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2015年 日本数学オリンピック本選 第1問 解答例

$${\frac{10^n}{n^3+n^2+n+1}}$$が整数となるような正の整数$${n}$$をすべて求めよ。

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 第25回(2015年)JMO本選の問題 (imojp.org)

コメント:

分母の素因数が2と5のみになるような$${n}$$を探します。
できる変形は限られているので、その中で情報を増やして絞っていきましょう。

解答例:

分母$${n^3+n^2+n+1 = (n^2+1)(n+1)}$$の素因数が
$${2}$$と$${5}$$のみになることが必要である。
$${n+1}$$が$${5}$$の倍数の時、$${n^2+1}$$は$${5}$$の倍数にならない。
つまり、$${n+1}$$と$${n^2+1}$$少なくとも一方は$${5}$$の倍数ではない。

$${n}$$が偶数の時、$${n^2+1}$$と$${n+1}$$はいずれも$${3}$$以上の奇数になるが、
どちらか一方は$${5}$$の倍数ではないので$${5}$$以外の素因数を持つため不適。
よって$${n}$$は奇数である。
$${n}$$が奇数の時、$${n^2+1}$$は偶数になるが$${4}$$の倍数にはならない。

(i) $${n^2+1}$$が$${5}$$の倍数ではないとき、
$${n^2 +1 = 2}$$となるしかなく、$${n=1}$$を得る。この時

$$
\frac{10^n}{n^3+n^2+n+1} = \frac{5}{2}
$$

となり不適。

(ii) $${n^2+1}$$が5の倍数のとき、
$${n+1}$$は$${2}$$しか素因数を持たないため$${n+1 = 2^a}$$とおける。
$${a=2}$$のとき、$${n=3}$$となり、この時、

$$
\frac{10^n}{n^3+n^2+n+1} = 25
$$

となるので適する。以下$${a \geqq 3}$$とする。
$${n^2+1}$$は偶数であるが$${4}$$の倍数ではないため
$${n^2+1 = 2\cdot 5^b}$$とおける。
ただし、$${a, b}$$は正の整数である。
この2式から$${n}$$を消去して整理すると、

$$
2^{2a - 1} - 2^a +1 = 5^b \tag{1}
$$

を得る。両辺を$${8}$$で割った余りを考えると、
$${1 \equiv 5^b (\text{mod }8)}$$が必要であり、よって$${b}$$は偶数となる。
正の整数$${b'}$$を用いて$${b = 2b'}$$とおくと、(1)式は

$$
\begin{align*}
2^{2a - 1} - 2^a +1 &= 5^{2b'} \\
\iff 2^{2a-2} &= 5^{2b'} - (2^{a-1} - 1)^2\\
&= (5^{b'} -2^{a-1} +1)(5^{b'} + 2^{a-1} -1) \tag{2}
\end{align*}
$$

を得る。
左辺が2のべき乗なので右辺のカッコ内は2つとも$${2}$$のべき乗となる。
よって、正の整数$${r, s (s>r)}$$を用いて
$${5^{b'} -2^{a-1} +1 = 2^r, 5^{b'} + 2^{a-1} -1 = 2^s}$$とおける。
辺々引いて$${2}$で割ると
$${2^{a-1} - 1 = 2^{s-1} - 2^{r-1}}$$
を得るが、左辺は奇数になるので$${r=1}$$が必要。
この時$${5^{b'} = 2^{a-1} +1}$$となるので、(2)式に代入して

$$
\begin{align*}
2^{2a-2} &= 2 \cdot 2^a \\
\iff 2a-2 &= a+1\\
\iff  a &= 3  
\end{align*}
$$

を得る。この時$${n=7}$$であり、

$$
\frac{10^n}{n^3+n^2+n+1} = 25000
$$

は整数であるから条件を満たす。

以上より、$${n=3, 7}$$が答えである。


ややすんなりいかないところがあり、
(2)での変形がややトリッキーでしたが、
落ち着いて処理していけばたどり着けました。

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