自分の常識の外を受け入れるのはたのしい『インスタント沼』
人は、自分の見たもの、経験したことは、
もちろん信じる。
でも、自分が今まで見たことがないものを
信じるか、信じないかは
結構人によって分かれるのではないか。
大体は、信じる方が
寛容だ、偉いという見方の作品が
多いように思える。
でも、この作品はちょっと違って、
信じた方が単純にたのしい、おもしろい
ということを教えてくれる。
自分だけを信じ、
他は信じないことの意固地さが
結局は、まわりまわって、
自分をくるしくさせていることも。
***
主人公・沈丁花ハナメは
正に「信じない」側の人物。
少しずつ人生の運が悪くなっている最中で
大好きだった人とも離れ、
編集長をしていた雑誌は休刊。
そんな中、
自分の行方知らずの父かもしれないという男・沈丁花ノブロウと
出会い、不思議な体験をしていく。
ハナメは筋金入りの「信じない」で、
みんなが怖がる中、幽霊の気配がする沼にも
幽霊なんているわけないと枝を投げ込む。
そんなハナメがノブロウの営む、
怪しい骨董店「電球商会」に迷い込み
摩訶不思議なことに遭遇していく様子は
テンポもよく、見ている側もたのしい。
特に、冒頭のテンポが一番いい。
心地よい独特のテンポとともに、
映像が次々と切り替わり、
ハナメの早口一人語りで
物語に連れ込まれていく。
はじめは、この映画をぼんやりと、
麻生久美子さんが
かわいいからという理由だけで選び
全部見ようかは迷っていたのだけど、
もう、この冒頭を見て、
ちゃんと最後まで見ようと決めた。
それだけでなく、
言葉もユニークでたのしい。
「しおしおミロ」
ほんの少しの牛乳を入れて混ぜて、ドロドロにしたミロ
「ジリ貧」も一般的な
「段々と貧乏になること」ではなく、
「ジリ貧」
自分の状況がジリジリと悪い方向に向かっていくこと
こんな宣伝ポスターまである。すごく好き。
さらに、俳優陣もすごくいい。
ハナメの父かもしれないという
男・ノブロウ役は風間杜夫さん。
とにかくノブロウのいい加減な感じが
ひしひしと伝わってくる。すごい。
ノブロウとつるむ
パンクロッカー・ガス役は加瀬亮さん。
パンクでモヒカンなのに、
いろいろ手伝ってくれるし良いやつ感が
四方八方から存分にでている。
ゆるっと、たのしく見れるのでぜひぜひ~。