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2021年 日本数学オリンピック本選 第1問 解答例

正の整数に対して定義され正の整数値をとる関数$${f}$$であって、正の整数$${m, n}$$に対する次の2つの命題が同値となるようなものをすべて求めよ。
・$${n}$$は$${m}$$を割り切る。
・$${f(n)}$$は$${f(m) - n}$$を割り切る。 

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 第31回(2021年)JMO本選の問題 (imojp.org)

考え方:


同値なので、
①上の条件が真なら下の条件も真 
②上の条件が偽なら下の条件も偽(下の条件が真なら上の条件も真) 
の2つが成り立つことを使いそうです。
$${m=n}$$のケースで①を考えると$${f(n)}$$は$${n}$$の約数であることはすぐにわかります。
そこで、$${f(n)}$$を下から抑えるのに②を使うことを考えます。
$${m}$$が素数ならばすぐ結論がでるので、そこから結論を拡大していく形で解答例としました。

解答例:


条件において$${m=n}$$とすると$${n}$$は$${n}$$を割り切れるから、
条件より$${f(n)}$$は$${f(n)-n}$$を割り切る。
よって、$${f(n)}$$は$${n}$$の約数である。

素数$${p}$$に対して$${f(p)}$$としてあり得る値は$${1, p}$$である。
$${2}$$以上の整数$${n}$$に対して$${f(n) =1}$$とすると、
$${n}$$は$${n+1}$$を割り切らないのに対し
$${f(n)=1}$$は$${f(n+1)-n}$$を割り切るため条件を満たさない。
よって$${n}$$が$${2}$$以上であれば$${f(n)\neq 1}$$であり、
素数$${p}$$に対しては$${f(p) = p}$$である。

素数$${p_1, p_2}$$に対し、$${f(p_1p_2)}$$としてあり得る値は$${p_1, p_2, p_1p_2}$$である。
$${f(p_1p_2) = p_1}$$とすると
$${p_1p_2}$$は$${p_1}$$を割り切らないのに対し
$${f(p_1p_2)=p_1}$$は$${f(p_1)-p_1p_2 = p_1(1-p_2)}$$を割り切るため
条件を満たさない。
同様に$${f(p_1p_2) = p_2}$$も条件を満たさないため、$${f(p_1p_2) = p_1p_2}$$となる。

数学的帰納法の仮定として、正の整数$${k, i}$$に対し$${i\leqq k}$$ならば
$${f(p_1p_2 \cdots p_i)=p_1p_2 \cdots p_i}$$となるとする。
ただし、$${p_1, p_2, \cdots, p_{k+1}}$$は任意の素数であり、同じ素数を複数含んでいてもよい。
$${f(p_1p_2 \cdots p_{k+1}) = a \neq p_1p_2\cdots p_{k+1}}$$であるとする。
$${a}$$は$${f(p_1p_2 \cdots p_{k+1})}$$の約数であり、
かつ帰納法の仮定から$${f(a)=a}$$となる。
このとき、$${p_1p_2 \cdots p_{k+1}}$$は$${a}$$を割れないが、
$${f(p_1p_2 \cdots p_{k+1}) = a}$$は$${f(a)-p_1p_2 \cdots p_{k+1}}$$を割り切るので不適。
よって$${f(p_1p_2 \cdots p_{k+1}) =  p_1p_2 \cdots p_{k+1}}$$となる。
数学的帰納法よりすべての整数$${l}$$に対し、$${f(p_1p_2 \cdots p_l) =  p_1p_2 \cdots p_l}$$となる。

任意の整数$${m}$$は素因数分解により有限の数の素数の積で表せるため、
$${f(m)=m}$$となる。

コメント:

正確に書くため帰納法の形で答えたので少し大掛かりな答案になりましたが、
素因数の数を1つから2に増やしたやり方を何度も繰り返していると理解してもらえればOKです。
逆に、答案としては$${f(p_1p_2)}$$を求める部分を省略しても十分だと思います。

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