セッション定番曲その99:Polka Dots and Moonbeams
ジャズバラードの人気曲でセッション定番曲。歌モノでも、インストでも演奏されます。ちょっと変わったタイトルですが、どんな内容の曲なのでしょうか。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Polka Dots
日本語で言う「水玉模様」です。
今も昔もファッションやインテリアで使われ、人気のあるデザインパターン。子供っぽさや可愛さが出ますが、うまく使うとシックな感じにもなりますね。この曲が書かれてヒットした1940年代の米国でも流行りのデザインパターンだったようです。
小さなお祭り(屋外でのダンスパーティー)の夜に印象に残ったのは「水玉模様(のドレス)と月明かり」だったというのが曲のタイトルです。
A country dance was being held in a garden
I felt a bump and heard an "Oh, beg your pardon"
Suddenly I saw polka dots and moonbeams
All around a pug-nosed dream
そこで偶然出会った女の子は水玉模様のドレスを着ていて、ちょっと「pug-nose」だった。日本語だと「だんごっ鼻」「丸鼻」みたいな言い方ですが、アジア系と違って基本的には鼻が高い中での丸鼻なので、鼻先が尖っておらず少し上を向いた感じのチャーミングな容姿なのだと思います。ちょっと庶民的な感じで親しみが持てますね。ハリウッド女優さんにもいますね。
ダンス中にうっかりぶつかってきたり、彼女は少しおっちょこちょいなのかもしれませんね。
ポイント2:ダンスの誘い
The music started and was I the perplexed one
I held my breath and said, "May I have the next one?"
In my frightened arms, polka dots and moonbeams
Sparkled on a pug-nosed dream
「perplexed」は「戸惑ってしまった」という意味で、一目惚れした彼は勇気を振り絞って「次の曲は僕と踊ってくれませんか?」と誘います。彼にとっては奇跡の瞬間が訪れ、彼の腕の中で「水玉模様(のドレス)と月明かり、丸鼻の女の子」が踊っています。ちょっと発音の難しい単語なので、歌う際に引っ掛からないように練習しましょう。
曲調はゆったりとしたバラードで演奏されますが、淡々とした中でこの登場人物の胸の高鳴りをいかに表現するかが大事ですね。当然、水玉模様のドレスの女の子も少し緊張しています。
歌ならば歌詞にそういう情景が描写されているので、それに寄り添って表現しやすいですが、インストの場合にはどこまで歌詞の内容や曲の背景を理解している必要があるのかは議論のあるところです。曲を単なるコード進行と音列として捉えて、アドリブを取る為の素材と割り切っている演奏者もいますが、歌詞の内容を知っているリスナーからすると違和感のある表現になってしまうこともあります。
There were questions in the eyes of other dancers
As we floated over the floor
There were questions, but my heart knew all the answers
And perhaps a few things more
夢見心地で踊っているふたりを、周囲は好奇の目で見ています。彼はそれに気づきながらも、徐々に決心を固めていくようです。彼女を絶対に離しはしないと。
ポイント3:Ever after
後日談が最後のパートの歌詞です。
Now in a cottage built of lilacs and laughter
I know the meaning of the words "ever after"
And I'll always see polka dots and moonbeams
When I kiss the pug-nosed dream
おとぎ話の最後は
「They lived happily ever after.」「それからずっと幸せに暮らしましたとさ」で終わります。この歌の登場人物はまさにそれを感じながら、あの晩以来ずっと一緒にいるようです。ずっと「水玉模様(のドレス)と月明かり」の思い出を抱きながら。
笑いが溢れるふたりの家の周りには「lilacs」が咲いています(紫丁香花、リラ)。花言葉は「初恋の香り」「思い出」「恋の芽生え」「純潔」など。まさに、ですね。ジャズの歌詞に動植物が登場する時には必ず何かの意味が込められているので、調べてみる必要があります。
ポイント4:歌を聴いてみる
Frank Sinatra, Tommy Dorsey & His Orchestra
1940年に最初にヒットしたのはこのバージョンだったようです。
前半はたっぷりバンド演奏があって、後半にようやく歌が入ります。意外とテンポは速めで、ふたりが踊っているイメージだとこんな感じなのかもしれません。
Cassandra Wilson、1988年録音
キメをいれたアレンジで、これでダンスを踊るのは難しいかも。
Sarah Vaughan、1963年録音
物語を聞かせるような歌い方。ビブラートも含めてクセ強め。
Connie Stevens、1958年録音
チャーミングの代名詞だったコニー・スティーブンス。ジャズっぽくはないですが、甘い声で魅力的な歌。彼女も少し丸鼻でしたね。
John Denver、1976年録音
声の良さがすべてですね。
ポイント5:インストで聴いてみる
技巧派が並びますが、情景描写と情感たっぷりの演奏ばかりで流石です。まずテーマを丁寧に演奏するのが基本ですね。ダンスを踊るふたりを空から眺めているようなゆったりとしたテンポが多いですね。
Bud Powell
Wes Montgomery
Bill Evans Trio
John Coltrane, Hank Mobley
Roy Hargrove
ポイント6:お勉強
バラード演奏中、ジャズドラマーが考えている事(黒田和良さん)
テンポやビートだけでなくメロディーもちゃんと意識していることが分かります。
◼️歌詞
(Verse)
Would you care to hear the strangest story?
At least it may be strange to you
If you saw it in a moving picture
You would say it couldn’t be true
(Chorus)
A country dance was being held in a garden
I felt a bump and heard an "Oh, beg your pardon"
Suddenly I saw polka dots and moonbeams
All around a pug-nosed dream
The music started and was I the perplexed one
I held my breath and said, "May I have the next one?"
In my frightened arms, polka dots and moonbeams
Sparkled on a pug-nosed dream
There were questions in the eyes of other dancers
As we floated over the floor
There were questions, but my heart knew all the answers
And perhaps a few things more
Now in a cottage built of lilacs and laughter
I know the meaning of the words "ever after"
And I'll always see polka dots and moonbeams
When I kiss the pug-nosed dream
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