見出し画像

2001年 日本数学オリンピック本選 第4問 解答例

$${p}$$を任意の素数、$${m}$$を任意の自然数とする。このとき自然数$${n}$$をうまく選べば、$${p^n}$$を$${10}$$進法で表したときその数字列に$${0}$$が連続して$${m}$$個以上並ぶ部分があるようにできることを示せ。

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 数学オリンピック本選問題

考え方:

注)別解があるかもしれませんので、あくまでも考え方の1つです。

いかにも数論らしい問題であり、とっつきにくいですが、
$${1000}$$で割った余りを一桁にできるか、
$${10000}$$で割った余りを一桁にできるか、
と考えていくと、
剰余に関する感覚があれば$${p}$$が$${10}$$と互いに素であれば
これは可能であることに気づきます。
オイラーの定理(後述)を覚えていれば楽に記述できますが、
忘れていてもフェルマーの小定理からの延長で同じことができるでしょう。

残る$${p = 2, 5}$$のケースは少し厄介ですが、
$${2}$$と$${5^m}$$、および$${5}$$と$${2^m}$$は互いに素であることから、
似た議論でなんとか結論に持っていけないかと理論をこねくり回せば、
結論が導けます。

解答例:

(i) $${p \neq 2, 5}$$のとき、
$${p}$$と$${10^{m+1}}$$は互いに素であるから、オイラーの定理*により
$${p^n \equiv 1 (\text{mod}  10^{m+1})}$$
となる正の整数$${n}$$が存在する。
このとき、$${p^n}$$の$${10^{m+1}}$$の位から$${10}$$の位まで$${m}$$個連続して$${0}$$が並んでおり、この$${n}$$は条件を満たす。

(ii)$${p = 2}$$のとき、
$${2}$$と$${5^{3m}}$$は互いに素であるから、オイラーの定理により
$${2^{n'} \equiv 1 (\text{mod}    5^{3m})}$$
となる正の整数$${n'}$$が存在する。つまり、ある正の整数$${k}$$を用いて
$${2^{n'} = 5^{3m} k +1}$$
となる。両辺に$${2^{3m}}$$をかけると
$${2^{n' + 3m} = 10^{3m} k +2^{3m}}$$
となり、これは$${10^{3m}}$$で割ると$${2^{3m}}$$余る数である。
$${2^{3m} = 8^m < 10^m}$$であるため$${2^{3m}}$$は$${m}$$桁以下であるから、
この数は少なくとも$${10^{3m}}$$の位から$${10^{m+1}}$$の位まで$${2m}$$個の$${0}$$が並び、従って$${m}$$個以上並ぶ。
よって$${n = n' + 3m}$$とすれば条件を満たす。

(iii)$${p = 5}$$のとき、
$${5}$$と$${2^{4m}}$$は互いに素であるから、オイラーの定理により
$${5^{n'} \equiv 1 (\text{mod}    2^{4m})}$$
となる正の整数$${n'}$$が存在する。つまり、ある正の整数$${k}$$を用いて
$${5^{n'} = 2^{4m} k +1}$$
となる。両辺に$${5^{4m}}$$をかけると
$${5^{n' + 4m} = 10^{4m} k +5^{4m} }$$
となり、これは$${10^{4m}}$$で割ると$${5^{4m}}$$余る数である。
$${5^{4m} = 625^m < 10^{3m}}$$であるため$${5^{4m}}$$は$${3m}$$桁以下であるから、
この数は少なくとも$${10^{4m}}$$の位から$${10^{3m+1}}$$の位まで$${m}$$個の$${0}$$が並ぶ。
よって$${n = n' + 4m}$$とすれば条件を満たす。

(i)(ii)(iii)より、すべての素数$${p}$$に対して題意を満たすことが示された。

追記:

オイラーの定理
オイラーの定理 (数論) - Wikipedia
は必須知識と呼べるか微妙なラインですが、
フェルマーの小定理
フェルマーの小定理 - Wikipedia
を知っていればその延長として導出も不可能ではない範囲だと思います。
今回は法が$${10^m}$$などとわかりやすい形をしているので、
$${n'}$$や$${n}$$をより具体的に表すことが可能です。
ただ、存在を示せば十分なので、今回の解答例ではそこまで踏み込みませんでした。

なお、(ii)のケースでは$${2m}$$個以上並ぶ条件を示していて少し過剰です。
もう少し真面目に議論すれば$${m}$$個以上になるように設定することもできるのでしょうが、
$${2^{3m} = 8^m < 10^m}$$あたりの議論が面倒になるので大きめに評価しました。

お知らせ:

少しでも興味深い、楽しいと感じたらぜひスキやコメント、フォローください!
間違いなど見つけましたら是非お教えください。
他に公開している記事などの一覧はこちら
ぜひ初めに見てください。|光捷 (note.com)

いいなと思ったら応援しよう!