見出し画像

レモネードと静かな午後 [ショートショート]

カフェのテラス席に座り、メニューを開く。レモネードを注文することにした。店員が「ご注文はお決まりでしょうか?」と尋ねる。「レモネードをお願いします」と答える。

通りを行き交う人々を眺める。サラリーマンが電話をしながら早足で歩いている。子供たちが笑い声を上げながらアイスクリームを食べている。風が木々の葉を揺らし、日差しがテーブルの上に影を落としている。

テーブルの上には、砂糖入れとナプキン、そして小さな花瓶に一輪の花が飾られている。遠くで車のクラクションと鳥のさえずりが交じり合う。白い雲がゆっくりと青空を横切っている。

店員がレモネードを持ってくる。「お待たせいたしました、レモネードです」と言う。グラスの中には氷が浮かび、レモンの輪切りとミントの葉が入っている。グラスの表面には水滴がついている。

ストローで一口飲む。レモンの酸味と程よい甘さが口の中に広がる。再び通りに目を向ける。犬を連れた女性がゆっくりと歩いている。バスが停留所に止まり、乗客が次々と降りてくる。

時計を見ると、午後三時を少し過ぎている。テーブルの上に置かれたグラスの水滴が陽の光を反射して輝いている。近くのテーブルでは、二人組が楽しげに会話をしている。

再びレモネードを飲む。風が少し強くなり、髪が顔にかかる。遠くで教会の鐘が三時半を告げている。

レモネードを飲み終え、グラスをテーブルに置く。店員が「おかわりはいかがですか?」と尋ねる。「いいえ、結構です」と答える。

バッグから本を取り出し、ページを開く。活字が規則正しく並んでいる。静かな時間が流れる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?