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セッション定番曲その163:Smoke Gets In Your Eyes (煙が目にしみる)

ジャズセッションの定番曲。古い世代の人なら誰でも一度は聴いたことのあるメロディ。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:The Platters

1958年録音。このバージョンはポピュラー音楽(当時のR&B)として世界中で大ヒットしました。ジャズスタンダードでもあり、ポピュラー音楽としても人気のある曲は意外と多くありますが、この曲が一番有名なのではないかと思います。日本でも大ヒットしました。

ポイント2:Clifford Brown

1955年録音。Clifford Brownのテンポの速い演奏を高く評価する人が多いですが、こういうムード音楽のようなゆったりした、丁寧な演奏も私は大好きです。何よりもトランペットという楽器の響きを最高に気持ちよく聴かせてくれます。物語のある歌詞を理解した上でのインスト演奏。

ポイント3:歌詞の概要

They asked me how I knew
My true love was true, oh, oh
I of course replied, "Something here inside
Cannot be denied"

みんなが私を問い詰める
あなたの大事な人のことを本当に信じていいの、かと
「自分の心が一番知っているから」と私は答える

They said, "Someday you'll find
All who love are blind," oh, oh
"When your heart's on fire, you must realize
Smoke gets in your eyes"

みんなが言う
恋している時にはみんな盲目になっている、と
恋心が燃え上がっている時には
その煙で目の前が見えなくなるんだよ、と

主人公と周囲の友人達とのやり取りが綴られています。友人達は少し年上なのか、経験豊かなようで、色々とアドバイスしてれくます。どうもこの言い回しはロシアの古い諺のようです。

So I chaffed them and I gaily laughed
To think they could doubt my love
Yet today, my love has flown away
I am without my love

「chaff」は「からかう」「冗談でしょ、と言う」みたいな感じ。
「gaily」は少し古い言い回しですが「陽気に」とか「愉快に」。

私の恋人を疑うなんて
バカじゃないのと言い返してやった
それなのに今はもう恋人はいなくなって
私はひとり

Now, laughing friends deride
Tears I cannot hide, hide
So I smile and say, when a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes

「deride」は「嘲る」「冷笑する。

いまではみんなが私のことを憐れんで、冷たい目で見てくる
もう涙は隠せない
歯を食いしばって笑ってみせて
美しい炎が消えかかる時には
その煙が目に刺さるんだよ、と言ってみる

短い歌詞ですが、盛り上がっていた恋愛が思いがけず終わってしまい、あっけに取られながら、悔しい気持ちが湧き上がってくる様子を描いています。周囲の忠告を聞いていれば良かったのか、それとも結果は同じだったのか。

やはり「Smoke gets in your eyes」というフレーズが印象的ですね。
考えてみると焚き火から煙が出る時って、燃え始めと燃え終わり頃ですよね。

リードシート例


ポイント4:様々な歌唱や演奏を聴いてみよう

J.D. Souther、1989年録音
映画のサントラ盤に収録されました。彼はジャズ歌手ではなく、歌い方はThe Plattersをなぞっていますね。


Sarah Vaughan
、1958年録音
完全にメロディを崩して、得意のビブラート多めで歌っています。好みが分かれる歌唱。ジャズ歌手らしいといえば、らしい。


Chantal Chamberland、2005年録音
オトナの色気のある歌唱例。


西田ひかる

帰国子女〜アメリカンスクール出なので、発音は自然で、歌詞の意味も理解して歌っていて、その辺のジャズ歌手よりも安心して聴けます。あくまでもポップスとしての歌唱ですが。


Coleman Hawkins Quartet
、1962年録音
派手さはないけど、夜にはこういうのを聞きたいですね。


Earl Klugh、1980年録音
なんか凄くあっさりした演奏です。


Thelonious Monk

ちゃんとMonk印の変な音で安心します。


ポイント5:Jerome Kern

作曲者はJerome Kern。1900年代から1940年代までミュージカルや舞台劇の音楽の制作に携わりました。スタンダード曲になっているものも多く、「Look for the Silver Lining」「A Fine Romance」「All the Things You Are」「I'm Old Fashioned」「The Way You Look Tonight」「The Song Is You」など。当然最初から歌詞が付いていたものが多いです。昔の作曲者って本当に多作ですね。ミュージカル1本に対して10曲以上の新曲を書く訳だから当然ですが。

◼️歌詞


They asked me how I knew
My true love was true, oh, oh
I of course replied, "Something here inside
Cannot be denied"

They said, "Someday you'll find
All who love are blind," oh, oh
"When your heart's on fire, you must realize
Smoke gets in your eyes"

So I chaffed them and I gaily laughed
To think they could doubt my love
Yet today, my love has flown away
I am without my love

Now, laughing friends deride
Tears I cannot hide, hide
So I smile and say, when a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes



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