2011年 日本数学オリンピック本選 第4問 解答例
考え方:
関数方程式に慣れない方はまずは以下の問題に挑戦することをおすすめします。
2004年 日本数学オリンピック本選 第2問 解答例|光捷
セオリー通り、まずは式が簡単になるように色々代入します。
途中で$${f(f(0)) = f(f(0)^2)}$$ ということが判明します。
このように異なる式$${\alpha, \beta}$$に対して$${f(\alpha) = f(\beta)}$$が得られる場合、
実は$${\alpha = \beta}$$やそれに近い状態であることが示せれば大きな武器になります。
本問題もこの形を活用します($${\alpha = \pm\beta}$$が得られます。)
同じ処理を何度もすることになりますので、
最初に一般的な形で示しておくと書きやすくなります。
また、前回の記事
2008年 日本数学オリンピック本選 第4問 解答例|光捷
のように場合分けが増えてきます。
手間ですが一つ一つつぶしていきましょう。
解答例:
元の式に$${x=y=0}$$を代入して、$${f(f(0)) = 0}$$を得る。
また、$${y=f(0)}$$を代入して、
$${f(f(x)) = f(f(x)) +f(f(0)^2)}$$より
$${f(f(0)^2) = 0}$$を得る。
元の式で$${x=f(0)}$$を代入したものと、$${x=f(0)^2}$$を代入したものから
$$
\begin{align*}
f(-f(y)) & = f(0) - 2f(0)^2f(y) + f(y^2) \tag{1} \\
f(-f(y)) & = f(0) - 2f(0)^4f(y) + f(y^2)
\end{align*}
$$
となるので、辺々引いて、
$${f(0)^2\{f(0)^2 -1\}f(y) = 0}$$
を得る。
(i) すべての実数$${y}$$について$${f(y)=0}$$のとき
もとの条件式は成り立つので、これは解である。
(ii)$${f(y_0) \neq 0}$$となる実数$${y_0}$$が存在するとき、
$${f(0) = 0 または 1 または -1}$$を得る。
この時、ある実数$${s, t}$$について$${f(s) = f(t)}$$となるとすると、
元の式で$${x=s, y=y_0}$$としたものと$${x=t, y=y_0}$$としたもののから、
$${(s^2 - t^2)f(y_0) = 0}$$、つまり$${s = \pm t}$$を得る。
(ii-i)$${f(0) = 0}$$のとき、
(1)式から$${f(-f(y)) = f(y^2)}$$より$${f(y) = \pm y^2}$$を得る。
ある$${0}$$でない実数$${x_1, y_1}$$について、$${f(x_1) = x_1^2, f(y_1) = -y_1^2}$$となるとする。
元の式に$${x = x_1, y=y_1}$$を代入すると、
$${f(x_1^2 + y_1^2) = f(x_1^2) + 2x_1^2y_1^2 + f(y_1^2)}$$
となるため、これを満たすための符号の取り方は
$${f(x_1^2) = x_1^4, f(y_1^2) = y_1^4}$$となる。
(それ以外の取り方では$${x_1 = 0または y_1=0}$$が導かれ矛盾する*)
さらに元の式に$${x=y_1, y=x_1}$$を代入すると、
$${f(-y_1^2-x_1^2) = f(-y_1^2) - 2y_1^2x_1^2 + x_1^4}$$
となるが、$${x_1\neq 0, y_1\neq0}$$で成立する符号の取り方はなく、矛盾*。
よって、$${f(x) = x^2 または f(x) = -x^2}$$となる。
これらは条件を満たす。
(ii-ii)$${f(0) = 1}$$のとき、
$${f(f(0))=0}$$より$${f(1) =0}$$である。
また、(1)式に$${y=0}$$を代入すると、$${f(-1) = 0}$$を得る。
元の式に$${x=0}$$を代入し、$${f(f(0))=0}$$も用いると、
$${f(1 - f(y)) = f(y^2)}$$ より、$${f(y) = 1 \pm y^2}$$を得る。
ある実数$${y_2 \neq 0}$$について$${f(y_2) = 1+y_2^2}$$となるとする。
(1)式に$${y=y_2}$$を代入すると、
$${f(-1-y_2^2) = -1 - 2y_2^2 +f(y_2^2)}$$
となる。
$${f(-1-y_2^2) = 1 + (-1-y_2^2)^2}$$のときこの式は実数解を持たず、
$${f(-1-y_2^2) = 1 - (-1-y_2^2)^2}$$のときは$${y_2=0}$$となり矛盾*。
よって$${f(y) = 1+y^2}$$となるのは$${y=0}$$のみであり、
この時すべての実数$${x}$$に対して$${f(x) = 1-x^2}$$である。
(ii-iii)$${f(0) = -1}$$のとき、
$${f(f(0))=0}$$より$${f(-1) =0}$$である。
また、(1)式に$${y=0}$$を代入すると、$${f(1) = 0}$$を得る。
元の式に$${x=0}$$を代入し、$${f(f(0))=0}$$も用いると、
$${f(-1 - f(y)) = f(y^2)}$$ より、$${f(y) = -1 \pm y^2}$$を得る。
ある実数$${y_3 \neq 0}$$について$${f(y_3) = -1 - y_3^2}$$となるとする。
(1)式に$${y=y_3}$$を代入すると、
$${f(1+y_3^2) = 1 + 2y_3^2 +f(y_3^2)}$$
となる。
$${f(1+y_3^2) = 1 + (-1+y_3^2)^2}$$のときこの式は実数解を持たず、
$${f(1+y_3^2) = 1 - (-1+y_3^2)^2}$$のときは$${y_3=0}$$となり矛盾*。
よって$${f(y) = -1-y^2}$$となるのは$${y=0}$$のみであり、
この時すべての実数$${x}$$に対して$${f(x) = -1+x^2}$$である。
以上より、答え
$${f(x) = 0, f(x) = x^2, f(x)=-x^2, f(x) = 1-x^2, f(x) = x^2-1}$$
コメント:
*各場合分けにおいて矛盾を導く際、細かい計算を端折っています。
解答として書く内容としてはこれくらい端折っても問題ないと思いますが、
漏れがないか、きちんと確かめた方がミスがないでしょう。
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