「ポータビリティ性あり」、退職すると失効してしまうことを「ポータビリティ性なし」と表現します。
アメリカのスタートアップ業界では、「ポータビリティ性あり」が一般的に認められています。一方で、日本では従来、「ポータビリティ性なし」が慣例で、ストックオプションを行使しリターンを得るためには、企業がEXITするまで在籍することが求められることが多いです。
この仕組みは、企業側にとっては従業員の引き留めに有効ですが、一方で、従業員の自由なキャリア形成にはマイナスとなります。

この点に関して、最近では議論が活発化しており、日本でも「ポータビリティ性あり」を採用するスタートアップが増えています。ただし、企業と従業員の双方の利益の折衷案として、一部のストックオプションは持ち出せるが、残りは失効するという「部分的なポータビリティ」に留まるケースも多いです。
Faciloでは、この折衷案を採用せず、権利確定済みのストックオプションについては、退職後も100%持ち出せる「フルポータビリティ」を選択しています。

理由は以下の3つです。

1. ストックオプションの本来の位置付け

Faciloでは、「スタートアップに飛び込み、会社の成長に貢献してくれたこと」への報酬としてストックオプションを付与しています。たとえ途中で退職したとしても、その在籍中の貢献が消えるわけではありません。
そのため、退職時にストックオプションが失効するのは、社員の視点から見ると単純にフェアではないと考えています。

※ 僕自身、前職のシリコンバレーのスタートアップでは、CFOとしてポータビリティ性ありのストックオプションを発行していましたが、運用上何の問題もありませんでした。そのため、日本に帰国してから、ベスティングされたストックオプションであっても退職すると失効するという制度を聞いたとき、「会社都合で作られた別物の制度じゃん」と驚いた記憶があります。

2. 会社のカルチャーへの影響

「ポータビリティ性なし」にすると、確かにストックオプションの失効を避けるために、EXITまで在籍しようとする力学が働き、リテンションには一定の効果があるかもしれません。
でも、それって本当にスタートアップにとって望ましい状況でしょうか?

何らかの理由で仕事へのモチベーションを見出せなくなった人が、ストックオプションの失効を避けるためだけに残り続ける、いわゆる「レームダック化」は、むしろ会社のカルチャーに悪影響を与えると考えています。

会社での仕事が一区切りして、次のキャリアに進みたい社員がいれば、快く笑顔で送り出したいですし、その後もストックオプションを持ち続けて卒業生として会社を応援してもらえる方が、お互いにとって健全で前向きな関係だと信じてます。

3.経営としての覚悟

退職する場合の仮定の話を2ではしましたが、Faciloのポリシーとして、従業員の早期退職は全く望んでいません。一人ひとりと真剣に向き合い、自信を持って採用した最高のメンバーたちなので、できるだけ長くFaciloで働いてほしいと願っています。

とはいえ、そのために「ストックオプション失効」というペナルティで社員を縛りつけることは、自分が目指す経営の姿ではありません。
目指すべきは、どこへ行っても活躍できるトップタレントが集まり、それでも「この会社で働きたい」とFaciloが選ばれ続けている状態です。

経営者として、そんな職場を作り続ける覚悟を持ち、退路を断つ意味でも、フルポータビリティを導入しました。

特徴②: 月単位べスティング

ストックオプションは、付与されてすぐに権利が確定するわけではなく、一定期間の経過に伴い徐々に確定します。日本では通常「年単位」でのべスティングが一般的ですが、Faciloでは、アメリカでよく見られる「最初の1年のみ年単位、その後は月単位」という設計にしています。

この設計にいたった背景を説明します。
例えば、べスティング日が毎年4月1日で、10月頃にライフスタイルの変化や健康上の都合、キャリアの転機など退職が必要な事情が発生したとします。
10月時点で退職した場合、年単位のべスティングだと直近の4〜9月分のストックオプションは権利確定していないため丸ごと失効してしまいます。このルールだと、失効を回避するために無理をしながら会社に残ることになったり、やむを得ず退職した場合には、あと半年間在籍できなかったことに対して悔いが残ったりするなど、従業員にとって不幸な状況が生まれてしまいます。
これを防ぐために、べスティングの単位を短く設定し、貢献した期間に対してタイムリーに権利が確定できるように設計しています。

ここまでの、
特徴①: フルポータビリティ
特徴②: 月単位べスティング
の話を総合すると、以下の図のようになります。

リターンを得ることができる黄色の面積が大きく、かつべスティングの単位がきめ細やかなので、より大きい権利がよりタイムリーに確定していく様子が分かると思います。

特徴③: アクセラレーションあり

上場ではなくM&AでEXITした場合、通常はべスティングされていないストックオプションは失効し、ベスティングされた分についても株式と同様に買い取ってもらえるかどうかは、極論すると買い手との交渉次第になります。
僕個人としては、生株を保有している創業者はM&Aを通じてリターンを確実に得られる一方で、一緒に頑張ってきた従業員のリターンが不安定になるのはフェアではないと考えています。そこで、Faciloではアクセラレーション条項を設定しました。

この条項により、FaciloのストックオプションはM&Aの場合でもべスティングと権利行使が前倒しされ、従業員も確実にリターンを得ることが保証されます。FaciloはM&AでのEXITを全く考えていませんが、万が一の場合に備えて従業員の利益を守るためにこのような設計をしています。

特徴④: 在籍時の相続あり

唐突感があるかもしれませんが、ストックオプションの制度設計時には、万が一、従業員が亡くなって相続が発生した場合のストックオプションの取り扱いについて、あらかじめ決めておく必要があります。
(あくまで仮定の話だと自分に言い聞かせても、そんな悲しい想像をすることに大きな抵抗感もありました。ですが、そんな葛藤を経て、最終的には思いを込めて設計した部分になります。)

従業員から相続が発生した場合、一般的なストックオプションは相続の対象とならず失効しますが、Faciloでは在籍中に相続が発生した場合、無条件にストックオプションも家族に相続されることになっています。

この設計に至った経緯として、前述のとおり、そもそもストックオプションは従業員の貢献に対するリターンであると考えているため、相続によって失効することには違和感がありました。
また、(もちろんそんなことは起こらないに越したことはないですが)仮に不慮の事故や病気があった場合、その人がこれまで頑張ってきた証しを家族に残してあげたい、リターンを実現させることで金銭面でも支えとなりたいという個人的な思いもありました。

その一方で、従業員の家族とはいえ外部の人にストックオプションが渡ることで管理や手続きが煩雑になるという専門家のアドバイスもあり、「取締役会の決議があれば」という条件付きにしてリスクヘッジする方向で検討を進めていました。
しかし、従業員やご家族の立場になって想像したときに、大変な状況に置かれているさなかに「取締役会で決議してくれるんだろうか」なんて些末な心配をさせるなんてありえないと思い直し、自分の意志を込めて「在籍中に相続が発生した場合には無条件でストックオプションが相続される」という設計に変更しています。

まずはそんな不幸な事態が起こらないことが第一ですし、こんなネガティブな仮定の話をNoteに書くべきなのかも葛藤しましたが、慣習にとらわれることなく従業員のことを第一に考えてこだわった部分なので、あえてご紹介しました。

※念のため補足すると、これはあくまで万が一の仮定の話であり、会社として本質的に目指しているのは、心身ともに健康で継続的にパフォーマンスを発揮できるよう環境づくりです。
Faciloは従業員の健康とも向き合っていて、年1回のミッドタウンクリニックでの人間ドックやフレキシブルな休暇制度など、こだわりを持って福利厚生の制度設計をしています。これはストックオプションは別の話なので、改めてご紹介できればと思います。

特徴⑤: 管理ツール(Nstock)の導入

前職のシリコンバレーのスタートアップでストックオプションを発行した際には、手動で管理をしていました。これはコーポレート側の業務負担が大きかっただけでなく、従業員にとっても契約書が唯一の拠り所で、ストックオプションを保有している実感が薄いという課題がありました。

その後、M&AでEXITを達成した際には新たな親会社からストックオプションが発行されたのですが、ここでは当時アメリカで普及しつつあったCartaというツールが導入されていました。このツールによって、ストックオプションに関する情報が可視化され、従業員が初めて「手触り感」を持てたという原体験があります。

参照元: https://support.carta.com/s/article/exercising-options-on-carta

Facilo創業時、日本にはCartaのようなストックオプション管理ツールはありませんでしたが、その後、Nstockが近しいコンセプトのプロダクトをリリースしていたため、これは導入の一択でした。

参照元: https://nstock.com/

Nstockを導入したことで、従業員は自身のマイページで、ストックオプションの想定キャピタルゲインやベスティングスケジュールを簡単に確認できるようになりました。
想定キャピタルゲインは管理者が株価を入力する仕様になっており、すでにファクトとして存在しているシリーズA時点の株価をFaciloの場合は反映しています。管理者が株価を上書きすると、従業員のマイページ上の数字も瞬時に更新されるため、従業員向け説明会ではその場で上場時の株価を使ったシミュレーションを行い、みんなで盛り上がることができました。

さらに、経理や法務といったコーポレート側の業務も、ツールの導入によってストックオプション管理が相当ラクになったと感激していました。

Faciloは、まだ始まったばかりのアーリーステージのスタートアップですが、だからこそ、立ち上げの段階から最新のツールをビルトインできることは大きなアドバンテージだと考えています。これは、ストックオプション管理に限らず、業務全般においても言えることです。
既存の業務フローに後から継ぎ足すのではなく、最初から有効なツールを駆使すること前提に業務フローを取り入れることで、長期的に強固な基盤を築くことができると信じています。

まとめ

ここまでの話を図にまとめるとこんな感じになります。

このようにFaciloのストックオプションはあらゆる側面で従業員のメリットを最大化できるように徹底しており、従業員にとって「全部のせ」の設計となっています。
見ようによっては会社側にリスクの大きい制度と言えなくもないですが、それでも迷ったときは全ての分岐点を従業員第一に振り切ってきました。この背景には、Faciloを経営するうえで大切にしている哲学があります。

スタートアップは、「事業」や「プロダクト」が革新的であることはもちろんのこと、革新的な「働き方」も切り拓いていく責務があると考えています。
日本社会全体で働き方を改革していく必要性が高まる中で、大企業と比べて失うものの少ない自分たちのような存在が、変に縮こまって中途半端にバランスをとった働き方をしていたら社会は何も変わりません。スタートアップが新しい挑戦をして、先行事例を作ることが大切です。

そういった哲学から、Faciloでは迷ったらバランスをとった折衷案ではなく、どちらかに振り切った実験をスピーディーに回すようにしています。社内ではこれを「働き方の実験場」と呼んでいて、一見すると極端に見える制度を数多く採り入れて、みんなで日々ワクワクしながら検証を進めています。今回のストックオプションはその一例ですが、その他の実験についてもまた改めてご紹介できたらと思っています。

Faciloでは採用を絶賛強化中です!
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