はじめに
今回も引き続きDX人材に関する本を選んでみました。
野村総合研究所の「デジタルケイパビリティ」(2020年)という本です。
著者は野村総合研究所のIT系コンサルタントの方々のようです。
多数の方が執筆に参画されています。
DXを成功に導く組織能力(ケイパビリティ)を特定、定義し、ケイパビリティ診断もできるという本ですが、
なによりケイパビリティ定義の分量に圧倒されます。
以下、本当に簡単ですが、、紹介させていただきます。
本書の概要
本書では、既存企業がデジタル化の実現において求められる組織能力(ケイパビリティ)は以下の5つからなるとしています。
本書では、これら5つのケイパビリティのそれぞれについて、概要の解説と、各ケイパビリティを構成する要素について詳細な解説を行っており、
自社でケイパビリティの状況を評価できる簡単な問診票も用意されています。
以前は、より深い評価ができる問診票が、野村総合研究所のWebサイトで公開されていたようです。
他企業とのベンチマークもできるものだったようです。
残念ながら、今はアクセスできません。
以下は本書の目次です。
こんなに長い目次は初めて見ました!
本書を拝見して、DXケイパビリティの構成要素の抽出としては、概ね成功していて、構造もきれいに定義されているように思いました。
ただ、事業構想や事業戦略、組織論に関する章については、説明が断定的だったり、論理に飛躍があったりと、違和感のある箇所もありました。
本書がIT系コンサルタントの方々による執筆ということが関係しているのでしょうか。
一方で、IT戦略に関する章は、良くまとまっているように感じました。
DX関連の本ではアジャイル手法がよく取り上げられますが、大規模アジャイル含めて、簡潔に、しっかり説明している本は他にはなかなかありません。
おわりに
簡単ですが、本書の紹介は以上です。
著者によれば、「デジタル化に関わるすべてのビジネスパーソンに読んでほしい」ということで、
本書の対象読者は、デジタル化を実践する方々、経営層や管理職でデジタル化をマネジメントする方々とのことですが、
最初から最後まで読み通すのは、正直、かなりの難易度と思います。
私がこの本をお奨めするとしたらIT部門の方々でしょうか。
本書が労作なだけに、少々残念なのですが、
DXケイパビリティについては、本書のような詳細な解説は少し絞って、
代わりに、詳細版の問診票と業界別のベンチマークを記載いただく等して、再構成した本が見てみたいと思いました。
IT戦略の章については、「デジタル時代のIT戦略」等として、別の本が作れたのではと思います。
なお、IT戦略に関連して、「デジタルアーキテクチャー設計・構築ガイド」という本が野村総合研究所から出されているようですので、
ここで紹介させていただきます。