味わいはその時々の私の反映なのかも知れない−お酒は旅する気分で
クローヌ、以前にも飲んだことはあるのだが、もう数年前のこと、久しぶりに飲んでみた。前回飲んだときには、僕の好みでもなかったように記憶している(こういうわけで、しばらくの間飲んでいなかった…)
今回飲んだのはKRONE BOREALIS CUVÉE BRUT 2022。色は黄色がはっきりとして、泡の立ち方も良い。リンゴや白桃、ハチミツの香り。味の印象は見た目の色から想像するよりもドライだが、香りの要素はしっかりと感じられる。最近の僕の好みから言えば、「もう少し旨みがあっても良いかなぁ…」とは思うのだが、「前回飲んだときの印象は何だったんだ?」と思うほどには美味しかった。
今回はクローヌを取り上げたけど、クローヌに限らず「前に飲んだときと印象が違うなぁ…」と思うことは少なくない。ワインはブドウを原料とした農産物だし、その時々で異なった仕上がりになることも考えられるけれど、どちらかと言えば、僕の味覚、感じ方、とらえ方、好み、体調、飲んだ季節…といった僕のほうの「変化」によるのだろうと思う(色々なものの良さがわかるようになった自分自身の成長と思いたい…)。
確かに、どんなに美味しいものでも、悲しいとき、やるせない気持ちのときには美味しさも半減するだろうし、もしかしたら食べたくも飲みたくもなくなるかも知れない。逆に嬉しいときや心の底から楽しいときには美味しさも倍増するだろう。元気のないときにはとびきり美味しいものを食べれば、少しは元気が出るかも知れない。
僕にとってワインの味わいにはその時々の自分が反映されているとも思える。食べ物、飲み物に限らず、各自の好きなものは自身を映すバロメーターなのかも知れない。考えてみれば、人の感覚というものは深い。
クローヌは南アフリカの西ケープ州コースタルリージョンのトゥルバッハ地区にあり、1710年に設立されたそう。地図を見ると、コースタルリージョンの中にあっては海岸から離れた内陸部にある。山に囲まれた盆地で冷涼な気候のようで、その気候がワイン用ブドウの栽培には適しているのだろう。
クローヌのラベルには、
「TWEE JONGE GEZELLEN」と書かれている。調べてみたところ「2人の若い独身男たち」とのこと。2人の若者がかの土地を開拓し、ワイナリーを開いたのだろうか。ジュール・ヴェルヌの冒険小説をまた手に取りたくなるようなストーリーも想像出来て、面白い。とりあえず、僕は人生という旅のお供にワインと本を持っていこう。