
Photo by
tarostagram
伝わらない [ショートショート]
今日もまた、誰にも伝わらなかった。自分が思っていること、感じていること、全部。喋っても、相手の顔に浮かぶのはぼんやりとした理解を示す笑顔か、視線が他のところに向いている瞬間だ。自分の言葉は空気に溶けて、無駄に終わる。
昼休み、同僚と一緒に食堂で食事を取った。何気ない会話の中で、私は自分が感じている小さな不安を話し始めた。心の中では、少しでも誰かに理解してほしいという気持ちが膨らんでいた。けれど、相手の反応は予想通りだった。
「それ、大変だったね。」
彼女は一瞬そう言って、すぐに別の話題に切り替えた。その瞬間、私は自分が誰かに届いたことなどないことを痛感した。言葉はどこか遠くに消えていき、私だけがその空白の中に立っていた。
夕方、オフィスに戻り、一人でデスクに向かう。パソコンの画面に映る文字を見つめながら、私は考える。どうしてこうも、人と自分の間に隔たりがあるのだろうか。
夕食を終えた後、部屋の灯りを消してベッドに横たわる。布団の中で目を閉じても、同じ思考が頭の中をぐるぐると巡る。誰も私の気持ちを理解してくれない。
それでも、きっと明日もまた、私は同じように話し、同じように伝わらないのだろう。