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セッション定番曲その127:We're All Alone by Boz Scaggs

歌ものセッションの定番曲。バラードの代表曲のひとつですが、どんなことを歌っているのでしょう?
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Boz ScaggsとAOR

1976年発表のアルバム「Silk Degrees」から。ドラムはJeff Porcaro、 キーボードにはDavid Paich、ホーンセクションにはTom Scottなどが参加。

1970年代も半ばを過ぎるとロックで育った世代も「大人」になり始め、激しいだけではない、落ちついて聴ける、歌詞も深い内容のポピュラー音楽を求めるようになります。「AOR」と(マーケティング的に)呼ばれるジャンルで「Album-Oriented Rock」または「Adult-Oriented Rock(こっちは和製英語っぽい)、最近では「Yacht Rock(ヨットを持っているオジサンが休日に聴くイメージ)」とか呼ばれたりします。どこか「ロックの魂を失った、商業主義的な音楽」という蔑称の感じもしますが、当時一番売れる音楽だったのも確かです。作曲の中心がギターからピアノ/キーボードへと幅を広げていった時期でもあります。

Bobby Caldwell

もともとは硬派なR&BシンガーだったようですがAOR路線に転向してからは、ロックやソウル音楽を聴いている人達からは「君、ボビコーとか聴いてんの?」と馬鹿にされるような存在でした・・・。

Rupert Holmes


Chicago

初期は政治的主張を込めた先進的な音楽を演奏していた彼らも徐々に軟化していき、バラード・バンドへと堕落(!)していきました。こういう曲のイメージしかない人はぜひ初期のアルバムも聴いてみてください。

Peter Allen


Christopher Cross

ライブを観たらギターが上手くてびっくりしたという人もいましたね。

日本でも1980年代になると「カフェみたいな気軽な雰囲気でお酒が飲める」カフェバーが流行して、そういう店内で「女の子を口説くBGM」として流れていました。

ポイント2:AORは素敵な音楽

前項では否定的なことばかり書きましたが、AORが音楽ファンの層を広げて音楽産業の規模拡大に寄与したのは確かです。表面的な装飾を剥ぎ取ると、メロディの綺麗な良識な曲も多いです。偏見を捨てて聴きましょう

このジャンルにたどり着いた経緯はミュージシャンごとに異なりますが、大きく分けると「渋いブルースとかR&Bとかをやっていたが、流行りにのって方向性を変えた」と「フォーク系の弾き語りをやっていたが、流行りにのってアレンジを変えて派手になった」の2パターンかと思います。いずれもプロデューサーやアレンジャーの果たした役割が大きいですね。

Boz Scaggsはこんな音楽をやっていました(1969年発表)。Duane Allmanがギターで参加しています。


AOR期のChicagoに加入したBill Champlinはそれ以前はこんな感じ(1969年発表)。


弾き語りのイメージが強いJames Taylorも1977年にはこんな感じに。


ポイント3:歌のバリュエーション

原曲のイメージが強いので、ゆったりとしたバラード以外のアレンジはあまり見つかりません。

Rita Coolidge、1977年録音
実はこっちの方がヒットしました。


The Walker Brothers


Susan Wong


Cecilio & Kapono


ポイント4:We're All Alone

タイトルの解釈は「私達は、世間の他の人達とは離れて、ふたりきり」というものと「私達はみんな、それぞれ独りきり」というものがあり、英語的にはどちらにも取れるのですが、これは敢えてそういう風に作詞したという話もあります。私は前者のつもりで歌っていたのですが・・・。

Outside the rain begins, And it may never end
So cry no more, On the shore, a dream
Will take us out to sea
Forever more, Forever more

ここは情景描写で、恋人であるふたりは室内にいて、降り出した雨を見ています。恋人がなぜ泣いているのかはここでは分かりませんが、主人公は相手を慰めています。「Forever more」は主人公の想像についての説明ですが、ふたりの関係は永遠に続くよ、と暗に語っているようです。

Close your eyes, Ami, And you can be with me
'Neath the waves, Through the caves of ours
Long forgotten now
We're all alone, We're all alone

ここではふたりの逃避行を例えに使って、愛を語っています。だから、やはり「私達は、ふたりきりだよ」というように聞こえるのですが。

Close the window, Calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out, Let it all begin
Learn how to pretend

恋人の不安な気持ちを払拭するように「悩む必要はないよ」「心を楽にして解放してごらん」「初めはうまくいかなくても、そのつもりになれば、段々と感じが掴めてくるから」と語り掛けています。不安な気持ちは荒れた天気から来ているのか、それとも相手の誠実さを疑っているからなのか?

Once a story's told, It can't help but grow old
Roses do, lovers too
So cast your seasons to the wind
And hold me, dear, Oh, hold me, dear

時が経てばすべては色褪せていくものだ、と。だから僕に身を任せてごらん、と。「your seasons」というのが分かりにくいですが「君が過ごしてきた季節=人生とか思い出とか」ということだと思います。それを吹く風に委ねて解放されてごらん、と。

一緒にいる恋人に対してとても誠実に愛を語っているようにも思えますが、裏を返せば自分の不誠実さを隠して都合のいいことばかりを言っているようにも思えます。後者の場合は独り言のように「みんなしょせんは独りきりだ」と言っているという解釈も確かに成り立ちます。

ということで、歌っている人が「本当に誠実な人」なのか「ただの口の上手いナンパ野郎」なのか次第という感じですかね。

ポイント4:番外編

アンジェラ アキ


布施明


Marlene


◼️歌詞

Outside the rain begins, And it may never end
So cry no more, On the shore, a dream
Will take us out to sea
Forever more, Forever more

Close your eyes, Ami, And you can be with me
'Neath the waves, Through the caves of ours
Long forgotten now
We're all alone, We're all alone

Close the window, Calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out, Let it all begin
Learn how to pretend

Once a story's told, It can't help but grow old
Roses do, lovers too
So cast your seasons to the wind
And hold me, dear, Oh, hold me, dear

Close the window, Calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out, Let it all begin
All's forgotten now
We're all alone, We're all alone

Close the window, Calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out, Let it all begin

Throw it to the wind, my love
Hold me dear
All's forgotten now, my love
We're all alone


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