【映画】 『OLD』 鑑賞記録 【ネタバレあり】
M・ナイト・シャマラン監督最新作、『OLD(オールド)』。
鑑賞完了したので、感想を記録して行きます。
■【注意】■
本記事はネタバレを含みます。
ラストを知りたくない方は、
本編ご鑑賞後にお読みください。
■ あらすじ
ある家族が
夏のバカンスとして
とあるリゾートホテルを
訪れます。
これからの数日間、
このリゾートホテルで
休暇を過ごそう
というところです。
訪れたリゾートホテルは、
とても人気の様子。
ホテル近くのビーチでは
人が溢れかえるように
楽しんでいます。
ここに来た家族の構成は、
・お父さん
・お母さん
・娘(姉)7歳
・息子(弟)6歳
という4人家族。
このとき、
夫婦仲は最悪の状態。
チェックインしたその日の夜、
せっかくの
旅行であるにも関わらず、
喧嘩をしてしまいます。
『離婚寸前の夫婦関係を
リゾートでの気分転換で
少しでもよくしたい。』
夫はそんな気持ちでいました。
一晩明け、
家族は予約していた
予約者専用ビーチに向かいます。
このビーチは
予約済のお客様専用の
VIPビーチ。
人の気配は、全くなく、
広いビーチを予約者だけで
好きなだけ堪能できます。
主人公達家族の他に
もう一組の家族を乗せて
VIPビーチ行きのバスが出発。
無地、ビーチに到着し、
そこで2組の家族は
思う存分楽しんでいました。
その後、
少し遅れて
1組の夫婦がビーチに到着。
彼らもキレイなビーチに
心を踊らせます。
一方で、
少し気になることがあります。
予約者専用の
VIPビーチであるにも関わらず、
すでに1人男性がビーチに居たのです。
少し気がかりではあったものの、
男性が何かをしてくるわけでもないため、
2組の家族と
1組の夫婦は
ビーチでの楽しさに浸っていました。
しかし、
ここで転機が訪れます。
遊んでいた子どもたちが
偶然にも
女性の水死体を発見。
そこから、
すべてのことが
最悪の方向へと動き出します。
■【注意】■
以下の内容は
ネタバレを含みます。
ラストを知りたくない方は、
本編ご鑑賞後にお読みください。
■考察1. 目に見えないと『対策できない』
2組の家族、
1組の夫婦、
1人の男性、
これらの登場人物が揃うことで
物語が進んでいきます。
こうした登場人物達が
共通して怯えているもの、
それが『時間』です。
本作はホラー映画です。
しかし、
今までのホラー映画のように
「具体的な恐怖の対象」
というものが
『視覚的に認識できる存在』ではない
という部分が今までのホラー映画と異なります。
今までのホラー映画では、
●地球外生命体
●幽霊
●モンスター
●猟奇的殺人犯
などなど、
恐怖の対象が
具体的に視覚で認識できるもの
であることがほとんどでした。
具体的に目に見えるからこそ、
その恐怖の対象を倒す、
または恐怖の対象から逃げる、
といったアクションを
登場人物たちが繰り広げる
これが今までのホラー映画です。
しかし、本作では、
異常なほど時間が早く進むビーチ
という異質な空間の中で
『逃れることのデキない恐怖』
というのが登場人物達を苦しめます。
人間に限らず、
すべての生命体には
寿命があります。
いくら健康で居たとしても
いつかは死んでしまうのです。
したがって、
すべての生命体は
『老い』というものを
本能的に恐れています。
この本能的に恐れている
絶対的恐怖が
もう後、数時間で訪れてしまう
という状況が
本作のホラー要素です。
何故かビーチから出ることがデキない
そのビーチでは
徐々に身体が老化していく
一瞬にして殺人鬼に殺された方が
精神的には楽かもしれない
と思えるほど、
ジワジワと登場人物達の身体は
老化していきます。
『ゆっくりではあるが、
確実に死に近づいている』
という状況が
なんとも言葉にならない
恐怖感を演出しています。
この
『具体的な対策がデキないもどかしさ』
というのが、
今までのホラー作品にはない、
斬新な表現方法であると感じました。
■考察2. 焦りから『二次被害』が生まれる
時間という
全く制御デキないものは
とても残酷です。
時間が経過する=老化する
ということ。
また老化するということは
身体の自由が効かなくなる
ということでもあります。
歳を取ってくると
『昔は簡単にできたのにな〜…』
といったことが増えてきます。
普通であれば
何十年という長い時間を掛けて
身体の不自由さを実感していくので
それほど大きな焦りを感じることはないでしょう。
しかし、
本作では
30分で1年が経過したことと同じ
という異常な程のスピードで
時間が進んでいきます。
そうなって来ると
つい数時間前まで見えていた視界が
急にボヤケ始めたり、
ついさっきまで聞こえていた耳が
急に聞こえなくなったり、
急激な身体の変化が
登場人物たちを焦りに焦らせます。
『少しでも早く
このビーチから抜け出さなければ
後少しで死んでしまう…』
そうやって時間的に追い込まれたとき、
人間は非道な行動でもなんでもやってしまいます。
疑心暗鬼になって
周りの人達がすべて敵のように感じてしまう。
そこから生じる
暴力や殺人。
早すぎる老化という恐怖を原因として
する必要のない
他社への攻撃をしてしまう
というのが
人間の心の弱さとして
描かれています。
殺し合う必要なんてないのに
殺し合いをしてしまう。
そして、
『早すぎる老化』よりも
もっと早いペースで
人が死んでいく。
この絶望感が
なんとも言葉にし難い
『胸糞悪さ』を強調しているように感じました。
焦った人間というのは、
なんの必要もないのに
周りの人を攻撃してしまう。
もちろん周りの人を攻撃しても
何も解決なんてしない。
むしろ
状況はドンドン悪化する。
普段の冷静な状態であれば
当然の如くわかることでも
『焦り』という感情によって
わからなくなってしまう。
登場人物達を客観的に見ている
視聴者は、
こうした
『いやいやそれをしたって意味ないよ…』
という気分の悪さを覚えます。
こうした感情は、
他のホラー映画では
味わえない要素ですよね。
■考察3. 勝手過ぎる正義感は、結局、『欲望の正当化』
物語の最後、
このビーチにおける出来事は
すべて製薬会社の人体実験
であることがわかります。
そして、
その製薬会社の主張が、
『確かにあのビーチで数人の人が死ぬ。
しかし、我々はその実験データから
数百万人を救う薬を作っている。
彼らの死は、必要な犠牲だ。』
というもの。
しかし、
この主張の裏に隠れている本当の意図は、
『薬をたくさん売って儲けたい。』
という金に対する欲望を
正当化させたもの。
結局のところ、
金になるから人を殺してでも
実験しているんです。
時間や老いという
具体的な対策がデキない恐怖は
あくまでも人為的に与えられたものだった、
そして、
その犯人たちの動機は
『金』だった、
という状況。
偶発的で誰に恨みを向けたら良いのか
わからないような状況から一変して、
追い詰めてやりたくなる
絶対悪が現れる
というのが、
この映画の大どんでん返し。
人間の欲望が、
非道な実験を繰り返させていた
という気分の悪い展開です。
超自然現象的な恐怖であれば、
受け入れるしかありませんが、
明確な悪の存在が居て、
しかもそれが人間となれば、
恨みの向け先がパシッと決まります。
これがこの映画特有の
気分の悪い状況から
さらに気分の悪い状況になる
という展開です。
もうず〜っと気分悪い。笑
そんな映画です。笑
最後の最後には、
娘(姉)7歳
息子(息子)6歳
がなんとかビーチから抜け出して
製薬会社の人間は
全員逮捕されます。
しかし、
リゾートを訪れたときには幼かった兄弟も
ビーチを抜け出したときには、
50歳を超える年齢の身体になっていました。
決して取り戻すことのできない
時間というものを
金に目がくらんだクズ野郎に奪われた。
また、
最愛の家族もみんな死んでしまった。
こんな鬱展開ありますか?笑
ホラー映画というのは、
見終わった後に
恐怖感が残るものです。
でもこの映画は、
壮絶な胸糞悪さが残ります。
この部分も
この映画の斬新さですよね。
■まとめ. 『斬新』なホラー映画
これまで
様々なホラー映画が
注目を浴びてきました。
恐怖心というのは、
娯楽のネタになる要素ですからね。
そんなホラーの中でも
かなりの異色作が本作。
『普通のホラーは見飽きたな〜。』
という方は
おもしろさを感じるのでは
ないでしょうか?
という感想を書き終えて
筆を置きます。
お読みいただきありがとうございました。
ではまた^_^
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