セッション定番曲その129:I'm In The Mood For Love
ジャズセッションの定番曲。こういう軽めのジャズ曲も軽くみてはダメですね。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Julie London
1955年録音
「ジャズボーカル」というイメージ通りの、気怠く、セクシーで、耳元で囁くような、ハスキーな声での歌唱で、冗長な楽器ソロも無くすぐ終わる。おまけに「おっぱい」付き。Julie Londonを聴いておけば間違いないです。
彼女は1950年代半ばから1960年代に活躍した米国のジャズ歌手で、実は女優としてのキャリアの方が長く、歌手活動を引退した後もテレビドラマなどに出演していました。
ポイント2:Nat King Cole
1957年のテレビショーから
暖かい声で、微笑みながら、噛み締めるように歌う。ポップス寄りではありますが、これも「ジャズボーカル」のもうひとつのあり方。大抵の曲はNat King Coleが歌っているので、それを聴いておけば間違いないです。
ポイント3:Louis Armstrong
1935年録音
歌うようなトランペット、優しいダミ声で自由なメロディを歌う。楽しい気持ちになりたい時はLouis Armstrongを聴いておけば間違いないです。この曲が書かれた年に録音されました。
ポイント4:Jamiroquai
2000年録音
スカッっぽいリズムに乗っておおらかに歌うJamiroquai(Jay Kay)。現代的な音楽をやっていても「ルーツ」を大事にする彼らしく、メロディを崩さずに歌っています。
ポイント5:I'm in the mood for love
I'm in the mood for love
Simply because you're near me
Honey but when you're near me
I'm in the mood for love
「mood」は日本語の「ムード」とはちょっと違っていて「その時の心の動き、気分、機嫌」を表します。日本語の「ムード(その時間その場の雰囲気)」は「atmosphere」の方がニュアンスが正しく伝わります。
あなたがそばにいると、私はもう恋に落ちそう
それはちょっと不思議な気分
Heaven is in your eyes
Bright as the stars we're under
Oh, is it any wonder
I'm in the mood for love
詩的な表現で相手を手放しで褒めています。私が恋に落ちるのは当たり前のことだと。
Why stop to think of whether
This little dream might fade?
We've put our hearts together
Now we are one, I'm not afraid
ちょっとだけ不安な気持ちが起きますが、それを一蹴して、私たちは離ればなれにはならない、と。
要するにずっと「大好き大好き」と言っているだけの歌です。1930年代の流行歌だと思うと納得出来ますね。
ポイント6:Jimmy McHugh
この曲の作曲家のJimmy McHughは1920-1950年代にとんでもない数のヒット曲を書き、ジャズスタンダード化している曲も沢山あります。
「Exactly Like You」「I Can't Give You Anything but Love, Baby」「Let's Get Lost」「On the Sunny Side of the Street」「Say It (Over and Over Again)」などウキウキした感じの中に哀愁も感じる素敵な曲ばかりです。
作曲家縛りでジャズを考えることはCole Porterとか以外だとあまりないかもしれませんが、忘れてはいけない人のひとりです。
ポイント7:演奏のバリュエーション
いい曲はインストで聴いてもいいんですよね。
Erroll Garner、1951年録音
装飾音が多く、クセの強いピアノ演奏。
Charlie Parker Quartet、1950 年録音
Dizzy Gillespie、2009年ライブ録音
ポイント8:歌のバリュエーション
Peaches & Herb、1967年録音
ポップス風のバラードにしてデュエットで歌っています。
The Chimes、1961年録音
「オールディーズ」という雰囲気。
Doris Day
Julie Londonのような色気が無い分、安心して聴けます。
Billie Eilish、2021年録音
実は色々な音楽を聴いて育った彼女らしいカバー。
ポイント9:Moody's Mood For Love
この曲のJames MoodyのサックスソロをなぞってEddie Jeffersonが歌詞を付けて「歌」にしたもの。Eddie Jeffersonはいわゆる「なんでも歌っちゃうヒト」でした。歌そのものは上手いとは思わないけど、音感とチャレンジ精神はすごいですね。
それをカバーした人も沢山います。元ネタがチャーリー・パーカー風のソロだったので、歌にしてもメロディアスで、音階の上下動が激しく、歌唱力に自信のある人向き。
Cecile Mclorin Salvant、2010年録音
Aretha Franklin、1973年録音
Van Morrison、1993年録音
Sheena Easton、1993年録音
Patti LaBelle、2017年録音
◼️歌詞
I'm in the mood for love
Simply because you're near me
Honey but when you're near me
I'm in the mood for love
Heaven is in your eyes
Bright as the stars we're under
Oh, is it any wonder
I'm in the mood for love
Why stop to think of whether
This little dream might fade?
We've put our hearts together
Now we are one, I'm not afraid
If there's a cloud above
And it must rain, we'll let it
But for tonight, forget it
I'm in the mood for love