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セッション定番曲その112:A Foggy Day (In London Town)
ジャズセッション定番曲、ですが意外にリクエストされる機会は多くないかもしれません。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:A Foggy Day (In London Town)
ほとんどのジャズスタンダード曲の舞台は米国のどこかですが、これは珍しく英国のロンドン。「A Nightingale Sang in Berkeley Square」などは英国産のジャズスタンダード曲ですが、これはガーシュイン兄弟が書いた米国産の曲で、テーマを英国に取っただけです。
一時期のロンドンは「霧の街」と呼ばれていました。天気の悪い日が多くて曇っていたことと、大気汚染がその正体。あまりロマンチックな状況ではありませんが・・・。
A foggy day in London town
Had me low and had me down
この歌の主人公はいきなり落ち込んでしまっています。
やっぱり天気が悪いと性格形成や気分に悪影響を与えますね。
I viewed the morning with alarm
The British Museum had lost its charm
「alarm」は「目覚まし時計」とも取れますが、もっと抽象的に「警戒心」とか「恐れ」とかとも解釈出来ます。
そんな気分だから窓から見える大英博物館もなんかパッとしない。
「town」と「down」、「alarm」と「charm」は韻を踏んでいます。歌う際にはそこを意識してハッキリ発音した方が歯切れが良くなります。
この歌詞の前半部分の内容はパッとしないものなので、明るく歌い上げるのはちょっと違いますが、やはりその中でもメリハリは付けたいので、こういう韻を踏んでいる部分はうまく利用しましょう。
ポイント2:光が見えてきた・・・その理由は
But the age of miracles hadn't passed
For, suddenly, I saw you there
And through foggy London town
The sun was shining everywhere
こんな気分がいつまで続くんだろうと思っていたら・・・
君に偶然出会えたよ
そうしたら霧のロンドンの街の至る所に太陽の光が差し込んできたみたいに思えたんだ
恋は偉大ですね。実際の景色はともかく、目に映る光景はいきなり希望に満ちたものになりました。
「the age of miracles」はちょっと発音が難しいですが、ひと塊りとして歌いたいので練習しましょう。
ポイント3:ヴァース
という感じで歌詞はごく短いものです。
そして前節としてのヴァースがあります。
ミュージカルの名残で「セリフ」から「歌」に入っていく流れ。
いつも書いていますが、大半のヴァースはちょっと説明的で、その後の歌(コーラス)での「種明かし」を台無しにしてしまう場合もあります。それを理解した上でヴァースを歌うかどうかを決めましょう。
この曲のヴァースもちょっとそういう内容です。歌い出し直前で
「It turned out to be the luckiest day I've known」とネタバレしてしまっているので、聴いている側は「あ〜あ」という感じかもしれません。
ポイント4:Fred Astaire
オリジナルはFred Astaire、1937年の「踊る騎士」という映画の中で歌われました。
上品で優雅で余裕たっぷりに、独自のスタイルでの歌唱。歌自体はそんなに上手くありませんが、ダンサー特有のリズム感を感じますね。もともと「ジャズボーカル」ってこんなものだった、のでしょうね。
ポイント5:Ella Fitzgerald
1959年録音。ヴァースから歌っていて「物語」を聴いているみたいです。
力み過ぎていない時のエラは最高ですね。
まずはこれをお手本に練習しましょう。
ポイント6:Ella Fitzgerald and Louis Armstrong
こっちはサッチモとエラの共演。最終盤の2人のリラックスした絡みがいい感じですね。スキャットって元々この辺の人達が歌っている途中で歌詞を忘れてアドリブで歌ったのが発祥と言われていますね。
ポイント7:Red Garland
1957年録音。「If I Were a Bell」みたいなイントロとエンディングが付いています。この曲はピアノトリオが似合いますね。
こっちはHank Jonesのピアノ
Oscar Peterson Trio
ポイント7:インストのバリュエーション
Lou Donaldson, Grant Green
Stanley Turrentine
Cannonball Adderley
ポイント8:歌唱のバリュエーション
Dinah Washington
鼻に掛かる発音が特徴的ですね。コーラス部分の投げやりな歌い方も個性的。
Shirley Horn
柔らかく優雅な歌い方。これもお手本にしたいですね。
Samara Joy
川に浮かべた小舟の上での撮影。技巧派ですが、確実にR&Bなどを経由していることを感じます。
Van Morrison
David Bowie feat. Angelo Badalamenti
こんなのがあったのか・・・アンビエントミュージック。
Michael Bublé
◾️歌詞
(Verse)
I was a stranger in the city
Out of town were the people I knew
I had that feeling of self pity
What to do, what to do, what to do?
The outlook was decidedly blue
But as I walked through the foggy streets alone
It turned out to be the luckiest day I've known
(Chorus)
A foggy day in London town
Had me low and had me down
I viewed the morning with alarm
The British Museum had lost its charm
How long, I wondered, could this thing last?
But the age of miracles hadn't passed
For, suddenly, I saw you there
And through foggy London town
The sun was shining everywhere