フランス北部のリンゴのお酒−お酒は旅する気分で
フランスの北部、ブルターニュ地方とノルマンディー地方では、リンゴのお酒が有名だ。僕はブドウからつくるワインも好きだけれど、リンゴのお酒も好きだ。この日飲んだシードルはノルマンディー地方のもの。特にノルマンディー地方にこだわりがあるわけではなく、ワインをよく購入するお店で扱っていたから「たまにはシードルも良いなぁ」と思い、買ってみた。
グラスに注ぐと濃い黄金色というのか濃いベージュというのか。表面には白い泡立ちが見られる。改めて言葉にすると、スパークリングワインの泡よりもビールのそれに近い印象(あくまでも比較のうえで)。香りはリンゴと言ってしまえば、それは当然過ぎるけれど、果実感の強いフレッシュな香りが心地よい。口当たりは、やわらかい。炭酸の刺激も強くはなくソフト。シードルは「Brut」つまり「辛口」と言っても、リンゴ天然の味わいがあるから、甘いと感じる人もいるかも知れない。
ワインは12~14%ぐらいのアルコール度数があるものが多いけれど、このシードルは4.5%。これに限らずシードルのアルコール度数は低めだから、普段はお酒が得意じゃないなぁという人にもお勧め。僕なんかは、暑い時季だとキンキンに冷やして、グビグビと飲んでしまう。
シードル、フランス語で書くとcidre (シードル)、英語で書くとcider (サイダー)。日本語のサイダーもここから来ている。リンゴのお酒には、シードルを蒸留したブランデー「Eau de Vie de Cidre (オー・ド・ヴィ・ド・シードル)」もある。「Eau de Vie」直訳すれば「命の水」。もともとは錬金術師らが純度の高い蒸留酒が不老長寿に効く薬と考え、こう呼んだらしい。錬金術師みたいなフレーズが登場するところがヨーロッパの歴史らしい。
オー・ド・ヴィ・ド・シードルは蒸留酒だけにアルコール度数は40%以上だから、お酒が得意でない人にはちょっと敷居が高いかも知れないけれど、瓶の栓を抜いた瞬間から立ち上がるその香りは、一度はかいでもらいたいとも思うし、口当たりも良い。個人的にはコニャックやアルマニャックよりもお勧めのブランデー。