Web3を真剣に学ぶ理由とは?「社会問題を解決する最強ツールとなりうるか」
Web3の業界を知ったのがちょうど2年前のことだ。好奇心が強いため、新しいものに抵抗がなく、当初は便利そうなIT技術だけど、自分の身の回りのことには関係ないなという程度で捉えていた。
ですが、超マイノリティのWeb3業界人の友人に出会い、普段は熱くなることのない友人が、Web3の会話を熱心にする姿を見て、もう一度深く学ぶ気になり、勉強するにつれて「これは将来確実に来る技術に違いない!!」と思うと同時に、金融業界、環境問題、地方創生、コミュニティづくり、地域共同体(ミュニシパリズム)、マイナンバーとの連携など様々な社会問題や生活に直結するものだと確信したため、真剣に身を投じようと決心した。
要するに、テクノロジーでありながら、リアルの社会問題を解くときに活用できるポテンシャルが高く、また応用できる社会問題の範囲がものすごく広いことに魅力を感じている。安宅和人氏の言葉を借りればリアルの問題をテクノロジーを使い倒して解決しようとする「物魂電才」がWeb3を通じてできるのではないかと考えている。
ここからは、Web3とは何か?ということを説明し、どう社会問題の解決に役立っているのかについての具体例を示し、最後にWeb3の課題を示すこととする。
1.Web3とは何か?
超簡単に言うと、Web3は新しいインターネットの形だ。今までのインターネット(Web1とWeb2)は、主に大きな会社がサービスを提供し、ユーザーはそれを使う形だった。
Web1では限られた人間しかコンテンツや情報を発信できなかったのに対し、Web2ではインスタグラムなどで、誰もが情報を発信できるようになったものの、インスタグラムを運営する会社であるMetaがすべての情報をもっており、Metaが個人のアカウントを停止したり、Metaのサーバーがハッキングされた場合、情報が盗まれる可能性があるなど、リスクがある程度あった。
Web3ではブロックチェーン技術により、個人が情報を保有しても、安全かつ透明性が高い状態で管理できるようになったため、企業が提供するプラットフォームに依存しないインフラが整った。
このブロックチェーン技術が超絶応用が利く技術であり、おそらく一度は聞いたことであるだろうNFTやらDAOやら、DeFi(分散型金融)やらはすべてこの技術がもとになっている。
2.社会問題への応用例
1.SINRA (環境問題への応用)
「地球を再生可能な状態に導くというミッション」のもと活動を行っているSINRAさん。
簡単に活動と活動に至るまでの課題を紹介すると、日本は国土が7割が森林であるにも関わらず、外国から木材を輸入した方が圧倒的に安いため、国内で林業をやっても赤字になってしまう事例が多いことから、林業従事者が育たず、適切な森林管理ができていないという状態に陥っている。適切な森林管理ができないと、十分に森林に空気が循環しなかったり、日光が届かなかったりするため、土壌が軟弱化し、土砂崩れ等の災害リスクが増したり、生物多様性が破壊されたり、地中に養分が蓄えられずらくなるため、海にも養分が届きにくくなったりなど、エコシステム全体に影響が与えられてしまうという大きな問題がある。
この問題のボトルネックである、適切な林業関係者への資金提供についてSINRAさんは画期的なアイデアを提唱している。
SINRAさんが着目したのが、カーボンクレジット市場である。カーボンクレジットを簡単に言うと、CO₂取引量を取引するということであり、企業が排出したCO₂排出量を減らすため、森林によるCO₂吸収量などをクレジットとして購入することで、自社の排出量を相対的に減らすことができるという仕組みである。
もちろん、これでは発生する二酸化炭素の総量は減らないというデメリットがあり、企業が削減に向けたアクションをおこさないのではないかという指摘がある。そうではあるが、企業もカーボンクレジットのみで対策すれば非難を受けるし、この方法自体、無限に吸収量を増やせるわけではないので限界の吸収量に近づくにつれて、価格が値上がりするため、どの企業もできるわけではない。むしろ強調したいのは、林業をほっといたときに起こる、災害リスクや生物多様性のリスクのほうが大きいのではないかと考えている。
森林を適切に管理したり、植林したりすることで、CO₂を吸収し、吸収量をクレジットとして企業や個人に販売することで、収益を確保することができる。
しかし、クレジットとして取引するためには当然、国の基準をクリアするため厳しい審査をパスする必要があり、それには管理費やモニタリング費などとてつもなくお金がかかる。利益になる前に、お金がかかってしまうのである。つまり、活動資金が事前に確保できていないと成り立たないということである。
そのため、それを事前に確保するため、NFTを用いて、カーボンクレジットを先取りで購入し、そこで得られた資金の80%は森林の維持管理者に行くシステムを活用し、NFT購入者はSINRAが運営するコミュニティに入ることができSINRAに貢献することができたり、森林がある三重県尾鷲市に関わることができたり、さらには、購入したNFTを企業に対して転売することも可能である。
以上がSINRAさんのNFTがクレジットとして認証されるまでのフローである。NFTを買った途端に、クレジットになるわけではないため、紛らわしいものの、非常に複雑なフローがブロックチェーン技術により可能になっている。
このアイデアが日本の林業あるいは、ブルーカーボンに着目して海の適切な管理のモデルにもなるのではないかと考え、私も寄付や応援と言う名目も込めて、SINRAのNFTを買ってしまった笑
2.山古志村DAO(地方創生への応用)
現在は長岡市に合併されたが、人口約800名の限界集落である山古志村は高齢化率が約56%に上り、存続が難しいのではないかと言われていた村だ。
しかし、2021年から「デジタルアート×電子住民票」を基にしたNFTが発行したことをきっかけに、現在のべ1600人を超えるデジタル村民が山古志村に関わっている。
Nishikigoi NFTを購入したものは「デジタル村民」という肩書を与えられ、地域の文化やイベントに参加できる権利を与えられており、オンラインのコミュニティ(Discordにより運営)で山古志村をどうすれば盛り上げることができるかについて議論が行われている。(自分も数か月前に参加しましたが、かなり活発にコミュニティが動いている)
デジタル村民の中には実際に山古志村を訪れ、地元のお祭りに参加したり、雪かきを手伝ったりする人々もいる。自分も2024年1/20に開催されたオンラインの新年会イベントに参加した。オフラインでも餅つきが行われたそうである。
また、山古志村はLocal DAO(地域をベースにしたDAO)としての定義を確立し、世界各地に広げることを目標にしている。Nishikigoi NFTを持つことにより、Local DAOへのアクセスや協力が可能になり、より多くの人々が山古志村の文化や活動に参加し、デジタル村民とリアル村民の融合により地域の未来を共に築くことが期待されている。
私はこの山古志村のDAOが、現在の衰退しつつある民主主義を再生あるいは解体する発火点になるのではないかと考えている。
以前も述べたが、民主主義は民に依存する。民が国を変えようとする意識がなければ、民主主義は正常に機能しない。ただでさえ少ない人口の若年層が政治に興味が少ない状態となってしまっており、一概に悪いとは言えないが、マジョリティの高齢者は保守的な政策を好むので、大胆な構造改革が進まない状況となってしまっている。
政治をジブンゴト化して、国を変えていくには少し今の民主主義は大きすぎて、責任が分散されているように感じてしまうのだ。
であるから、地域DAOを民主主義のシステムに組み込むことで、実質民主集中制となってしまっている日本の政治システムを分解し、より小さな地域という単位で、地域に住む人と、地域を変えたいと思う外のプレイヤーが地域の資源(コモンズ)の使い方について自分たちで話し合い、自分たちで意思決定を行っていく新しいミュニシパリズム的社会が実現できるのではないかと考えている。そうなれば、地域に合わせた地域マネジメントが最適に行われると考えている。
日本は諸外国に比べてDAOに対する政府の反応がいいので、今後日本が世界で最初のモデルケースとなるポテンシャルを秘めていることも、希望的に捉えられる。
コラム:DAOとは?
DAO (Decentralized Autonomous Organization)とは、日本語では「自律分散型組織」と呼ばれ、管理者(リーダーのような存在)がいない民主的な組織の形を指す。
コミュニティの中で何かを決定するときは、ガバナンストークンと呼ばれる投票権をもった人たち(山古志村ではNFTがガバナンストークンで、デジタル村民は投票権をもつ)が投票などを通じて、民主的な方法で行う。
DAO参加者は、自分でDAOへの関わり方を決定することができ、貢献した仕事に応じて、トークンと呼ばれる報酬がもらえる。
また、通常の株式会社では、内部文書や取引記録は企業によって管理され、外部に公開されないことが多いが、DAOで行った取引履歴はブロックチェーンに記録されるため、透明性が高く、改ざんがほぼ不可能であることも大きな特徴である。
オンラインコミュニティと思われがちだが、山古志村DAOのようなコミュニティでは、コミュニティの親密度などが重要な側面でもあるので、「いかにリアルで会う機会を作り、コミュニティの関係を良好で親密なものにしていくか」ということも盛んに議論されている。
デメリットとしては、セキュリティの問題や法的な未整備など、解決すべき課題も多く、技術的に完全なDAOを作ることはかなり難しいため、完全なDAOというのはごくわずかである。(山古志村のDAOも完全なDAOではない)
3.巻組「Roopt 」 (空き家問題への応用)
近年、少子高齢化など複雑な要因から、空き家の増加が指摘されていることは言うまでもないだろう。「株式会社巻組」さんではこの問題をWeb3の技術も活用し、ユニークな解法を示している。
巻組は、石巻を中心に活動しており、大家さんから資産価値がほとんどゼロに近い空き家を買い取って、リノベーションを施して、シェアハウスや住居として提供している。
そして、画期的なのが「Roopt」というDAOとシェアハウスを掛け合わせ、自由なライフスタイルを応援するシェアハウス運用の形である。
従来のシェアハウスは大家さんやオーナーの責任や仕事が多く、利用者とは対等な関係ではなかった。大家さんが作ったルールの上で生活しなければならなく、利用者が運営に参加することができなかった。
しかし、DAO化することにより、DAOメンバーである、住人、利用者、支援者、大家さんなどの多様なステークホルダーにより自律的・民主的に運営が行われ、どれだけ貢献したかに応じて報酬が支払われる設計であるため、win-winな関係と言える。
このシステムにより、ハウスルールの設定や家具の購入、家賃回収や集客が住民なども行うため、巻組側の負担が減り、利益自体は約1.7倍に上がったという。
RooptDAOの仕組みは上記のようになっており、DAOに入るために、NFTを購入し、購入したNFTを消費することで、シェアハウスに居住したり、コワーキングスペースを活用できる。
シェアハウスで貢献した量に応じて報酬(トークン)がもらえるわけで、このトークンが溜まったら、NFTと交換でき、再び宿泊などに利用できるというシステムになっている。
このように空き家を大家さんの責任だけにするのではなく、みんなで一緒に解決していこうとするモデルをDAOで提示したことは画期的である。
4.Good Job! Digital Factory(障がい者雇用への応用)
こちらの「Good Job! Digital Factory」さんはNFTにより販売された、障がい者の方が作成したアートを購入することで、持続的に障がい者の方がアーティスト活動で行えるような環境を整えている。
Discordによるコミュニティ運営が行われており、自分も様子を見に行った。Web3業界の最前線で活躍されている方も何名かいらっしゃり、海外の関係者の方も何名か見かけた。
山古志村のオンライン新年会イベントでこの団体を知ったのだが、登壇者の台湾の方が残した言葉がぶっ刺さったので共有する。(個人の解釈が入っています。)
「今、生きている環境にバリアがあるから、障がい者という枠組みが生まれてしまう。バリアがないような世界では障がい者と呼ばれる概念も存在しなかったのではないか。バリアが少しでもなくなる世界をテクノロジーで実現していきたい」
3.超個人的に思うWeb3の課題
1.すべての労働が交換価値に代替される危険性
上記でDAOがやたら登場してきたが、DAOの本質はインセンティブの民主化にあり、ブロックチェーンによって、従来は金銭的価値にならなかった労働も記録され、貢献として扱われてトークン(報酬)が支払われる仕組みが画期的なのである。
要するに、どんな人にでも、あらゆる労働の対価がしっかりと払われるようになったのである。労働へのハードルがトークンをもらえるというインセンティブ(動機?)により下がったともいえよう。
現状、DAO内で稼いだトークンは法定通貨に換算できないようになっているため、稼いだトークンを消費するための商品やサービスをDAO内で開発しなければならない。つまり、トークンによるエコノミーを設計しなければならない。これは新しい資本主義とも呼ばれる。
また、トークンにより様々なサービスが開発された。例えば「Move to Earn(動いて稼ぐ)」という概念があるが、これは歩いた量に応じてお金が稼げるというシステムになっている。代表的なアプリは「Sweatcoin」だろう。スマホの歩数計がSweatcoinに紐づき、歩くほどSweatcoinがもらえる。もちろん、これだけで生計を立てることなど到底不可能な量であるが。
このように定量的なデータや可視化しやすいデータから、ブロックチェーンに紐づけられ、トークンが出るシステムとなっているため、将来的には、たいていの労働がトークンにより報酬が出る可能性がある。
しかし、裏を返せば、トークンが出づらい(データ化しづらい)貢献をする人が減ってしまうのではないか。このムーブメントはあらゆる労働を金銭的価値で置き換えようとするものであるとも捉えられ、「金銭的価値に交換できないようなものには価値がない」とする行き過ぎた資本主義的思考・思想が定着してしまう可能性がある。
DAOでは、コミュニティを形成することで、自分たちの行った労働がコミュニティに還元され、そこから生まれる人とのつながりや関係性を価値に置くものとしても捉えられるが、すべてのDAOがそんな崇高な考えで運営されているわけではない。
いつどんな時代も行動の価値を社会的なもので当てはめるのではなく、自分で価値を定義できるようなマインドセットを持って生きることが重要なのではないか。
2.ITリテラシーによる格差と民主化の弊害
Web3技術の進化速度はすさまじく、飛ぶ鳥を落とす勢いである。日々新たなサービスが生まれるなか、それらすべてに対応して、ついていくのはほとんど不可能であろう。
であれば、必要な知識を持ち、自分のニーズに応じて適切に技術を活用していく姿勢が重要であるが、この「必要な知識」を理解することがWeb3では難しい。ただでさえ、複雑な概念であり、NFTやDAOなど関連する技術が多いため、包括的に理解するにはとてつもなくコストがかかる。
だが残酷なことに、このITリテラシーの有無で出来ることの差が大きく開き、ついていける人と行けない人でそのまま大きく格差が開く可能性がある。これは生成AIについても同様である。AIを使いこなせる人とそうでない人は生産性は雲泥の差である。
今後Web3業界は昨今の生成AIのように、分かんなくてもなんかWeb3のサービスにアクセスしているような状態となるように技術の進化が向かうと考えているが、まだまだこの技術は過渡期であり、今この技術を理解することは今後の世界の流れを読み解くヒントになる可能性があると考えている。
民主化の弊害というのは、インターネットが普及した時代もそうであったが、知識がなかろうがあろうが、誰もが自分のことを共有できるようになったため、フェイクニュースや陰謀論がSNSを中心に広がり、世界的な分断を招いてしまった。
例えば、X(旧twitter)は日本ではあまり深刻ではないが、アメリカなどではかなりの陰謀論やフェイクニュースに関するツイートが流布され、大統領選などにも影響がでている。これは、見ている人のメディアリテラシーに強く依存するため、リテラシーがない人が陰謀論などにはまってしまうケースが多発している。
Web2であれば、企業が規制を強め、問題のある個人のアカウントを削除したり、停止したりできるものの、Web3では情報の管理も個人に委ねられるため、誰がどんなアカウントでどういう情報を発信しているかはブロックチェーンの特性上把握しやすいものの、それを阻止するのが、おそらく難しい。
AIの技術によりそれをフィルタリングしたり、全員で情報を管理しているユーザーコミュニティ的特性から、そのような情報を流している人に対して、他のユーザーがアプローチしていくことにはなると思うが、いずれにせよ、正しい知識を身につけ、正しいリテラシーを基に、正しい情報を発信しようとする姿勢を忘れてはならない。
自分が流している情報もできるだけ間違いの無いように、精査しているつもりですが、何か不適切なところがあったら、遠慮なく報告したり、指摘してほしいです!!
おまけ(今後の自分の活動について)
やはり自分はリスクを考慮しつつも、Web3の世界観に魅力を感じるため、まずはこの世界を多くの人に知ってもらい、みんなのやりたいことを実現するツールや解決したい課題の解決策のひとつとしてWeb3も視野に入れてほしいという思いがあります。
あくまで、多くの人がこういうWeb3的視点もあるのかと思って欲しいという観点であり、Web3が絶対だと思って欲しいわけではないです。
というわけで、まずは小さく自分の大学から初めてみようと思っています。大学でWeb3の勉強と促進を目的としたサークルを冒頭の友達とともに立ち上げ、Web3的に社会問題を解決する人材を増やすハブになればいいなと思っています!!
詳細はまた別のNoteで!!
今回も読んでいただき誠にありがとうございました!!
※この記事は広告・宣伝目的で投稿されたものではありません。また、NFTあるいは仮想通貨の購入を勧める意図はありません。ご自身の判断でおねがいします。
参考資料
①SINRAのウェブサイト
②山古志村のDAO
③Roopt DAOのウェブサイト
④Good Job! Digital Factoryのウェブサイト