セッション定番曲その121:Antonio's Song (The Rainbow) by Michael Franks
歌モノセッションの定番曲、ジャズ/ボサノバ・セッションでも歌われます。どんな内容の曲なのでしょう。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Antonio's Song (アントニオの歌)
Michael Franksは1970年代から活動している米国のシンガーソングライター。多くのSSWがフォークソングやカントリー音楽をベースにして活動を始めたのに対して、彼はジャズやボサノバからの影響がはじめからありました。歌唱自体は声量も無く、素人くさい感じですが、凝ったコード進行やメロディの自作曲にすごく合っています。
アルバムを出すたびにビルボードチャートでは100位前後の結果。ロックバンドだったら早々にクビになるところですが、SSWは維持費も安いし、こういうアーティストがレーベルにいることで何か箔が付くというか、「センスいいじゃん」という見られ方をするんでしょうね。息の長い活動をしています。米国では「コンテンポラリージャズシンガー」という訳の分からないジャンルに分類されているようです。米国で人気のある「スムースジャズ」のボーカルものってこんな感じなのかもしれません。
実際にアルバム制作にはジャズ/フュージョン系ミュージシャンも沢山参加しています。この曲が収録されているアルバム「Sleeping Gypsy」にもJoe Sample、Larry Carlton、David Sanborn、Michael Brecker、John Guerinなどが参加しています。そういう人達にとって「自分達のセンスを活かせる歌モノ」という感じだったのかもしれません。(このアルバムはけっこう制作費が掛かっていそう)
ポイント2:米国産のボサノバ
ブラジル発祥のボサノバは、ジャズの和性との親和性もあってあっという間に米国の音楽市場に定着しました。そうして「ブラジル産ではない米国産のボサノバ」曲が沢山生まれてヒットするようになりました。リズム的には厳密に言うと「ナンチャッテ」ですが、雰囲気ボサノバという感じ。この「Antonio's Song」はその代表ですね。
他にも
Kenny Rankin
Hirth Martinez
Maria Muldaur
Stevie Wonder
と、探せばいくらでもありますね。
ポイント3:アントニオ
ボサノバ業界でアントニオといえば「Antônio Carlos Jobim」です。
Antonio lives life's frevo, Antonio prays for truth
Antonio says our friendship, Is a hundred-proof
「frevo」ってこんな感じの賑やかな音楽/ダンスのようです。
The vulture that circles Rio, Hangs in this L.A. sky
The blankets they give the Indians, Only make them die
リオデジャネイロの空を旋回していたハゲワシ=弱っている獲物が死ぬのを上空で待ち構えている=他人を食い物にしようとしている
→それがLA上空にもやってきている
原住民に配った毛布が彼らを殺すことになってしまった、というのは1763年からの「ポンティアック戦争」でイギリス軍が天然痘ウィルスに冒された毛布を贈り物にして、敵対するインディアン(米国原住民)等を感染させたという卑劣な史実を引用しているようです。
ハゲワシの話と並べて「世の中には油断/信用出来ない相手がいる」ことの事例を語っているのだと思います。
But sing the Song, Forgotten for so long
And let the Music flow, Like Light into the Rainbow
でもここでは希望を歌っています。音楽の力を信じて。
We know the Dance, we have, We still have the chance
To break these chains and flow, Like Light into the Rainbow
同じようにダンスの力を信じて。
ポイント4:ボサノバ歌謡
この曲は日本でもとても人気がありますが、なんかこういう雰囲気の「ボサノバ歌謡曲」って昭和の時代に流行りましたね。都会的な雰囲気がしたのかな。振り返ってみると沢山あります。
UA
アントニオ古賀
ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」
松任谷由実「あの日にかえりたい」
丸山圭子「どうぞこのまま」
ポイント5:カバー
Chris Connor
Helen Merrill
John Pizzarelli
Norbert Gottschalk
◼️歌詞
Antonio lives life's frevo, Antonio prays for truth
Antonio says our friendship, Is a hundred-proof
The vulture that circles Rio, Hangs in this L.A. sky
The blankets they give the Indians, Only make them die
But sing the Song, Forgotten for so long
And let the Music flow, Like Light into the Rainbow
We know the Dance, we have, We still have the chance
To break these chains and flow, Like Light into the Rainbow
Antonio loves the desert, Antonio prays for rain
Antonio knows that Pleasure, Is the child of Pain
And lost in La Califusa, When most of my hope was gone
Antonio's samba led me, To the Amazon
We sing the Song, Forgotten for so long
And let the music flow, Like Light into the Rainbow
We know the Dance, we have, We still have the chance
To break these chains and flow, Like Light into the Rainbow