五人の白装束 [ショートショート]
午後の薄暗い街を歩いていると、遠くに白いものが動いているのが見えた。視線を凝らすと、それは五人の人影だった。白い装束を纏い、全員がゆっくりと揃った足取りでこちらに向かって歩いてくる。白装束という非日常な服装に、一瞬自分の目を疑ったが、間違いなく五人組がこちらをまっすぐ見据えている。
何かの儀式だろうか。それともパフォーマンスか。だが、その歩みは不気味なほど静かで、周囲の音がすべて吸い取られているかのようだった。五人の顔は何かで覆われていて、表情は不透明だ。顔の見えない人々が整然と列をなし、こちらに向かってくるという光景は、奇妙な緊張感を生み出している。
私の歩調が自然と遅くなり、距離を保つように一歩一歩後退した。それに気づかれないよう視線を逸らし、できるだけ存在を薄くしてやり過ごそうとしたが、五人組の視線が何かに固定されているように感じられる。そのまま横を通り過ぎれば、自然に何事もなかったように済むだろうか。
しかし、すれ違いざま、彼らのひとりが小さな声で何かを呟いた。それは呪文のような、意味のない囁きのようだった。その瞬間、私の中に不可解な違和感が湧き上がり、立ちすくんでしまった。五人組はそのまま歩き続け、私の視界から徐々に消えていく。背後からも一切の音が聞こえない。彼らが何者だったのか、彼らの顔の下にどんな表情があったのかは、結局わからないままだ。
しばらくその場に立ち尽くしていたが、白装束の影が完全に見えなくなった後、足が再び動き出した。何もなかったかのように、街は静かで、薄暗い午後がそのまま続いていた。