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DX読書日記#15 『PUBLIC DIGITAL』 アンドリュー・グリーンウェイ他

はじめに

今回は「PUBLIC DIGITAL」(2022年)という本を読んでみました。

著者はPublic Digital社のパートナー4名で、アンドリュー・グリーンウェイ氏ほかの方々です。

近年各国で公共領域のデジタル化が進んでおり、その中で、いち早く行政のデジタル化に成功した国の一つがイギリスで、それを牽引したのが、政府デジタル・サービス(GDS: Government Digital Service)という政府組織です。
そのGDSの立ち上げに貢献したリーダーが著者の4名です。

著者4人は、GDSが一定の成果を上げた後、スポンサーだった政治家の退任などを機に、GDSから離れ、DX支援のコンサルティング会社Public Digital社を設立しました。
本書の邦題はこの社名に基づいているとのことです。

本書の原題は「Digital Transformation at Scale: Why the Strategy Is Delivery」です。
原題から、大規模組織におけるDX推進組織について、何かヒントが得られるのではと思い、購入してみました。

期待していたのは、前回紹介した「DXMO」のような全社レベルでの推進組織の運営方法についてです。
ですが、見つけることができたのは、行政サービスのデジタル化のためのプロダクトチームと官僚ハッカーチーム、それと、各省のキーパーソンによる小規模な組織化です。
官僚ハッカーチームは、組織内の経験者として、プロダクトチームが遭遇するであろう各種の障害物を事前に予測し、対応するためのチームです。

本書の紹介には、「巨大な官僚制組織をシンプルで機敏なデジタル組織に変えるには」とありますが、
どちらかというと、生まれたばかりの小さなデジタル組織が巨大な官僚制組織とどのように関わり、生き延びていくかを、極めてリアルに描いた本という印象です。
本書から特定の手法や方法論をまとまった形で抽出することは難しいかもしれません。

ただ、本書が大変示唆に富み、大変丁寧に、大変しっかり書かれた本であることは間違いありません。それでいて簡潔で、冗長さはありません。
DX担当の方々がDXを推進する上で直面する課題やリスクについて追体験することができる良書と思いました。
イギリス人ならではの皮肉も随所に散りばめられており、個人的には楽しんで読むことができました。

本書の概要

ここでは本書の目次だけ紹介させていただきます。

目次

プロローグ
第1章 試練のとき
第2章 なぜ変革が必要なのか

 成果
 カタツムリから逃れる
 イノベーションは二の次
 DXとは
第3章 始める前に
 ①危機
 ②政治リーダー
 ③チーム
 ④ミッション
第4章 出発点を決める
 デザイン原則
 小さく始める
第5章 最初のチーム
 壁を乗り越える
 活動ができる最小限のチーム
 チームを見つける
 仕事のやり方
第6章 地固め
 政治的擁護者
 最高デジタル責任者
 官僚ハッカー
 最初の100日
第7章 信用を築く
 イノベーションの罠に注意
 最初のサービスを選ぶ
 やることを減らす
 適切に取捨選択する
 チームの規模を拡大する
第8章 議論を制する
 中央から権限を振るう
 ITをめぐる論争
 人をめぐる論争
 お金をめぐる論争
第9章 従来のやり方に立ち返る
 どのような戦略で行くか
 合意を形成する
第10章 数字を把握する
 トランザクションを調査する
 行動を歪曲させない数字
 オープンにしたほうが状況はよくなる
 パフォーマンスの測定
 お金
第11章 画一化ではなく一貫性を
 伝える内容を変える
 実際にプレゼンテーションを行う
 ユーザーのためのデザイン
 何が必要なのかユーザー自身がわかっていない場合の対処方法
 規模拡大のポイント
第12章 基準を設定する
 デジタル・サービス基準
 支出を規制する
 評価を実施する
 バタフライ効果
第13章 リーダーを見つける
 最初にやるべきこと
 インターネット時代のリーダー
 新しいリーダーを見つける
第14章 次の展開
 やることを減らす
 誇大宣伝に抗う
 プラットフォームとしての政府
第15章 バトンタッチを成功させる
 足場をつくる
 破壊者になるか高官になるか
エピローグ

『PUBLIC DIGITAL』から抜粋

おわりに

DX推進組織にフォーカスして調べるのは今回で終わりにしようと思います。そういった書籍を見つけることができませんでした。

DX推進組織に対する現時点での個人的な想定としては、前回紹介した「DXMO」のような全社レベルでのPMO型の推進組織は、あくまでもDX推進立ち上げ当初のもので、
最終的に目指すのは、サービスや製品ごとのプロダクトチームを軸とした、分散型組織だろうというものです。

読書日記#2で紹介した「DX実行戦略」でも全社レベルでのPMO型推進組織には否定的でした。
アジャイルでデータドリブンなデジタル組織を目指すときに、重厚なPMO型推進組織はマッチしません(立ち上げ当初はいいかもしれません)。

分散型組織については、イーロン・マスクのTESLAやSpaceXで実現されているアジャイル製品開発が大変参考になると思いますので、またどこかで紹介させていただこうと思います。

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