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セッション定番曲その156:You Raise Me Up
歌ものセッションの定番曲。何か懐かしい感じのメロディの曲ですが、どういう背景があるのでしょう。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Celtic Woman
2006年トリノオリンピックのフィギュアスケートで、荒川静香選手がエキシビションでこの楽曲を使用したことで日本でも広く知られるようになった(Wikipediaより)と言われています。何か懐かしい、無国籍なメロディ。前を向きたくなるようなメッセージを感じますね。
ポイント2:Secret Garden
これがオリジナルバージョン。 Irish-Norwegian bandと紹介されていますが基本的には男女デュオのようです。アイルランド民謡を北欧のポップフィルターを通して現代化したようなアレンジでした。
ポイント3:Westlife
これが一番ヒットしたバージョンかと思います。彼らもアイルランド出身のボーカルグループ。英国内では絶大な人気があります。
1999年から2007年の間に14曲もの全英ナンバー1シングルをリリースしており、これはエルヴィス、ビートルズに次ぐ3番目の記録。イギリスの音楽史上7曲連続で1位を獲得したのはウエストライフだけ。(Wikipediaより)
ポイント4:歌詞のポイント
キリスト教系の言葉(英語ですが)が歌詞の節々に見受けられます。それを理解した上で解釈をしてみましょう。英語圏で流行る曲には意外とそういう背景があったりします。
You Raise Me Up
この「You」は誰なのでしょう?ラブソングと考えれば「恋人」でしょうが、もう少し普遍的な存在(神様的な)と考えることも出来ます。
When I am down and, oh, my soul so weary
When troubles come and my heart burdened be
Then I am still and wait here in the silence
Until you come and sit awhile with me
絶望の淵に沈んでいる時、私は沈黙の中で「あなた」がそばに寄り添ってくれるのを待っています
「heart」ではなく「soul」と言っているあたりが匂いますね。
my heart burdened be
「burdened」は「重荷を背負った」で、ここは敢えて倒置して「be」が後に来ていますね。この「重荷」系の表現もキリスト教系の匂いがしますね。
You raise me up so I can stand on mountains
You raise me up to walk on stormy seas
I am strong when I am on your shoulders
You raise me up to more than I can be
やたらと山頂に立ちたがるのもキリスト教系の匂いがします。
荒れた海の「上」を歩いたりするのも同様。
「on your shoulders」は物理的に「肩の上に立つ」のではなく「頼る」とか
「責任を委ねる」という感じ。
There is no life, no life without its hunger
Each restless heart beats so imperfectly
But when you come and I am filled with wonder
Sometimes I think I glimpse eternity
生きていることは何かを求めること
完璧な鼓動を打つ命などはない
でも「あなた」が私のそばに来てくれると、人生って凄いと思える
「永遠」を垣間見た瞬間もある
「glimpse」は「ちらっと見る」「垣間見る」という感じで、じっと凝視する行為ではありせん。「永遠」もキリスト教系の人達の大好きな表現ですね。
「永遠がちらっと見える」というのも素敵ですね。
全体を通して、単なるラブソングとしては表現が大袈裟です。露骨に讃美歌的な言葉や表現は盛り込まれていませんが、ある意味ゴスペル的ではあります。これを非キリスト教系の人が歌う際にどんな気持ちで歌えばよいのでしょうか。日本人的に「八百万の神(神々は偏在する)」をイメージして、その上で「普遍的な愛」を歌うのもアリかと思います。内容的にはどうしても歌い上げてしまいますが、フォークソングのようにさらっと歌ってみるのも面白いと思います。
ポイント5:元ネタ
実はこの曲には元ネタがあって、それがアイルランド曲の「Danny Boy」で、例えばアイリッシュ系の多い米国の警官や消防士の葬儀でも歌われるほど、かれらの「魂の歌」という位置付けの曲です。よく聴くとメロディが似ているのは分かりますね。
で、その「Danny Boy」の元ネタが「Londonderry Air」という古いアイルランド民謡の旋律です。「Danny Boy」は数ある歌詞のいちバリュエーションのようです。
こういうベースがあって、その懐かしいメロディに、キリスト教的な歌詞がのって、ヨーロッパで大ヒットしたというのが分かりますね。
アイルランド音楽の詳しい特徴については下記で解説されています。
ポイント6:曲の構成
ワンコーラス16小節と短く、すぐに盛り上がるサビに行くので、ダレる瞬間が無くて歌い上げやすいです。下はリードシートの例ですが、この後は間奏を挟んで転調していきます。転調後の最高音を確認して、自分のキーを決めましょう。
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ポイント7:様々な歌唱
イントロのバイオリン(フィドル)も含めて、似たようなアレンジのものが多いです。歌っている人達も高音部がキレイに伸びる人達ばかり。
薬師丸ひろ子、2013年録音(日本語版)
歌い出しですぐ分かる、透明感のある伸びやかな歌声。
阿部真央、2021年録音
宇徳敬子、2015年録音
森山良子、2023年録音(日本語版)
Sarah Àlainn、2015年録音
Josh Groban、2003年録音
この動画は1.8億回視聴されています。
Leroy Brown、2012年録音
ちゃんとレゲエバージョンもあります。
Cris Delanno
ボサノババージョンもあります。
◼️歌詞
When I am down and, oh, my soul so weary
When troubles come and my heart burdened be
Then I am still and wait here in the silence
Until you come and sit awhile with me
You raise me up so I can stand on mountains
You raise me up to walk on stormy seas
I am strong when I am on your shoulders
You raise me up to more than I can be
There is no life, no life without its hunger
Each restless heart beats so imperfectly
But when you come and I am filled with wonder
Sometimes I think I glimpse eternity
You raise me up so I can stand on mountains
You raise me up to walk on stormy seas
I am strong when I am on your shoulders
You raise me up to more than I can be