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Photo by
kohnohiroko
りぼん
夫と息子が寝静まった午前三時
これを書いている
息子へ
どうしてもきみに伝えておきたいことがあって
でもそれはまだ詩にならない
詩はきもちの結晶だから
実を結ぶのを待っているの
いちばん近くで きみの小さな手を握りながら
毎日 胸に抱いて歩きながら
うんと昔
わたしの4歳の誕生日
バースデーケーキの箱の 黄色いりぼん
おばあちゃんは
ちょうちょむすびを教えてくれた
ほどいて むすんで
何度でも
そしてこれもきみにはうんと昔
わたしが18歳の頃
箪笥の奥に仕舞われた臍の緒を見つけたとき
おじいちゃんは 教えてくれた
これがわたしの命を救う薬になることがあると
小さな木箱の中で乾いた
わたしへの時間のりぼん
そのりぼんのはじっこが
愛するきみにつながっていたよ
始まってしまった時間
毎日のすべてが生きるれんしゅう
眠ること 食べること いずれ歩きはじめること
わたしの姿を見失った時に発する
「マンマー」の音に意味があると知っていくこと
生きることはずっとずっと
れんしゅうの繰り返し
わたしは待っている
晴れた寒い日に公園できみを抱いて
ブランコに乗りながら
きもちが結晶するのを
その詩をきみに 手渡せる日を
ブランコが高く揺れたら
きみも大きくわらった