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2013年 日本数学オリンピック本選 第3問 解答例

$${n}$$を$${2}$$以上の整数とする。以下の2つの条件をみたす正の整数$${a_1, \cdots , a_n}$$が存在するような正の整数$${m}$$の最小値を求めよ。
$${\cdot a_1<\cdots <}$$ $${a_n = m}$$
$${\cdot n-1}$$個の数$${\frac{a_1^2+a_2^2}{2}, \cdots,\frac{a_{n-1}^2+a_n^2}{2}}$$はすべて平方数である。

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 第23回(2013年)JMO本選の問題 (imojp.org) 

考え方:

まずは$${a_1 = 1}$$としてみて2つ目の条件を満たす
数列$${\{a_k\} }$$を探してみましょう。
$${a_2 = 7, a_3 =17, a_4 = 31}$$あたりで法則性を見いだせれば、
一般項を$${k}$$を用いて表すのは簡単です。
(以下、ここで見つけた数列を$${\{b_k\} }$$と置きます。)
あとは$${\{a_k\} }$$の各項が$${\{b_k\} }$$より
小さくすることができないことを示せばクリアです。
ここでは帰納法が役に立ちますが、以下の点に注意が必要です。

$${a_k = b_k}$$を固定して$${\frac{b_k^2+ a_{k+1}^2}{2}}$$が平方数となる最小の$${a_{k+1}}$$が$${b_{k+1}}$$と一致することを示すことができ、
これにより帰納法から証明が完成するように思えますが、
実はこれでは十分ではありません。
$${a_k}$$をあえて$${b_k}$$より大きくとることで$${a_{k+1}}$$をより小さくできるかもしれないからです。
$${a_k}$$が最小となる$${a_1, \cdots, a_k}$$と$${a_{k+1}}$$が最小となるときの$${a_1, \cdots, a_k}$$が一致しないかもしれないということです。

そのあたりを気をつけて処理したものが以下の解答例になります。
色々試して目星をつけた解をいきなり提示し、
これが条件を満たし、かつ最小であることを示します。

解答例:

求める値が$${2n^2-1}$$であることを示す。

$${1\leqq k \leqq n}$$ である$${k}$$に対して$${a_k = 2k^2 -1}$$とすると、

$$
\begin{align*}
\frac{a_k^2 + a_{k+1}^2}{2} &= \frac{(2k^2-1)^2 + \{2(k + 1)^2 -1\}^2}{2}\\ 
&= 4k^4 +8k^3+8k^2+4k+1\\
& = (2k^2+2k+1)^2
\end{align*}
$$

となるため、この$${\{a_k\} }$$は2つ目の条件を満たす。
つまり$${m = 2n^2 -1}$$のとき2つの条件を満たす$${a_1,\cdots, a_n}$$が存在する。

逆に、$${\{a_k\} }$$が条件を満たすとき$${a_k \geqq 2k^2 -1}$$であることを帰納法で示す。

$${a_1 \geqq 1 = 2 \cdot 1^2 -1 }$$であり$${a_1}$$では成り立つ。

ある正の整数$${l}$$について$${a_l \geqq 2l^2 -1}$$とすると、
$${0}$$以上の整数$${c}$$を用いて$${a_l = 2l^2 - 1 + c}$$と書ける。
また、$${a_l}$$と$${a_{l+1}}$$の偶奇が一致するのは明らかであり、
$${a_l< a_{l+1}}$$であるので、正の整数$${d}$$を用いて
$${a_{l+1} = 2l^2 -1 + c + 2d}$$と書ける。
このとき、

$$
\begin{align*}
\frac{a_l^2 + a_{l+1}^2}{2} &= 4l^4 + 4(c + d - 1)l^2 + (c + d -1)^2 + d^2 \\
& = (2l^2 + c + d - 1) ^2 +d^2\\
&> (2l^2 + c + d - 1) ^2
\end{align*}
$$

となるが、これが平方数になることから

$$
\begin{align*}
(2l^2 + c + d - 1) ^2 +d^2 & \geqq  (2l^2 + c + d)^2 \\
(d-1)^2 & \geqq 4l^2 + 2c \geqq 4l^2\\
\Rightarrow d &\geqq 2l + 1
\end{align*}
$$

を得る。これより、

$$
a_{l+1} = 2l^2 +c +2d -1 \geqq 2l^2 + 4l + 1 = 2(l+1)^2 -1
$$

となる。
以上からすべての正の整数$${k}$$について$${a_k \geqq 2k^2 -1}$$が成り立つ。

よって、$${m < 2n^2 -1}$$のとき条件を満たす$${a_1, \cdots, a_n}$$は存在せず、
求める解は$${2n^2 -1}$$

コメント:

解き方がわかってからも解答文を正確に書こうとすると結構気を遣う、
入り組んだ問題でした。
(伝わりづらいと思いますが、上記で$${a_n, a_k, a_l}$$はそのために使い分けています)
完全に正確でなくても正誤は判定可能と思いますが、
数学オリンピックの本番ではどれくらいのレベルを要求されるのだろう・・・?

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