セッション定番曲その52:Creep by Radiohead
ずっとループのコード進行で、曲を知らなくても即興で演奏出来る便利な曲です。セッション定番曲とまでは言い切れないけど、いまでも世界中のバーや路上で演奏され歌われている曲。1993年発表作。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:自信が無く、のけ者の僕
ロックスターが歌うメッセージは「俺について来い」「俺はモテモテのカリスマ」「一緒に世界を変えてやろうぜ」という(バカっぽい)イメージのものが多かったと思いますが、この1990年代初頭には「ダメな自分を肯定する」「それでも生きている」という、ちょっと情けない、自信が無い、主流から外れた「のけ者」がそれでも演奏して歌っている、というイメージの曲が流行りました。
それまでもシンガーソングライターがアコースティックギターやピアノを弾きながら、そういう自虐的な曲を歌うというのはあったと思いますが、この時代には、バンドで、しかも爆音を掻き鳴らしながら、というのが特徴。それに共感を覚える聴衆が実は沢山いた、ということですね。
この「Creep」もそんな代表曲のひとつです。
Radioheadはこの後、変拍子や複雑な構成、隠し絵のような和声の組み立ての曲作りに移行していき、単なるロックバンドを逸脱した高い評価を受けることになりますが、この「Creep」は彼らの原点/出発点のような曲。歌っているThom Yorkeの容姿の変化も追っていくと面白いですね。初期のナイーヴな感じの見かけがこの曲にすごく合っています。
ポイント2:王道コード進行
G–B–C–Cm(I–III–IV–iv)をずっとループして演奏します。古いポップスによくある進行で、彼ら自身は「スコット・ウォーカー・ソング」と呼んでいたそうです。
スコット・ウォーカー - Wikipedia
なんだかノスタルジックな雰囲気が漂う進行ですね。CからCmに行くところがキモ。
そのループの上で印象的なメロディを歌い、時にはしっとり、時には爆音のディストーションギターで盛り上げていく。バンド全体での意思が通っていないと平坦な演奏に終始してしまうので、工夫が必要ですね。
ひとりでの弾き語り(ギター、ピアノ、その他の楽器)にも向いている曲です。最初はひとりで始めて、徐々に他の楽器が入ってくるというのもいいですね。
曲の主旨さえ理解出来れば、本当にセッション向きの曲だと思います。
ポイント3:スクールカースト下位
ドラマや映画で描かれるスクールカーストは世界中に存在していて、主流派でない子供達にとっては地獄のような日々。学校を卒業しても、生まれ育った町に留まっている限りは力関係は変わらず。運よく都会に出ても、その中で職場や団体の中にもやはりカースト的なものはついて回るのが実態。
この歌に出てくる「creep」「weirdo」の他にも「outcast」「nerd」「geek」「freak」「weeb」など様々な蔑称があります。中には、当事者はそうカテゴライズされていることを誇りに思っているようなものもあり、必ずしも烙印とは呼べない場合もありますが。
この曲はそんな「creep」が素敵な女の子に憧れたけれど、近づくことも、話しかけることも出来ない、そんな情景を描いたもの。
家のガレージで下手なギターを(爆音で)掻き鳴らし、下手な歌をその女の子に向けて歌う。周りのバンドのメンバーもパッとしない連中ばかり。学校のパーティーにも呼ばれないので、歌を披露する機会も無い。
万が一、憧れの女の子に聴かれたら、彼女はどんな顔をするのだろう?顔をしかめて、あっちの方に逃げていってしまうかもしれない・・・
ポイント4:発音のポイント
You float like a feather
「f」音をちゃんと出しましょう。擦れた音です。
「feather」は発音の難しい単語、発音記号だと「 féðər」で前半の「fea」にアクセントがあります。「f」も「th」も気を付けて発音しましょう。
I wish I was special
You're so fuckin' special
「special」も気を付けて発音しましょう。「l」の後に母音はありません。
「fuckin'」は歌うのに躊躇する言葉ですが、こういう主旨の歌詞なので、このままが大事です。気持ちを籠めて「fuckin'」と。
But I'm a creep, I'm a weirdo
一番大事な一節です。「creep」「weirdo」とも元歌をよく聴いて練習しましょう。「ee」は唇を思い切り横に引っ張って。後者は「wíɚdoʊ」と「do」はカタカナだと「ドウ」みたいな音になります。思い切り憎たらしい感じで吐き捨てるように発音したいですね。
What the hell am I doing here?
「the hell」は強調の為に挟まれている言葉です。「一体ぜんたい・・・」という感じ。この一文も吐き捨てるように歌いたい箇所ですね。
ポイント5:様々なバージョン
海外のオーディション番組でも様々なアレンジで歌われています。悲痛な歌詞が人気の秘密?
子供に歌わせるのはどうかと思うけど
The BEST Blind Auditions of CREEP by Radiohead on The Voice Kids!
ノスタルジックな感じのアレンジ
枯れ果てた感じ
まさかのファンク・バージョン
If James Brown wrote Creep by Radiohead
こんな人も歌っています
やはり「路上」で歌うのが似合う曲です。3分15秒くらいから。
"I swear I'm not a professional singer" (Greg sings "Creep")
ポイント6:著作権問題
近年のポピュラー音楽で頻発する著作権問題がこの曲でも起こっています。
よくありがちなコード進行なので、ミドルテンポで演奏すると上のメロディも似たものになりがち。
Raioheadはホリーズに訴えられ、Raioheadはラナ・デル・レイに対して申し立てを。前者は無理矢理な気もするけど、後者は明らかに似通っていて、やったなぁという印象でした。
クリープ (レディオヘッドの曲) - Wikipedia
Radiohead's 'Creep' vs. Lana Del Rey's 'Get Free' vs. The Hollies' 'The Air That I Breathe'
■歌詞
When you were here before
Couldn't look you in the eye
You're just like an angel
Your skin makes me cry
You float like a feather
In a beautiful world
I wish I was special
You're so fuckin' special
But I'm a creep, I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
I don't belong here
I don't care if it hurts
I wanna have control
I want a perfect body
I want a perfect soul
I want you to notice
When I'm not around
You're so fuckin' special
I wish I was special
But I'm a creep, I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
I don't belong here
Oh, oh
She's running out the door
She's running out
She run, run, run, run
Run
Whatever makes you happy
Whatever you want
You're so fuckin' special
I wish I was special
But I'm a creep, I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
I don't belong here
I don't belong here