2022年 日本数学オリンピック本選 第4問 解答例
考え方:
シンプルであるが故に色々な角度から処理できそうで、
迷い道に入り込みそうな問題です。
ですが、整数問題の基本通り、剰余による議論と、
隣接する平方数(今回は立方数も)の差に関する条件を順次調べていけば、
解を絞り込むことができます。
解答例の概要:
考えてみたけど手詰まった方は、ぜひこの順番で処理できるか試してみてください。
①$${y}$$が偶数の時に条件を絞り込む。
(i) $${x}$$も偶数であることが示せます。
(ii) 2つの平方数の差となるので、下から抑えることができます。
(iii) 多項式を指数関数で下から抑えているので、範囲を絞れます。
②$${x}$$が$${3}$$の倍数の時に①と同様に条件を絞り込む。
③$${x}$$が$${3}$$の倍数でない奇数のとき、剰余を使って解がないことを示します。
解答例:
右辺は正であるから明らかに$${x \geqq 2, x > y}$$である。
(i) $${y}$$が偶数のとき
条件式より$${3^x \equiv 1 (\text{mod } 4)}$$となるため、$${x}$$は偶数となる。
正の整数$${x', y'}$$によって$${x = 2x', y = 2y'}$$とおくと、
$${3^x- 8^y = (3^{x'})^2 - (8^{y'})^2}$$となるが、
この値は正であるため$${3^{x'} - 1 \geqq 8^{y'}}$$をえる。
また、$${2xy + 1 = 8x'y' + 1 < 8x'^2 +1}$$となる。
以上を合わせると、
$$
\begin{align*}
8x'^2 +1 &> 2xy + 1 \\
& = 3^x - 8^y \\
&=(3^{x'})^2 - (8^{y'})^2\\
&\geqq (3^{x'})^2 - (3^{x'} - 1)^2\\
& = 2\cdot 3^{x'} - 1
\end{align*}
$$
となるため、$${8x'^2 + 2 > 2\cdot3^{x'}}$$となるが、
これを満たすのは$${x' = 1, 2, 3}$$のみ。
このとき$${x=2, 4, 6}$$であるが、
それぞれ元の式に代入すると
$${y}$$が整数となるのは$${x = 4, y = 2}$$のみ。
よって$${(x, y) = (4, 2)}$$をえる。
(ii)$${x}$$が$${3}$$の倍数のとき、
正の整数$${x'}$$によって$${x = 3x'}$$とおくと、
$${3^x- 8^y = (3^{x'})^3 - (2^{y})^3}$$となるが、
この値は正であるため$${3^{x'} - 1\geqq 2^{y}}$$をえる。
また、$${2xy + 1 < = 2x^2 + 1 = 18x'^2 +1}$$となる。
以上を合わせると、
$$
\begin{align*}
18x'^2 +1 &> 2xy + 1 \\
& = 3^x - 8^y \\
&=(3^{x'})^3 - (2^{y})^3\\
&\geqq (3^{x'})^3 - (3^{x'}-1)^3\\
& = 3\cdot 3^{2x'} - 3\cdot 3^{x'} + 1
\end{align*}
$$
となるため、$${18x'^2 > 3\cdot 3^{2x'} - 3\cdot 3^{x'}}$$となるが、
これを満たすのは$${x'}$$はない。
(iii) $${y}$$が奇数であり$${x}$$が$${3}$$の倍数でないとき
$${0}$$以上の整数$${p}$$と、$${3}$$の倍数ではない正の奇数$${q}$$を用いて、
$${y = 3^p q}$$と一意に表すことができる。
このとき条件式は
$${3^x - (2^{3^{p+1}})^q = 2\cdot 3^pqx + 1}$$
となる。
さらに、$${x>y = 3^pq > p+1}$$であるから、
$$
\begin{align*}
2\cdot 3^pqx + 1 &= 3^x - (2^{3^{p+1}})^q \\
&= 3^{p+1}\cdot 3^{x-p-1} - \{(3-1)^{3^{p+1}}\}^q \\
&\equiv 1 (\text{mod }3^{p+1}) \\
\rightarrow 2\cdot 3^p \cdot qx &\equiv 0 (\text{mod }3^{p+1})
\end{align*}
$$
となるが、$${q, x}$$は$${3}$$の倍数ではないのでこれは矛盾。
以上より、求める解は$${(x, y)= (4, 2)}$$
追記:
証明の最後で$${2^{3^{p+1}} \equiv -1 (\text{mod }3^{p+1})}$$は、
二項定理から自明として話を進めています。
厳密に示したいのであれば、帰納法の方が楽かもしれません↓
$${p=1}$$のとき、
$${2^{3^2}= 512 \equiv -1 (\text{mod } 9)}$$
$${2^{3^k} \equiv -1 (\text{mod } 3^k)}$$を仮定すると、
整数$${t}$$を用いて$${2^{3^k} = t3^k -1}$$とおけるため、
$$
\begin{align*}
2^{3^{k+1}} &= (2^{3^k})^3 \\
&=(t3^k-1)^3 \\
&=t^3 3^{3k} - t^23^{2k+1}+ t 3^{k+1} - 1\\
& \equiv -1 (\text{mod } 3^{k+1})
\end{align*}
$$
とすればOKです。
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