見出し画像

セッション定番曲その51:Sunshine Of Your Love by Cream

オジサンが多い(クラシック)ロック系のセッションでの定番曲。ロック曲は構成にクセがあるものが多くて、曲を知らないとなかなか成立しにくいので、定番曲として残っているものには古い曲が多いです。この曲は1967年発表。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:最先端とポップさの両立

当時のCreamの立ち位置というが画期的で、ポピュラー音楽シーンの中で、最先端の尖りきったバンドでもあり、かつヒット曲/ヒットアルバムもある人気バンドでもありました。前者の要素があったからこそ、いち早く「ポップス」→「ロック」への移行を先導出来たのだと思います。

現代のポピュラー音楽シーンの立場で同じような立ち位置のミュージシャンがいるかというと、あまり思い当たらないですね。ポップであること=売れる、という図式に振り切っているので。

この曲の考察に際しても、その絶妙なバランスは大事な要素になると思います。2枚目のアルバムとして、当時の流行りであった「サイケデリック」要素のある作品/曲を準備していく中で、モロ・ブルースではない曲作りが必要になり、その中の手法のひとつが「印象的な(ギター)リフ」を核にした曲作り。

どこまで本当かどうかは分かりませんが、メンバーがJimi Hendrixのライブを観に行って刺激を受けて、Jack Bruceがベースでギターリフっぽいものを作ってみたのが土台になったと言われています。確かに少しテンポを上げるとJimi Hendrixの影が見えてきますね。


ポイント2:Pete Brown

その「最先端の尖りきった」部分の一端を担っていたのが、作詞で関わっていたPete Brownでした。音は最先端の尖ったものであっても、歌詞が従来の陳腐なラブソングだったら、尖った曲にはならないですよね。メンバーは煮詰まると外部の友人達に協力を求めて共同作業しました。

「Sunshine Of Your Love」はPete Brownが関わった歌詞の中でも割と普通というか、言葉からのイメージの広がりはあるものの、難しい内容ではありません。

その後の「White Room」「Politician」「Deserted Cities Of The Heart」などはもっとイメージがぶっ飛んでいて、当時の最先端ロックの歌詞という感じがします。

尚、「Tales of Brave Ulysses」の歌詞はMartin Sharpという漫画家/デザイナーが手掛けています。


ポイント3:ポップス/ロックと「ジャズ」

有名な話ですが、Creamに関してEric Claptonは「Buddy Guyと彼のバンド」みたいなものをイメージしていて、思い切りブルースギターが弾けると思っていた。ところがJack BruceとGinger Bakerは「”ジャズ”のバンドのつもりだった」と説明しています。この差異は何なのでしょうか?

Eric Claptonはビートバンド~ブルース(ロック)バンドで決められたスペースの中でギターを弾く経験をしてきた人。それに対してJack BruceとGinger Bakerはもっと流動的な演奏をしてきた人達で、Creamというスーパーグループではそれを更に追及しようと考えた、と。

ここでいう「ジャズ」とは4ビートとか複雑なコード(和声)という意図ではなく、演奏に際して3人が平等な立場で働き掛けして、即興演奏を行うという意味。ポップスやロックのバンドなら歌手が歌っている時、ギタリストがソロを弾いている時、他のメンバーはおとなしく「バッキング」をしているのが普通で、フロントのメンバーをいかに魅力的にみせるかに徹します。ところがジャズ的な発想だと、ある場面ではリズムキープをベーシストに任せてドラマーはアクセスを付けていく演奏をしたりします。バスドラも規則的に踏むだけでなくアクセントを付ける踏み方もアリ。ベーシストやドラマーが歌手やギタリストを煽ったり、逆にギタリストがリズム隊に絡んだり、そうやって予定調和ではない即興演奏が広がっていきます。ソロを弾く人もコード感を感じさせるソロ、リズムのアクセントを感じさせるソロが必要。

これがうまくいっている時にはメンバー全員が「今日は全員の力で良い演奏が出来た」と感じますが、バランスが崩れると「俺のソロをアイツが邪魔した」「お前の音、煩いんだよ」「ちゃんとオレが出すキッカケを聴けよ」と衝突してしまうことも。

Creamが短期間で崩壊に向かってしまったのも、この辺りが・・・

Live vol.2での演奏

録音のバランスもありますが、全編ベースの音の主張が強いですね。
3人それぞれが前に出ようという気持ちが隠し切れない感じ。


比較的3者の連携がうまくいっていた時期の演奏と評価されている録音


解散コンサートでの録音、もう破れかぶれというか、お互いを尊重しようと感じは既に無くなっていますね。

こういう感じは後のJeff BeckのBB&Aのライブ盤でも聴けますね。3人組(トリオ)という編成がキモなのかも。


ポイント4:レコード(録音物)とライブ

絶妙なバランスはもうひとつあって、Creamのスタジオ録音曲はどれもコンパクトにうまくまとめらたポップなもの。勿論その中に当時の最先端の試みは詰め込まれていますが、聴きざわりの良いものとしてレコード化されています。

それに対してライブでは上記のようにお互いが火花を飛ばすような熱く攻撃的で、時にはバランスを無視して暴走するような演奏を繰り広げていました。レコードとはまったく別物。彼らの絶大な評価は頻繁に行ったツアーで得たものでした。ライブではいくらでも長く即興演奏を続けることが出来て、先の展開が読めないステージ。それ自体が当時のポップス/ロックのコンサートとしては最先端の、尖ったものでした。
レコードを聴いて「ふ~ん、こんなもんか」と思った連中が実際にライブを観に行ってぶっとんで改宗して帰った、という逸話も聞きます。

この辺りのバランスをうまく取ってスタジオ録音の作業をまとめていたのは、2枚目からプロデューサーとして関与したFelix Pappalardiやメンバーの中でもプロデューサー・センスのあったJack Bruceなんだろうなと思います。

ポップな曲を嫌ってヤードバーズを辞めたEric Claptonを上手くなだめて「これはポップなことをやっているんじゃくて尖ったことをやっているんだよ」とうまく乗せて。演奏力はあるけど「(そんなに)売れない」バンドでキャリアを積んできたJack BruceとGinger Bakerには「ライブでいくら好評でもレコードが売れなきゃ話にならない」という思いがあったのだと想像します。


ポイント5:Sunshine Of Your Love

「Sunshine Of Your Love」って一体何なのでしょうか?

It’s getting near dawn
When lights close their tired eyes

夜更かししいていたのか、もう夜明けが近くなって、朝の光に目がパシパシしてしまっているようです。

I’ve been waiting so long
To be where I’m going
In the sunshine of your love

「君の愛に溢れた眩い太陽の光に溢れた場所」
そこなら君と一緒にいられる
ずっとそこへ行きたいと思っていたんだ、と。

シンプルな言葉の組合わせですが、
「Your love is the sunshine.」と歌うよりずっとイメージの広がりがあって、ロマンティック。この理想郷を目指して歩いていく感じが1960年代半ばのフラワームーブメント/サイケデリックアートと連動している雰囲気がありますね。米国でヒットしたのも、そういう時代性があったのが原因かもしれません。彼ら自身が考えていたより「sunshine」という言葉は大事なキーワードだったのかと思います。

「君」がとても眩しい存在なんだ、と繰り返し語っている歌詞ですね。


ポイント6:誰が歌っているか

CreamのメインボーカルはJack Bruceですが、この曲ではEric Claptonと交互に歌っていて、サビではハモっています。大音量にも負けないJackの力強い歌声に比べるとEricの歌声はなんだかか細くて頼りなさげです。でも敢えて2人で歌うことにした判断がFelix PappalardiのものなのかJack Bruceなのか分かりませんが、結果的に曲にカラフルさを加えることになり、後の「歌うギタリスト」Eric Claptonの原点になった気がします。Ericはそれ以前のバンドの曲でも時々歌っていましたが、どうもギタリストの余技という印象でした。

サビのハモりはシンプルなものですが、この曲の大きなポイントです。セッションイベントで演奏する際にも歌う人が複数いた方がいいですね。

少し脇道に逸れますが、歌が本業ではないギタリストやピアニストが、演奏しながら歌う「歌」には演奏者ならではの味があって大好きです。


ポイント7:アレンジ例

もちろんみんなの共有イメージはCreamのバージョンですが

上記のJimi Hendrixの演奏、スピード感。


まさかのElla Fitzgerald、ジャズが迷走していた時代の黒歴史
こういうのを歌うと隠れていた「黒さ」が出てくるのが面白いですね。
こんなハネたリズムもアリ?


ファンクといかディスコ?この曲から魂を抜くとこんな感じか?
Sunshine Of Your Love

夏だ!ベンチャーズだ!
やっぱり、このドラムパターンは不滅なんだなぁ。
Sunshine Of Your Love

これもまさかのThe 5th Dimension、いかにこのリフが魅力的だったのかの証か?多幸感に満ちていますね。


まさかのOzzy、もう何が何だか・・・
Sunshine Of Your Love

ご本家
Sunshine of Your Love (Live at The Royal Albert Hall)

ご本家のお戯れ
Jack Bruce - Sunshine Of Your Love (ArtWorks Scotland, 13th Feb 2012)

まさかのラテン・バージョン
Mongo Santamaria - Sunshine Of Your Love (Cream Latin Jazz Cover)

現代的?なロック・アレンジ


他にも探すと珍バージョンが沢山出てきます。
どんな風にアレンジしても面白い名曲、ということですかね。

■歌詞


It’s getting near dawn
When lights close their tired eyes
I’ll soon be with you, my love
Give you my dull surprise

I’ll be with you, darling, soon
I’ll be with you when the stars start falling

I’ve been waiting so long
To be where I’m going
In the sunshine of your love

I’m with you, my love
The lights shining through on you
Yes, I’m with you, my love
It’s the morning and just we two

I’ll stay with you, darlin', now
I’ll stay with you 'til my seas are dried up

I’ve been waiting so long
To be where I’m going
In the sunshine of your love

I’m with you, my love
The lights shining through on you
Yes, I’m with you, my love
It’s the morning and just we two

I’ll stay with you, darling, now
I’ll stay with you 'til my seas are dried up

I’ve been waiting so long
I’ve been waiting so long
I’ve been waiting so long
To be where I’m going
In the sunshine of your love


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?