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セッション定番曲その182:Cute by Neal Hefti, Count Basie Orchestra

ジャズセッションの定番曲。ジャズ演奏、特にビッグバンドを聴き慣れていない人が聴いても楽しい曲です。普段は縁の下の力持ちのドラムが主役になれる曲。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Count Basie Orchestra

1950年代にCount Basie Orchestraの座付き作曲者・編曲者として活躍したNeal Heftiの作品。テーマの冒頭からビッグバンドとドラム(ブラシ)のやり取りが始まるのが特徴。ただ時間を埋める為のドラムソロではなく、歌うようなドラムが求められるのが面白いです。

シンプルなコード進行の上でキャッチーなメロディと演奏のダイナミックさが共存している名曲。


ポイント2:歌入り

ビッグバンド演奏の部分を歌に置き換えて、ドラムとのやり取りをしながら歌います。歌詞の内容も楽しいものなので、ウキウキした感じになります。
ジャズを歌い始めたばかりで「4小節交換」とかに慣れていない人も、この曲ならテーマそのものにそういう仕組みが組み込まれているので、抵抗なく楽器とのやり取りが体験出来ます。


ポイント3:曲の構成

最初は「2小節交換」が2回、続いて「「1小節交換」がが2回、そして「2小節交換」が1回、という目まぐるしい構成です。考える暇が無いので逆にすんなり覚えられます。半拍置いてメロディが始まるのも特徴。

リードシート例


ポイント4:歌詞のポイント

Mind if I say you’re cute, In every way you’re cute
Those big blue eyes, That turned up nose
That cool and carefree pose

「(Do you) mind if」は「xxxしてもいいかな?」と少し丁寧に自分の感想を言っています。「cute」のニュアンスはちょっと難しくて、日本語で「可愛い」というと曖昧ですが、少し小さいものや幼いものに対しての「愛らしい」という表現。日本の文化ではそういうものが好まれますが、(米国では)相手によっては「えっ、成熟していないってこと?」と褒め言葉にはならない場合もあります。また時代によっては「セクシーだね」というニュアンスになったり。いずれにしろ女性を褒めるのは難しいですね。

「turned up nose」は鼻が上を向いている様子。鼻先が少し尖っている女性が人気があった時代がありましたね。1942年に公開された映画「Casablanca」のイングリッド・バーグマンのように北欧系の血が入っているのでしょうか。

「carefree pose」は画像検索すると色々出てきますが、気取っていない自然な姿勢/態度。大抵は相手に対して警戒心を持っていない様子です。それなのに「cool」だというのは天性のものですね。

ここまで言葉を尽くして相手の女性を褒め称えています。

I mean I like your style, That sly intriguing smile
Your every mood, Your attitude
Just add up to you’re cute

「I mean」は「つまり・・・」と後の言葉を強調しています。

「sly」「intriguing」は両方とも「何か意味ありげで気を惹かれる」様子を表しています。計算なのか天然なのか・・・。

「mood」は日本語の「ムード」とは違ってむしろ内面的なものを指します。
「attitude」は「立ち居振る舞い」ですが、実は場面によっては「ちょっと偉そうな態度」という意味で使われることもあります。

ここまで来ると「思わせぶりな微笑み」も「気分次第での振る舞い」も結局は「キュートさが増すだけ」というメロメロな状態。
単に容姿の可愛い女の子の話かと思ったら、ちょっと複雑な女性なのかもしれませんね。


ポイント5:様々バリュエーションを聴いてみましょう

The Benny Green Trio、1990年録音
ベースはChristian McBride


金子健、2006年録音
ドラムが目立つ曲ですが、実はベースも目立てる曲。


大野雄二
、2019年録音
なんだかトムとジェリーが追いかけっこをしているみたいな印象の楽しい演奏です。


Neal Hefti & His Jazz Pops Orchestra、2013年録音
ラテン風味を加えたアレンジで、ドラムの部分がパーカッションに置き換わっています。


Les DeMerle、2006年ライブ録音
終始ドラムが主役の演奏(この曲ではボーカルは入っていません)


Tony Bennett
(正式な音源が見つかりませんでした)


Claude Tissendier, Michèle Hendricks, Marc Thomas
、2010年録音
コーラスグループによる歌唱。ドラムの部分も歌でコール&レスポンスになっています。


◼️歌詞


Mind if I say you’re cute
In every way you’re cute
Those big blue eyes
That turned up nose
That cool and carefree pose

I mean I like your style
That sly intriguing smile
Your every mood
Your attitude
Just add up to you’re cute



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